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(自己流)ストラクチャーの作り方│住宅編 

【更新履歴】 ※半年に一回ほど更新をしております。
・2022年4月 column欄を追加しました。
・2022年8月 関連記事リンクを追加しました。
・2023年4月26日 更新欄を設けました。また、関連記事リンク等を追加しました。
・2023年8月24日 4.切り出しについて、一部加筆を行いました。
・2023年9月21日 column 窓の表現について 追記
・2023年9月21日 手書き混じりの図表をすべて訂正しました。


 今回は鉄道模型等の建物(ストラクチャー)の自作についてまとめていこうと思います。本記事では「①住宅の自作をメイン紹介する、②できるだけ特別な設備を使用しない」の2点をコンセプトにストラクチャー自作の方法を詳しく述べることとします。筆者の自己流の紹介、かつ長大な記事になってしまいますが、ストラクチャー自作に興味のある方にとって少しでも参考になれば幸いです。


0.ストラクチャー自作の魅力

  高クオリティーな既製品やキットが多数リリースされている昨今、わざわざストラクチャーを自作する必要などないのではないか、と考えていらっしゃる方も多いのではないかと思います。そこで、制作方法以前に、ストラクチャーを自作する利点について考えてみようと思います。私が考える利点は以下の4点です。

A.特定の場所を再現する際には、既製品では対応できない場合がある
B.レイアウトの用地などに合わせ、都合の良い形で製作できる
C.(素材によっては)既製品よりも安く製作できる
D.楽しい

 A~Cまではもっともらしい理由を並べてはみましたが、自作への決定的な理由でないのは確かです。A,Bに関しては、キットや既製品の改造で解決できますし、現にそうしている方もたくさんいらっしゃると思います。Cに関しても、あえてカッコ書きを加えたように、例えば模様の刻まれたプラ板などの中には高価な製品もあるため、「かえって製品より高くついてしまった」などというケースも否定できません。

 では、自分はなぜストラクチャーを自作しているのか。その理由を考えるに、結局は「楽しいから」に帰着するような気がします。設計図を書いて、切り出して、組み立てて、自分のイメージするものが出来上がっていくーそのようなストラクチャー制作の一連の工程自体が、とても満足感があるのです。そしてイチから設計し、完成させたストラクチャーには愛着がわくのではないかと思います。
 レイアウトのすべての建物を自作する必要があるか、自作こそが至高なのかーそうではないと思います。ただ、例えばレイアウトの中で、メインとなるものだけでも自作してみる。それだけで完成後の自分の満足度や後々のレイアウトへの見方も変わってくるのかもしれません。

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1.構想

 制作に際しては、まず対象となる建物をイメージし、諸々の形状を決定しておく必要があります。この構想作業に当たっては「観察」を強調しておきたいと思います。
 当然のことですが、実在する建物を制作する場合は、実物の写真を撮りに行ったり、(撮影が難しい場合でも)Googleのストリートビューを利用したりして観察することが可能でしょう。では、とりあえずなにか住宅を作りたい、など漠然としている場合はどうすればよいのでしょうか。私の持論にすぎませんが、この場合も頭の中で何か考えるのではなく、実際の建物を複数観察することが重要であると考えています。というのも、頭のなかで無理やりイメージしようとしても、どうしても豆腐建築のような簡単なイメージに終始しがちで、限界があるような気がするのです。しかし、実際に街中を歩いてみる、またはストリートビューでいろいろな場所の住宅街を見てみるなどすれば、建売住宅などはかなり複雑な形をしていることを実感していただけるかと思います。とにもかくにも、まずは実物を観察し、それからイメージを膨らませていくことが肝要だと思います。

 では、観察といってもどこを見ればよいのでしょうか。私はいつも以下の3点に注目しています。それは、
・建物の形状
・屋根の形
・窓割
です。各要素について一つずつ順に整理してみることとします。

●建物の形状

 先ほども述べたように、住宅は単なる箱型ではなく、複雑な形状をしているものも多いです。個人的には下図のように、複数の箱をくっつけて形状をどんどん展開していくイメージでいます。

