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間違いを犯した女の話 #9

「ごめんなさい。
誰を恨んでも責めてもいません。ただ、辛くなったのです。
人の死を望み、自分を殺し、心で人を殺してこの数年を過ごしました。
それに疲れてしまったのです。
自分がどうしたいのかも、もう分からなくなってしまいました。子供や親や大切な人のためだけに私は自分を殺していました。みなさんが悪いわけではけっしてありません。私が悪いのです。私は自分を大事にしませんでした。自分の声に、本当に望むことに耳を傾けなかった。たった一つのその間違いが間違いを呼び、とうとう引き返せないところまでやってきてしまったのです。もう、精神的に自分を殺すだけでは済まなくなったようです。今になってやっと自分の心に耳を傾けて返ってくる答えがこれです。
 分かってもらえなかった、などとみなさんに言うつもりはありません。私が自分を分かっていなかったのです。分かろうともしなかった。でも、ここまできて、どうしたらそれを修正できるのか、私には分かりません。
 ただ、ここまで自分を殺してきたのですから、自分が心から望むことを実行しようと思います。それだけのことを、我慢という名の責任を、全うしたと思うから。
 自由とは何なのでしょう。自由は我慢や責任の反対にあるものなのでしょうか。僅かでいい、一日のうちの数十分、自分の家の片隅、人との会話、に自由を感じられる場所や時間を探しましたが私にはとうとう見つけることが出来ませんでした。見つける目も失ってしまったのかもしれません。とにかく、ここにはない、という結論に至りました。自由を見つけるにはここではないどこか別の場所へ行く他ありません。
 どうか、責めないで。誰のことも。ただ、許してください。誰のことも」

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