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【映画】「6才のボクが、大人になるまで。」で思うこと(ネタバレあり)

この映画って、主人公はこの男の子だけど、テーマは「男をダメにする女」だと思う。いるよね、そういう人。この映画では主人公の母親がそれ。

決してダメな女じゃない。子育てしながら大学に通って勉強して大学で教職についちゃうような人。性格も真面目だし、家庭のこともちゃんとする。だけど、なぜか結婚する男、付き合う男は酒に溺れていく。そして、別れるとまともになったりする。

ちゃんとしてる、というよりできる人なのになぜか? それは、「自分、自分」だから。エゴが強いというのだろうか。しかし、自己中心的、わがままとは少し違う。厄介なのは、周りに主張するのが「正しいこと、間違っていないこと」だということ。だから本人は自信満々だし、周りも突っ込みようがない。もっと厄介なのは、本人が「それが当たり前、ほかに選択肢はあるわけない」と思っているところ。だから、猪突猛進するのみ。そりゃ、パートナーはお酒に逃げるしかありません。

この母親も、主人公が大学進学で家を出るとき、「いい加減、あなたたちの世話はもうやめさせてくれ」とか言って怒り始めたと思ったら「今日は最悪の日」だとか言って泣き始めるという、息子の気持ち無視の、自分本位のセリフを吐いて感情を吐露してしまう。

そりゃ、頑張ったのは分かるし、息子も感謝してると思うけど、離婚したり再婚したり彼氏作って、すべて怒鳴り声で終焉するという悲劇を起こしたのはあなたの選択の結果でしょう?と言いたくもなる。

要は、客観的に自分が見れていない。顧みる、みたいなこともしていない。しているのだろうけど、なーんかずれている。だって、軸が「正しいこと」をすることだから。「正しければ間違いないんだからちゃっちゃとやってあとは自分の仕事のことを考えなくちゃ」みたいな感じ。

「正しいこと」の数は無限にあって、その中から自分と周りのことを考えながら自分の答えを選択しているし、もっと言えば、状況は人の価値観によって「正しいこと」なんて180度変わったりする。

ここがずれているから、彼女の人生は「正しいこと」をやっている(つもり)なのに、なぜかものすごくつらいものになってしまったんじゃないかなと思う。

いるよね、こういう人。いませんか? 私はこの映画をみて思い浮かんだ人、います。

こんな感じなので、映画全体を通してそんなに明るくはない。どよんとしている。

そんな中で、主人公の父親役のイーサン・フォークは、ものすごく美しく歳をとっていく男前という芸術を見せてくれる。それが救いの映画です。

自分や周りがうまくいかないのは、きっと何かがずれている。それを気づかせてくれる映画でもある。


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