 また、形状を把握するうえでベランダに着目するのも有効です。以下の図のように、ベランダ廻りの形状を変更するだけで、全体の印象が変わるのではないでしょうか。

●屋根の形

 屋根というと、切り妻屋根が思い浮かびますが、航空写真を見てみても住宅の屋根は案外バラエティーに富んでいる印象です。まずは核となる4パターンほどを想定し、それらをさらに組み合わせていくことで実際の住宅に近づくのではないかと思います。

●窓割

 窓がどのように並んでいるかも観察しておきたいポイントです。住宅に関していうならば、以下のような印象を受けます。

【正面】2枚窓が並んでいる。新興住宅の場合、縦長の一枚窓が3つくらい並んでいることも。ベランダに面しているものは、縦長の2枚窓が多い。
【側面】古めの住宅は2枚窓の並び。新興住宅の場合、意外と配置はランダムに見える。

 以上の3点を確認しておけば、かなりイメージが明確化されると思います。この段階で、設計に移ります。

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column 構想作業のシステム化?(2022年4月追記)

 ここまで、観察を中心に据えた構想について述べてきました。とはいえ、実際の製作においては「とにかく住宅が何か欲しい」という状況が生じることもあるかと思います。その際は、これまでに登場した要素を次のようなステップにまとめることで、構想作業をある程度自動化することが期待できます。

STEP1) 箱の拡張
…先述の「建物の形状」項をご参照ください。いくつかの箱を組み合わせて概形のバリエーションを確保します。
STEP2) 屋根の基本設計
…ひとまずは、STEP1の箱に通常の切り妻(とんがり)屋根を付けてイメージします。
STEP3) 屋根の変形
…STEP2の状態から、先述の「屋根の形」項でご紹介した4つの形状(またはそれらを組み合わせたもの)に変形させます。
STEP4) ベランダなどの設置
…ベランダの取り付け位置について検討します。
STEP5) 再変形
…ベランダの長さの変更、住宅部分との一部一体化など、全体の形を整えます(「ベランダ設置と変形」画像をご参照ください)。
STEP6) 窓の設置

 上記工程をチャートにまとめたものが以下の画像です。

構想図

 図示した通り、(全てのSTEPを経ずとも)経由するステップ毎にいくつかの枝分かれが生じるので、多様なバリエーションが確保できると思います。

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2.設計

 設計について、現在私はJw_cadという無料のcadソフトを利用しています。以前は紙に定規、コンパスで作図していたので、cadが使えないからといって作図に支障はありません。しかし、cadの場合、①細かい寸法を正確に引ける、②平行線が簡単に作図できる、③作図したものをすぐにコピーできるなど利点が多数あり、個人的にはcadをお勧めしたいところではあります。
 設計は、私の場合、本体側面➔窓➔屋根の順に行っています。設計に際して必要なものと注意点を以下にまとめます。

【必要なもの】
・手書きの場合:紙、定規、シャーペン(製図用の芯が細いものがおすすめ)、コンパス
・cadの場合:cadが使えるパソコン
【注意点】
手書きする場合、後述する作業効率の観点から、いきなり本番の用紙にけがき始めず、別な用紙に作図することをお勧めします。

2-1.本体側面の設計

 はじめに述べた通り、本記事では3Dプリンター等は使用しないため、立体を製作するには、対象となる立体を展開図化することが求められます。そのためには、先ほどイメージした建物の各所の寸法を決定することが必要です。
 まずは、高さ方向(z軸方向)の寸法を決定します。といっても、これはすぐに決定できます。Nゲージの場合、住宅の1階層は約20㎜で設計するのがベターだと思います。私は、以前は1階層20㎜で統一していたのですが、これだと実物換算3mで日本の住宅としてはやや高めであることから、設計方法をcadに変えてからは18㎜にすることが多いです。いずれにせよ、自分の中で「一階層=〇〇㎜」という基準を作っておいて、それに従えばよいと思います。

 続いて、床面(x,y軸方向)の寸法を決定していきます。ここでお勧めしたいのが「Google Earth」というソフトです。このソフトは無料で利用でき、ありがたいことに寸法測定機能がついています。この機能を利用すれば、航空写真から寸法を測定できるため、Nゲージの場合それを1/150に直せばモデルとした建物に即して各部分の長さを求めることができます。

