見出し画像

建築家 上間理央さん|藤川さんは「チーズ屋」ではなく「チーズカルチャー」をつくろうとしている

CHEESE STANDの"外側"からCHEESE STANDの魅力を発信する「CHEESE STAND のまわり」第5弾は、SHIBUYA CHEESE STANDと& CHEESE STANDの店舗設計をご担当いただいた、「ネジアーキテクツ建築設計事務所」 代表であり建築家の上間理央さんです。

CHEESE STANDの隠れた誕生秘話を語っていただきました。

ー理央さんのお仕事について教えていただけますか。

僕は、商空間ディスプレイ会社からアトリエ系建築設計事務所を経て独立しました。現在は「ネジアーキテクツ建築設計事務所」という建築事務所を主宰し、建築家として活動しています。飲食店のほか、ホテルや住宅、美容室などを手掛けています。

ーCHEESE STANDの両店舗を手掛けたと伺いました!ご担当されることになったきっかけを教えてください。

CHEESE STANDとは、クリエーターと企業をつなぐオンライン上のプラットフォームを通じて出合いました。当初サイトに掲載されていたオーダーは、「チーズ専門店を作りたい!」という一見シンプルなものでした。

詳細を伺うため、実際にお会いしてお話を伺ってみると、ただ店頭でチーズを販売する「チーズ屋」を目指しているのではなく、「フレッシュチーズの文化をつくりたい」という想像を超える大きなビジョンを持っていらっしゃって、話を聞けば聞くほど、とんでもないことが始まるなと思いました!笑 

藤川さんの熱い思いを聞いて、僕自身ワクワクが止まらず、ぜひ力になりたい!と感じたのを今でも覚えています。

ー実際に手掛けてみて、特に大変だったことはありますか?

正直、大変なことしかなかったです!笑 過去の経験から前途多難な空気は感じていたのですが、それを何倍も超える巨大な壁との戦いでした! 

一番苦労したのが「乳製品製造業許可」の取得でした。都が定める施設・設備の基準に適合させた申請が必要だったんですが、東京23区でチーズ工房を作った事例がそれまでなく、保健所ですら何をして良いかわからない状況でした。

最初に問い合わせた時は、門前払いをくらい、取り合ってすらくれませんでした。法律違反をしているわけでもないのに「前例がないからできない」のはおかしいと思ったんです。そこで僕自身スイッチが入って、何がなんでもやってやろうと思いました!

画像3

誰もが手探りの状況の中、何故できないのか、自分でも調べられることを端から調べ、保健所に何度も問い合わせました。必要な設備を揃えたり、検査を行ったり、やらなければならないことが山積みで、それまで経験したことのない苦労がありましたが、毎週のように保健所に通いながら目の前の課題を一つずつクリアにしていきました。この作業だけでも何ヶ月もかかりましたね。

CHEESE STANDのある渋谷区は、区としても新しいことに挑戦していくことを大切にしている文化があると聞いていたので、「ロールモデル」になれますよ!なんて口説いたりもしました!笑 最終的には保健所サイドもやる気を出してくれて、官民一体となって作り上げた感じです。

ーどんなモチベーションが理央さんをここまで熱くさせたのですか?

見たことのない景色を見られる可能性が目の前にあるのに、「めんどくさい」で諦めたくなかったんです。どうしても実現したいと思いました。それは、藤川さんの熱い思いがあったからこそです。チーズのお店を作りたいのかと思っていたら、藤川さんが目指していたのは単なるお店作りではなく「チーズのある文化」を作ることでした。その思いに共感し、一緒に叶えたい!と思いましたし、絶対にできると信じ続けました。

ーまさかそんな苦労があったとは初耳でした!手掛けたお店のこだわりを教えてください。

CHEESE STANDのチーズは、素材である牛乳そのものの魅力を最大限に引き出した商品だと考えたときに、お店を設計する際もその"素材感"にフォーカスしようと考えました。CHEESE STANDのお店を見ていただくと、シンプルでナチュラルな雰囲気を感じられるかと思います。あえて飾らずに素材に特別な色をつけたり、余計な手を加えないことを心がけたものです。素材も「ラーチ材」と呼ばれる建築の下地に使われる木材を使っているのですが、出来たてのフレッシュチーズのように、化粧する前の素材の魅力を表現しました。

画像4

CHEESE STANDは見た目やデザインよりもブランドの根底にあるストーリーが奥深くて面白いので、そんな部分を感じられる場所であって欲しいと思いました。

画像1

ーそうだったんですね!こちらもまさかの初耳で、さらに愛着が湧きます!

実は、CHEESE STANDの設計ストーリーには続きがあるんです。

現在、僕は藤川さんの紹介で、豊島区で新しく立ち上がるチーズ工房の設計をお手伝いさせていただいているのですが、そこのオーナーさんも工房を立ち上げようと思って保健所に問い合わせた瞬間に門前払いをくらったそうです。そこで藤川さんに相談があって、ご紹介いただきました。

豊島区の保健所に行って、渋谷区ではこんな風に工房を作っているという話をすると、実際に豊島区の方が渋谷区の保健所まで勉強に来られたそうです。すると、渋谷区の担当者さんからマニュアルを渡されたそうなのですが、そこに記してあったチェックリストがCHEESE STANDの立ち上げ時に行った手順そのものだったんです!それが全てマニュアル化されていて。工房のオーナーさんもそのチェックリスト通りに申請を進めると一発で許可を取得できました。

その後、渋谷区の担当者さんに話を聞くと、CHEESE STANDが工房を作ってから、その取り組みが全国に波及して、なぜ渋谷ではできるのに自分のエリアではできないのかと問い合わせが殺到し、対応に追われるほど反響があったそうです。

CHEESE STANDの立ち上げから10年近くが経とうとしていますが、今になってこの話を聞いて、ようやくこのプロジェクトをやり切った!と思いました。タイムラグはありましたが、CHEESE STANDが目指す「街に出来たてのチーズを」という思いが本当に動き出しているんだなと感じました。

「CHEESE STANDが作ってきたのは文化だったんだ」と実感し、プロジェクトに関われた事を誇りに思います。

画像2


------------

ご感想やコメントなど、ぜひいただけたら嬉しいです!全力でお返事させていただきます。よろしければフォローもお願いします!

CHEESE STAND 広報 M(中の人)
趣味が高じて飲食業界に足を踏み入れ、2018年からCHEESE STANDの広報を務める。SNSの運用はじめ社内外のコミュニケーション全般を担当。日々、飲食店を巡り、美味しいご飯をつまみにお酒を嗜む。

edited by Ichiro Erokumae

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?