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恋は当たって砕けろ、そんでもって拾ってくっつけろ

「やっぱ、別れたほうが、いいですよね」


分かってる、そんなこと周りに言われなくたって、自分が一番分かってるよな。

平日のせいか、いつもより賑わっていないフードコートで、期間限定ドーナツにかじりつきながら耳を傾ける。


「好き」っていう感情は非常にやっかいだ。
頭で分かっていたって、本能に近いそれをコントロールすることはなかなか難しい。

現に、目の前の可愛い後輩は長年いわゆる“ダメ男”ってやつに頭を悩ませている。話を聴くかぎり、彼女が優しいゆえ、男が調子にのっている感は否めない。

「連れてきてくれれば、私がいくらでも引きずり回してあげるのに」という言葉を、何回か飲み込んでる。一回吐いたけど。


「嫌なら別れればいいだけ」と言うのは簡単だが、それで全てを解決できるほど恋愛というのは単純なものではない。

人は、なんでも美化する。
過去の栄光、思い出、好きな人、憧れの人…よかったものほど、誰にも触られないよう包み込んで記憶の箱にしまいこみ、ときどき開けて綺麗なままのそれらを撫でる。

楽しかった思い出はときに人を強くする。でもそれが、たとえば現実から目を背けるためのものだとしたら。

傷だらけになる前に、早いとこ目を覚ましたほうが身のためだ。


だが、分かっていながら決断できない。
それが「恋愛」だ。

だったら、とことん向き合うしかない。


そもそも、どの未来を選ぶかはその人次第だし、周りからしちゃ修羅の道に見えたって、本人たちには極楽浄土の場合だってある。

要するに、当人が納得してないかぎり、外野がいくら大きな声で叫んでも届かないってことだ。


かくいう私も、人のことはいえない。
夫は、酒・タバコ・パチンコがないとダメな筋金入りの浪費家だ。人の話は聞いてんのか聞いてないのか分からんし、デリカシーもない。おまけに、家では一日中鼻くそもほじる。

今どきの子が夫のことを見たら、「絶対別れたほうがいいですよ!!!」と言うこと間違いナシな要素が盛りだくさん。にも関わらず、私は彼と結婚した。ここまでけちょんけちょんに言っといてなんだが、夫はいいヤツだ。

毎日泣いて暮らしているわけではなく、尻を出して走り回ったり楽しく生活している。


きっと、許せること、譲れないことをはっきりさせるほかないんだと思う。


前述した通り、夫は持っているだけお金を使うプロである。本人の希望もあり、我が家は同棲時からずっとお小遣い制をとっていたのだが「渡したぶんだけ使ってしまう」という新たな問題が発生していた時期があった。

たとえば、月に5万円のお小遣いを毎月25日に渡すと、次の月の10日を迎える頃にはほぼ使ってる。

「あと2週間はどうするつもりだ」と問うと、「すみません、前借りさせてくれ」となる。余談だが、うちの親父も毎月同じことを母にしているらしい。女の子は父親に似た人を好きになるとよくいうが、こんなとこ似るんじゃない。

このままだと家計は火の車、どころか私たちのケツに火がついてしまうということで、二つの施策を打ち立てることに。

一、お小遣い分割制
二、宣誓書作成

お小遣い分割制は、その名の通り「お小遣いを分割して渡す制度」だ。いっぺんに渡していっぺんに使ってしまうなら、少しずつ渡せばいい。

「これを使いきったら、残りをあげるね」とやることで、あるだけ全部使うルートを防ぐ方法である。


もうひとつの「宣誓書作成」は、先ほどのお小遣い分割だけでは心許ない…ということで追加した施策だ。

夫は私に“浪費しないので心配しないでください”という旨を、私は夫に“夫を信じているのでお金については口出ししません”という旨を小さなメモに書き記し、お互いの目につくところにしまっておくというもの。

夫はこの宣誓書を自身の財布の中にしまい、散財の誘惑に負けそうになったときはチラつかせるらしい。私は手帳に夫からもらった宣誓書を挟み、開くたびにちょっとウケている。

まるでこどもの書いた手紙


長々話してしまったが、我が家ではこうして「お互いの短所」を双方納得する形で収めている。今回の場合は、夫の浪費グセと私の心配性。

「いい加減にしろ」は最後の切り札で、お互い譲歩できる部分をはっきりさせて、あとは信じる。


「好きだから」全部を許すのも違うし、「好きだから」なんでもかんでも思い通りにしたがるのも違う。

「楽しくねーな」とか嫌になっても、思い通りにならないことを二人で形にしていくのがたぶん、一緒に生きるってことなんじゃないだろうか。


「彼氏のこと好き?」

「え、はい。そりゃあ」

即答できるなら、きっと大丈夫。


「じゃあもうさ、」

悩める恋人たちよ、迷わずぶつかれ。


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