 建物のすべての面が四角形で構成されている場合は、以上の方法で各面の縦横の長さがわかるため、すんなり作図ができます。ところが、中には一筋縄ではいかないケースが想定されます。例えば図のように本体の切り欠きと切り妻屋根が重なっている場合などです。このような場合には、視点を固定し、相似を利用することで解決します。斜めから見ると複雑に見える立体でも、下図のように正面に視点を固定することで、相似比から寸法を算出できるのです。同様に、正面、左、右、背面それぞれに視点を固定した図をつなぎ合わせれば、複雑な立体でも展開図化が可能です。

2-2.窓の設計

 窓は観察に即してしっかりと2枚窓を表現したいところです。以下に私が行っている方法(というよりもむしろ一般的な方法ですらあると思われますが)を示します。それは、紙を2枚重ね or 3枚重ねにして窓サッシの表現を行うというものです。2枚重ねの場合は図中の「一番上の面」を切り抜いた側面と「一番下の面」を切り抜いた側面を用意します。これを重ねることで、(段差のない状態で)サッシが残ります。図中の3パターンの側面をすべて用意して重ねると、サッシの段違い(引き違い)まで再現できます。イメージしやすいように、(わかりにくい作例で非常に恐縮ですが)図の下に3枚側面を重ねた場合の写真も併せて掲載しておきます。

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 ここで、先ほど設計は本番の用紙にいきなり行わないほうが良いと述べた理由がお分かりいただけるかと思います。側面を何枚も重ねるため、側面はコピーして使用できたほうが都合が良いのです。特に手書きの場合、窓を3パターン書かなければならないとなると、膨大な時間を要してしまいますし、書き写している際にずれが発生することも想定されます。そこで、必要なケガキ線をすべてまとめた図中左の状態の窓を側面に描き、それをコピーして利用したほうが時短になるのではないでしょうか。同様に、cadで作図する場合も、すべてのケガキ線がそろった窓を側面に描いて、それをコピーして使用します。
 窓枠の寸法(サッシの幅)は、0.5㎜~1㎜程度が良いのではないかと思います。のちにカッターナイフで切り抜くことになりますので、切り出しに不安のある方は幅を多めに取っておいたほうが良いかもしれません。精密さと作業のしやすさのトレードオフを見極める必要があります。

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column 窓の表現について

 ここまで、ケント紙を貼り重ねて窓を再現する工法についてご紹介してきました。しかし、この方法は、窓パーツを外壁となる素材の裏側から貼り付ける都合上、外壁パーツの厚みによっては、かなり奥まった窓に見えてしまうという欠点があります。本稿がモデルとするような最近の住宅は、窓が若干飛び出て設置されているものも多く、奥まったままでは不自然ですらあるでしょう。そこで、現在いくつか改善方法を模索しているところです。

ⅰ) ICテープの活用

 第一に、ICテープという装飾用の細いテープが手芸店を中心に販売されているので、これを活用する方法が挙げられます。窓素材となるクリアファイルに0.5㎜幅のテープを貼り付けることで、窓サッシに見立てます。カッターナイフで0.5㎜幅の枠を切り残すのは技術的に難しいですが、テープを張った後にクリアファイルを所定の大きさに切り取れば、外壁にはめ込むことも難しくはなさそうです。

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 こちらの工法においても、ファイルを重ね合わせることで段違いを表現することが可能です。慣れてしまえばすっきり仕上がるため、この手法を標準工法としても良いように思います。

なお、使用しているテープは以下のリンクのものです。

ⅱ) 3Dプリンターの活用(?)

