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下町そぞろめぐり2023 #19 縁の木

人々を珈琲の縁でつなぎ、アップサイクルで地域の大きな木を育てる取組み

縁の木さんは、お子さんが知的障害のある自閉症と診断された時期と、お母様が亡くなられた時期が重なり、お子さんが将来働ける場所を作ろうと、店主の白羽さんが2014年の2月4日に創業、同年5月23日に開店された焙煎珈琲のお店です。今年、2024年に10周年を迎えます。

販売される珈琲豆は、お客様の好みに合わせて、少量から焙煎する出来立てのものです。「釜太朗」と名付けられた小さな焙煎機は店頭で、フル稼働で働いています。将来的に福祉事業所の方が働くようになった際に、もし失敗しても損害を最小限にできること、火事になりにくい電動であること、おいしいこと、の条件に適う焙煎機は、創業時には今使用している機種だけだったとのことです。その焙煎機を使いこなすため、店主の白羽さんと、白羽さんの幼稚園時代からの同級生で店長をされている上田さんが、導入されている珈琲店に使い方の修行に行かれたそうです。

大忙しの焙煎機「釜太朗」とお母さんのような店長の上田さん。夏は暑くて大変そうです。

珈琲豆は中間業者をなるべく省き、おいしいだけでなく、生産者への支援になることも確認した上で、コンゴ、フィリピン、ペルーなど世界中のさまざまな国から仕入れています。店長の上田さんは、旅するようにいろいろな地域の珈琲を味わってほしい、との思いでお客様に珈琲をすすめていらっしゃっています。

さまざまな国の生産者が思いを込めて栽培・収穫し、蔵前までやってきた珈琲豆が並んでいます

珈琲が苦手だった店主でも飲めるように、と試行錯誤の末に作り上げた定番の縁の木ブレンドや、季節にあわせたブレンド、クリスマスやバレンタインなどイベントに合わせたブレンドも提供しています。また、開店記念日である5月23日にあわせて、毎年、周年ブレンドも提供しています。周年ブレンドは、店主の白羽さん、店長の上田さん、縁の木で働く方々が相談し、その年の紛争などの悲しい出来事や、記念となる出来事に思いをはせ、産地で決めたり、味わいで決めたりしているとのことです。今年は10周年の記念ブレンドになるので、どんなブレンドになるのか、今から楽しみです。

定番の縁の木ブレンド、コーヒーが苦手な人にもおすすめです
3月から販売される春ブレンド、和菓子にも合うとのことでお花見にお団子とともにいかが?

SDGsへの取り組み:KURAMAEモデル

店主の白羽さんは珈琲焙煎店を始めて、焙煎時に出るチャフ(豆皮)、テスト時の豆、欠点豆など、ゴミが多いことに気がつかれたとのことです。もともとゴミが少ない生活をしてきた白羽さんは、このような「いらないもの」を「誰かのほしいに」に生まれ変わらせるアップサイクル品にする活動を推進しています。自社だけでなく、福祉事務所の力、企業、自治体、お寺などの法人、専門家のアイデア、小学生、中学生、蔵前のさまざまな人々、団体の力を借り実現していくこの活動は、KURAMAEモデルという登録商標の下、推進されています。

KURAMAEモデルでは、具体的には以下のようなものを生み出しています。

蔵前BLACK、蔵前WHITE

蔵前BLACKは、これまで廃棄していたテスト焙煎の豆を蔵前地域の他の珈琲店のものも集めて、アサヒユウアスさんに提供。珈琲の苦みと香りが特徴のビール※です。
蔵前WHITEは、マルセリーノモリさんがサンドウィッチを作られた際に出るパンの耳を福祉事務所の方が集め、空焼きしたものを、ビール※に使用したものです。パンの小麦のローストした香ばしさが特徴のビール※です。
蔵前BLACK、蔵前WHITEともに、地域の生産活動で生み出された意外なものがおいしいビール※に生まれ変わっています。
※酒税法上の表記は発泡酒となります

