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Never give in!_本

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マガジン「Never give in!」のうち、本に関するものを集約
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2017年8月の記事一覧

宇沢弘文「自動車の社会的費用」

宇沢弘文「自動車の社会的費用」

自動車社会への懐疑。
成長が重視される20世紀の経済において、考慮されにくかったその負の面を堂々と列挙している。

自動車は毎年2万人の人を殺している。
自動車は継続的な環境破壊にも加担している。
さらに、豊かな暮らしをおくれる街作りにも悪影響を与えている。

自動車の在り方が完全に変化する可能性も見えてきた今、自動車というたった100年程の一時的な流行が残した爪痕と考えると、その費用は重い。

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身軽でいること_6(本)

読んだ本は重ねておいて定期的に売る。
まず、1Kの我が家には場所がないということもあるが、そもそも同じ本を2回読むことは滅多にない。
毎週4,5冊のペースで読書をするが、これまでの読書人生で2回読んだ本というのは数冊だ。そういうときはまた買えばよい。

たまに、仕事で引用するために残しておきたい図表や表現がある。
そういうのはスマホのカメラで撮って記録しておく。

記録はクラウドサーバに、記憶は自

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池澤夏樹「知の仕事術」

池澤夏樹「知の仕事術」

情報の収集と活用のノウハウ。
あまり新しい気づきはない。

長い書評があってもよいが、簡潔な書評こそ必要だと思う。

ダニエル・コーエン「経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える」

ダニエル・コーエン「経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える」

人々は事が起こって少し経ってから意味を理解する。
結局、歴史から何かを学ぶということには限界があるという。
それでも、本書を読めば、歴史の大きな流れを踏まえて、現在や将来を考えることができる。

中国とインドの経済参加がグローバル経済を本格化させた。
そして、中国とインドの発展はやがて資源の枯渇を進め、グローバル経済に限界をもたらす。
先進国がしてきたことを後進国が同じようにすることができないとい

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Frederic Laloux「Reinventing Organizations: An Illustrated Invitation」

Frederic Laloux「Reinventing Organizations: An Illustrated Invitation」

組織運営の進化過程を5つの色で分類して、それぞれの特徴を整理している。
従来の大企業が行ってきた性悪説による管理(Orange型)から脱却し、性善説を前提に管理を放棄する形態(Teal型)を紹介・推奨している。

本家である「Reinventing Organizations」を読まずとも、豊富な挿絵と平易な英語の組み合わせで解説した本書を読めば、理論の概略が掴める。
むしろ、経営者や人事部が社内

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水野和夫「株式会社の終焉」

水野和夫「株式会社の終焉」

世界は歴史的な転換期にある。
有識者や権力者が信奉する「成長」「グローバル化」「競争」といった観念は既に時代遅れのものである。
薄々感じ始めていたことを定量情報や歴史を用いて論理的に整理している。

マネーゲームとの決別を意図したトヨタの新型株式。
陸の国の時代が来たことを告げる英国のEU離脱。
やり過ぎた部分の調整を象徴するジャンボジェットやコンコルドの引退。
たしかに、全てが歴史の必然であるよ

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スディール・ヴェンカテッシュ「社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた」

スディール・ヴェンカテッシュ「社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた」

実際に入り込んで、内側から観察する。
前作「ヤバい社会学」から続く手法。
コロンビア大学教授になっても、変わらない。
ヤクの売人や売春婦といった人とつながり、裏社会に徐々に深く入り込む。
なぜ、このインド系アメリカ人はこうも裏社会の人々から受け入れられるのか・・・

ニューヨーク=多様性の街というイメージだが、そうも簡単な話ではない。
保有している文化資本により、棲み分けがきっちりある。
尊大な「

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