 第二に3Dプリンターを用いたパーツ製作についてです。この記事の冒頭で3Dプリンターは使用しないという方針を提示したため、完全に本稿の主旨から逸脱してしまいますが、3Dプリンターで窓枠だけを製作する方法は検討に値するのではないかと考えています。出窓を含めたいろいろな形状の窓枠のデータを作っておけば、外壁に開けた穴に出力品をはめ込むだけで窓を表現できるのではないでしょうか。
 私自身も3D データ作成には若干関心があり、fusion360を使用してごく簡単なデータ作成を試したりもしています。ただ、プリンターの購入には至っておらず、出力もしていない段階のため、どの程度のクオリティーのモノに仕上がるのかは何とも言えないところです。あくまで、机上の空論であることをご承知おきください。

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2-3.屋根の設計

(2023.04.26追記)
 以下では概略を述べるにとどめております。より具体的な内容にご興味がおありの方は、①数式化、②数値計算用のツールについて関連記事のリンクを掲載しておりますので、併せてご覧ください。

 屋根は、ベースが必要か否かで2パターンに大別できます。私は切り妻屋根系の形状の場合はベース不要、それ以外はベースが必要という分類の仕方をしています。

●ベース不要な屋根の場合

 ベース不要の場合は、設置面の長さを測定し、それより数ミリ大きく切り出したものを屋根パーツとします。手書きで設計している場合は、斜辺の長さを知りたいことが多いと思いますが、コンパスで写し取る、三平方の定理で長さを算出する等で測定が可能です。cadの場合、寸法機能を利用すれば自動で算出してくれます。

●ベースが必要な屋根の場合
 まずはベースを設計しておく必要があります。ベースは建物本体から数ミリはみ出すように大きさを決定します。

 この工法の場合、少し複雑な形状の屋根も設計可能です。今回は一例として下の写真のような屋根の設計手順をご紹介します。

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 まずはベースからの屋根の高さを決定します。これは図中の赤い線で屋根を切断した際に生じる三角形の高さに該当します。これが高すぎると不自然にとがった屋根になったしまうので、あらかじめ高さを決定しておくことでそのようなミスを防げます。私は大体10㎜前後に設定することが多いです。
 なお、ベースの形がよほど特殊なものでない限り、左右対称、つまり断面は二等辺三角形にしておいたほうが、今後の設計における取り違えが減るのではないかと思います。

 屋根を形成する面の制作順序としては、図中A面のyの長さ次第で屋根の別なベクトルへの傾きを決定できるので、ここから設計していくのが良いでしょう。必須ではありませんが、A面を等脚台形にしておくと、A面を挟む面同士の斜辺の寸法をそろえることができるので、Bの対面を設計するときに部品同士の使いまわしがきくようになります。
 今回は、先に確認した通り屋根の断面が二等辺三角形であることから、これでB面の三角形のすべての辺が決定し、作図可能となります。3辺の情報から三角形を作図する具体的な手順は以下に示した通りで、これは手書きの場合もcadの場合も同様です。

  ①底辺(ベースの当該部分の長さ)をけがく
  ②直線の端点からコンパスでyの長さの円弧を適当に描く
  ③もう一方の端点においても同様の操作をし、
   円弧同士の交点と各端点を結ぶ

 次にC、D面について考えていきます。これらの面の形状決定のポイントは、建物の本体の作図の際にもご紹介した通り、「視点を固定する」ということです。具体的には、C,Dの面は離れてこそいるものの、建物側面からの視点に絞れば、一つの面に見えることに注目します(*)。さらに、この合体してできる面は断面の性質上Aと合同です。つまり、先ほど設計した面Aを切り分ければ、面C,Dをけがくことができるのです。
 具体的な手順としてはDの部分に該当するベースの長さを図り取り、図のように平行線を引くだけです。この際、Aを等脚台形に設計したならば平行線における同位角の性質からDはおのずと二等辺三角形になります。同時に、この段階で図中のzの長さが確定します。

(*)念のため、これはC,D面が並行であるからこそ成り立つものです。

 最後に、残っている2面を確定します。先述の通り、B面の対面であるE面はB面の部品を流用することができます。ベースの切り欠き分だけB面のほうの底面が短くなっているので、ベースに従って底面を伸ばします。そして、端点から図のように平行線を引き、zの長さを写し取ります。手書きならばコンパスで長さを写し取ることができますし、cad上で作図可能なのは言うまでもありません。そして、D面が二等辺三角形であることから、E面作図の際につけ足した平行四辺形を反転させればF面になることがわかります。以上で屋根を構成するすべての面を作図することができました。