コーヒーの苦みがきいた蔵前BLACKと、香ばしい香りの蔵前WHITE

森のタンブラー(KURAMAEモデル)

使い捨てプラカップ削減のため、植物繊維を使い、欠点豆も使用して作られたタンブラーは、コーヒーの香りも楽しめます。

コーヒーの香りも楽しめる森のタンブラー

麻袋のトートバック

さまざまな国から送られてくる珈琲豆が入った麻袋は、それぞれの国の言葉やデザインが施されています。そのデザインをうまく生かした味わいがあり、丈夫な麻のトートバックです。大阪府枚方市の就労継続支援A型事業所hughugさんで作られています。

500ml.のペットボトル3本が入るくらいの大きさです。裏布、内ポケット付き

御神輿檜Shoe&Closet KURAMAEモデル

1835年創業以来、長年神輿の製造・修理を行っている岡田屋布施さんから提供される、上質な担ぎ棒のヒノキの木から出るカンナ屑が脱臭剤と芳香消臭剤に生まれ変わっています。「私が毎日履きたい靴」をコンセプトに生まれた蔵前発の靴ブランドTINTTINT & KIKOTTOさんとともに企画されています。

ヒノキのカンナ屑を詰めた脱臭剤になるサシュとヒノキの芳香消臭剤とのセットです
縁ドリップパック

TINTTINT & KIKOTTO https://www.instagram.com/tinttint.and.kikotto/

岡田屋布施 https://www.taikoya.co.jp/

少量残ってしまった珈琲豆から選りすぐったものは「一期一縁」というドリップパックにして販売しています。作り方はマニュアル化され、複数の福祉事務所で安定的に生産できるようになりました。
一期一縁が作られる過程がわかる、下の動画もみていただけると幸いです。
https://youtu.be/lc_IkQC4KBI?si=5Qfop_gSDHoA9WB1

さまざまな国、農園の豆が、異なる焙煎の仕方で楽しめる宝探しのようなドリップパックです

たい肥:コンポストマシン(通称「コンポン」)活用

浄土宗眞行院さんのご厚意で置かせていただいているコンポストマシンに、自社のものだけでなくマルセリーノモリさん、ELABさん、角打ちフタバさんなどの地元のお店から出る端材や、蔵前小学校の給食の端材などを入れて、たい肥にしています。コンポストマシンは、「コンポン」という名で地域の人々に親しまれ、いらなくなったものをモクモクと吸い込んでいます。コンポンから作られたたい肥は、蔵前小学校、御徒町台東中学校、たもんじ交流農園で活用され、野菜や草花が生き生きと育つ糧となっています。
たもんじ交流農園 https://teratama.tokyo/project/tamonji-farm/

麻袋からできたテディベア

最新のアップサイクル品は、珈琲豆が入っていた麻袋からできたテディベアです。とてもかわいらしく、第一号は「りじゅーと君」という名前で縁の木の社員に採用されたそうです。先日は白羽さんとともに福岡出張にも同行していました。近日縁の木のオンラインショップで発売予定なので時々チェックしてみてください。

博多まで出張に行った、りじゅーと君。麻袋のデザインと黒目がかわいい縁の木の社員さんです

縁の木さんは、美味しい珈琲で遠くの国の生産者と飲む人々をつなぎ、欠点豆、テスト焙煎豆だけでなくさまざまないらないものを誰かのほしいに生まれ変わらせる活動で地域の人々をつないでいます。これからもさまざまな縁をつなぎ、多様性を持つ人々がよりそう木を育てていかれると思います。この東京の下町で始まった人や地球を大切にする小さな取り組みが、蔵前、東京、日本だけでなく、世界にも広がり、環境変化や平和への不安が渦巻く世の中で、少しでも世界の人々の幸せに寄与できる活動になるよう、微力ですが応援したいと思っています。

縁の木のSDGs宣言書

さまざまな活動の中から経済、社会、環境の3則面からの取組みを縁の木のSDGs宣言書として表明いただき、SDGs経営支援チームTOKYOの中小企業診断士が内容を確認いたしました。

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