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第一回 もじかき練習帳 お題3[作品発表]

お題3 以下の画像を文章で表現してください。

Photo by Dawson Lovell on Unsplash
  1. 冬の曇天。三日前の雪が、未だ溶け残っている。銀と灰と白ばかりの風景に、磨き抜かれたように艶やかな赤茶の壁。木の光沢のうつくしい、古い魔力を帯びたような建物が、今朝も静かに佇んでいる。物語に出てくるお城の先端のようなとんがり屋根。黒く華奢な外階段。硬いガラスと鉄でできたビルばかりが目立つその場所に、まるで世界に取り残されたように、木の温もりを帯びて立つ。その建物は、まるで魔法使いの杖のようだった。

  2. ぽつんと佇んでいるわりに目を引く、童話に出てくる城みたいな建物

  3. 緑のトンガリ屋根はニット帽のようだ。ぼんやりと煉瓦造の建物を見上げ、息を吐く。それはふわりと白く舞い上がり宙に溶ける。きっと寒いからそんな下らないこと考えるんだな。冷たい空気に肩を竦め、雪道を滑らないよう慎重に足を進める。手袋をしているのに指の感覚があまりない。幹線道路に面し分かれ道のど真ん中に建っていれば、必然と風の通り道になる訳だ。トンガリ帽子君、頑張れよ。返事をするはずない建物にちらっと視線を投げ、また一歩足を進めた。心なしか足取りが軽く思えた。

  4. ここは日本ではなさそうだ。くすんだ緑の円錐型の屋根、壁の色はレンガ色、外付けの階段は黒。信号機は縦型で黄色の外枠だ。道には、雪の積もった跡が残っている。

  5. 道路に挟まれ、ポツリとあるビル。
    まるでそこだけ魔法にかけられたように、無機質なビル中で、存在を主張していた。
    季節は冬。少し積もってシャリシャリと音が鳴る雪を足裏に感じた。

  6. 道路を二つに分かつように、赤茶のビルが立っている。雪を押し退けて滑ってきた路面電車のような細さだ。屋根に付随した円錐型の尖塔が、周りのビルとは一線を画した古さを物語っている。まるでここだけ時が止まっているようだ。

  7. 雪の降った翌朝、三叉路の分岐点に立つ特徴的な建物の屋根からはすっかり雪が落ちきっていた。黒の外階段がアクセントの、古くからある茶色いビル。奥に見える再開発のビル街とは対照的なその建物は、あたりに積もった雪のせいで、よりメルヘンな雰囲気を醸し出している。

  8. 冬の空。肌を刺すような寒さ。雪が足元に散らばって夏とはまた違ったビル達が映える景色に誰もが一度、この場で立ち止まって眺めてしまう。あぁ…もう少しで雪が降って辺り一面パウダースノーに埋め尽くされる。そしてそれを見た誰かが"スノードームみたい"と呟くのだろう

  9. 朝まで降り続いた雪が、まだあちらこちらに残っていた。俺は、ブーツを履いてこなかったことに内心舌打ちをし、足元に気を付けながら目的地へと急いだ。地図の目印として記されていた「古い背表紙のような建物」というのは、恐らくあれだろう。奥行きがありながら幅が狭く、形状も相俟って背表紙に見えなくもない。

  10. 溶け残った雪が道のあちらこちらに残る、澄んだ冬の朝。開発が進み銀色の高層ビル群が立ち並ぶ中、尖った屋根の稜線をそびえ立たせる古びた建物は、柔らかな朝日を浴びて静かにそこに存在していた。

  11. 道路の真ん中に凛と聳える建物からは重厚な歴史を感じられた。冬の朝のキンと張り詰めたような空気を感じて、よくよく目を凝らせば道路の端には雪が積もっている。背後に並ぶ高層ビルやガラス張りの近代的な建物達に負けず劣らず、街中に佇むその建物は堂々と存在を主張していた。