 …と実況中継のようにまとめてみましたが、やや煩雑な作業であることがおわかりいただけたかと思います。ただ、行っている操作としては三平方の定理、視点の固定、相似などを駆使して、地道に一面一面推定していくだけです。もっとも、上の説明は完成品を見ながらですが、実際には頭の中でイメージしながら作図を行うため、筆者自身も断面と実際の面を取り違えてしまったりして混乱することは多々あります。混乱を避けるポイントはできる限り辺の長さをそろえたり、平行にしておいたりすることだと思います。ご紹介した例の通り、平行な辺を増やすことで、特にcadで設計する場合はコピーできる箇所が多くなり、設計がしやすくなるのではないかと思います。

(2022.08.02追記)
 この項の内容については、以下のリンクにて個別にまとめております。具体的な数値計算等にご関心のある方は合わせてご参照ください。

(2023.04.26追記)
 上記記事にて具体的な数値計算方法をご紹介したものの、面倒な方法ではあるため、計算補助ツールとしてエクセルシートを試験公開しております。

3.切り出しの準備

【必要なもの】
・外壁としたい素材(プラ板、工作用紙、ケント紙)
・設計図を印刷する用紙
・シール用紙(ダイソー等で購入可能)
・プリンター(コピー、印刷機能を使用)
・マスキングテープなど
すべて必要であるとは限りません。以下に示す例を参考に素材や手法に応じて必要なものを選択してください。

 さて、ここからは設計図を実際に切り出す作業に移っていきますが、その前に外壁の素材を決定する必要があります。外壁の素材次第で、別途用意すべきものや準備すべきことが少しずつ変わってくるためです。外壁の候補としてはプラ板、工作用紙、ケント紙などがあげられるでしょう。それぞれについてみていきます。

 まずは工作用紙、ケント紙で外壁を制作する場合についてです。第一に、設計図をダイレクトに印刷するという方法が考えられます。工作用紙もプリンターによっては給紙可能なので、私は印刷してしまうことが多いです(なお、プリンターでの工作用紙への印刷は自己責任でお願いいたします)。
 次に、設計図をマスキングテープ等で仮止めしながら切り出すという方法も考えられます。この場合、別紙に印刷した設計図を必要数用意しておけばよいのですが、ずれやすく正確に切り出すのが難しいので、あまりやったことがありません。
 最後に、シール用紙やスプレー糊で設計図を素材に貼り付けるという方法もあります。この際注意したいのが、どちらの面を表面としたいかです。設計図を貼り付けていない面を表としたいとき、すなわち設計図を裏側から貼り付ける場合は、設計図自体を左右反転する必要があります。そのため、張り付ける設計図は印刷の際に左右反転の設定をする必要があります。

 プラ板を使用する際にも、いくつか注意が必要な場合があります。まず、外壁の模様が表現されているプラシートを利用する場合です。この際は設計図を裏に貼るので、先述の通り事前に設計図を左右反転させておくことが必要です。
 次に、プラ板自体に厚みがある場合です。0.5㎜以上の厚みはそのまま組むと無視できないずれが生じてしまうので、それを見越してあらかじめ外壁の長さを調整しておくか、後で接着面を削って合わせるかの選択をしておかなくてはなりません。

 なお、勿論素材は必ずしもすべて同じものを使わなくてはならないというわけではありません。本記事で紹介している作例の場合、最も外側の外壁や屋根は模様が刻まれたプラシートに(左右反転した)設計図をスプレー糊で張り付け、内側の窓サッシを表現するために重ねるパーツはケント紙に(そのままの向きの)設計図を直に印刷、と使い分けています。1階と2階で使用するパーツを分けてテクスチャの違いを表現することも可能です。

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column 素材に関する余談

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 上の写真は模様入りのプラシートの例です。左からレンガ調、長方形のタイル調(2枚写っています)、正方形のタイル調、筋状のパターンが刻まれています。左の4つは津川洋行製のプラシートで柔らかく加工もしやすいので頻繁に使用しています。一番右の筋状のパターンはエバーグリーンのプラシートですが、これがかなり値の張るものなので、少しずつ使っています。
 これらのテクスチャ入りの素材を用意せずとも、自分でプラ板に模様をけがく、Word、Excel等でパターンを作って印刷したものを使用するなど様々な工夫が可能だと思います。