  12. 区画整理の進んだ都会の中で一等目立っているのは、レンガ造りを思わせる赤褐色の建物だ。どう見ても不便そうな三角形の敷地だが、それを上手くデザインに昇華させているあたりに、この建物の設計士の腕が垣間見える。一見すると無骨な外階段も、のっぺりとした側面にアクセントを与えている。後付けのものだという話も耳にしたが、それすらも予想された必然の装飾だったのかもしれない。

  13. ザクザクとした雪と氷でうっすらと覆われる道。そこに付けられた足型は、確かに人々が行き交った痕跡を表していた。

  14. キン、と冷えた空気の中で、その建物だけは堂々たる姿で聳え立っている。皆が肩をすくめて脇道へと姿を消しても、その建物は揺らめく暖炉の火のように、暖かく見守っているようだった。

  15. 雪の掃けた道に、ひとつの奇妙な建物が建っている。茶色くて細い、お城の壁のような見た目をしている。大きな窓に、三角錐の屋根。青い屋根を見上げれば、空は白く、まだ雪の降りそうな予感をさせた。

  16. 息を吐けば、無色透明なはずの息に白い色がつく。なんて寒いんだろう。凍えそうだ。寒くてマフラーに埋めた顔をふ、と上げてみる。「…………」こんなに世界は、澄んだ色だっただろうか。寒い時には空気が澄み渡ると聞いたことがあるが、たったそれだけで街全体の雰囲気が変わる。「……寒いのも、悪くないかもな」少しだけ、心がぽっとあたたかくなったような気がした。

  17. 屋根や窓枠、階段の手摺りまでもを純白に染めていたものはあっという間に失せてゆく。あれほど体躯の先を凍てつかせた空気もきっと程なく柔らかくなることだろう。さむくてしずかな孤独に両膝を抱えた私を置いて、あたたかくはなやかな街へと発っていった、あの人の晴れやかな微笑みのように。

  18. 白く色付いた路面にキンと冷えた空気が伝わる街並み。

  19. 冷たい光を反射するビル街の一角に、その建物はあった。狭い土地に建てられたそれは、縦にも横にも細長い。日本風に言えば、うなぎの寝床のようだ。いったい何に使われている建物だろうか。外から見ているだけでは、とんと分からない。赤レンガの壁面。青銅色の屋根。色味からしても、周りの景色から浮いている。窓には白いドレープがたっぷりのカーテンがひかれているのが見えた。随分と古めかしい。さらに華奢な黒い外階段が一層建物を近代的な周囲から時代を遅らせて見せている。いったい何に使われているのか?このまま外で眺めていてもわからない。私は雪の道を歩き出した。目的地はもちろん謎の建造物だ。ワクワクと子供のように心が弾む。

  20. 雪が降ってから数日経つも、道路や歩道の端に掻き集められている雪はまだ残っている。雪のせいなのか、人も車もほとんど往来がない。きっと、この真ん中にあるとんがり屋根の建物を起点に道路が左右に分岐しているから、今日一日家から出ない人、向こうに聳え立つビル群に行って仕事をする人で分かれているのだろう。ほとんどの人は左の家から出ない方の道へ既に行ってしまったのか、誰も見当たらない。自分を追い越すように来た白い車は右に進んで行ったから、嫌々家から外へ出た人のはず。お疲れ様です。
    そんなくだらない想像をしながら、足下が滑らないように右の方向へと足を慎重に動かした。
    思わずはあ、と吐いた息は真っ白だった。

  21. どんなにロンドンの街が発展しても、そのビルだけは取り壊させれずに建っていた。何度も修復工事を行い、あの頃の面影を残している。
    ジャック・ザ・リッパーが暗躍していた十九世紀、同じ時代に活躍していたとされる伝説の名探偵――シャーロック・ホームズが住んでいたアパート……のモデルとなったビルはシャーロキアン達の聖地だ。
    そこに行きたくてバイトを何軒も掛け持ち、睡眠時間を削れって英会話を勉強し、ようやく明日渡航することになった。緊張と興奮で眠れそうにない。
    明日、ちゃんと飛行機に乗れるだろうか……?なんだか今度は不安になって寝れなくなってきた。

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