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4.切り出し

【必要なもの】
・カッターナイフ(デザインナイフでも可)
・替え刃
・各種やすり

 それでは、いよいよ部品を切り出していきます。
 切り出し全体にかかわるポイントとしては、カッターの刃をこまめに折ることが挙げられます。切り出しに際しては、カッターの刃は消耗品ととらえるくらいがちょうどよいと思います。少しでも切れ味が落ちたと感じたらその都度刃を折るとよいでしょう。

 切り出しの際に特に注意すべき部分は窓です。窓の切り出しのポイントを以下2点ご説明します。
 まず、窓の角の切り出しについてです。切り取り線通りの長さで切り出そうとした場合、カッターの刃が斜めに入っている都合で、表側からは切り取り線同士が交わっているように見えても、裏側は切り取り線が接していないことがあります。このような状態で無理やり窓を抜こうとすると、角にバリが生じてしまいます。窓廻りの切り取りは若干オーバーするくらいに、つまり「井」を書くように切り出すと抜けやすいと思います。なお、プラ板の場合は、対角線も切断すると真ん中から抜けやすくなります。ちなみに、どうしても窓を切り抜くのが苦手な場合は、外壁自体をさらに長方形のパーツに分けて再集合させる手法などもありますが、テクスチャが入っているとずれが許されず、どのみちかなりの精度の工作が求められるのは確かです。
 次に、窓サッシの切り出しです。0.5~1㎜単位でサッシを残す必要があるので、細心の注意を払う必要があります。ここで重要なのが、切断方向です。先ほど、少しオーバーするように切り取ることできれいに切断できると述べました。しかし、窓サッシを外側から内側に向かって切り取った場合、それに倣って少しオーバーしようとすると、真ん中のサッシまで切り取ってしまうリスクが高まります。つまり、窓サッシを切り抜く際は内側から外側に向かってカッターを動かす方向を統一する方がよいと考えています。

窓サッシ

 切り出しが完了したら組み立てに移りますが、厚みのあるプラ板を採用していて、かつ厚みの考慮が済んでいない場合は、ここで角の処理をしてからでないと組み立てができません。私は、このような場合はカッターナイフをプラシートに斜めに当てて、角を45度目指して削り取る場合が多いです。
 ただ、実際にはきれいに45度の角を得られることは少なく、ともすると表面までけずってしまい、やり直しになることもしばしばです。やすりで削るにも難点があり、断面ががたつくと面同士のかみ合いが悪くなってしまいますが、プラ素材の場合は、タミヤセメントで溶着することにより、多少の不整合ならば誤魔化せます。
 角にプラ角棒を挟んで解決することもありますが、テクスチャを連続させたい場合は、(プラ棒によりテクスチャが断絶してしまい)この方法は採れないので悩ましいところです。この辺りはさらなる研究が必要であると考えています。

角の処理

5.組み立て(1)

【必要なもの】
・カッターナイフ(デザインナイフでも可)
・2㎜ or 3㎜プラ角棒
・3mm or 5㎜L型プラ材
・接着剤(ゴム系・木工用ボンドなど)
(・楊枝)

 塗装に備えて切り出した部品を組み立てていきます。私は外壁と窓サッシ、屋根は塗装後に合体するようにしているので、ここでの組み立て作業としては①外壁を一周組み上げる、②屋根を組み立てる、③窓サッシのパーツを重ねる、の3点にとどめておきます。なお、形状が複雑で後から窓サッシを貼り付けにくいと判断した場合は、外壁を一周させず、半分ずつに分けておくことも考えられます。
 外壁を組み立てる際は、直角を正確に出す必要があります。そのために、角には形状に応じて2 or 3㎜のプラ角棒や3㎜ or 5㎜のL字プラ材を入れて直角に近づくようにします。工作用紙を重ねて外壁とする場合は、内側に重ねるパーツを左右3㎜ずつ小さくしておけばプラ棒を挟む際のガイドになったりします。
 接着はゴム系や木工用ボンド、タミヤセメントなどを使用します。ゴム系やボンドの場合は、はみ出すと見栄えが良くないので、口が細いものを使用するか、楊枝を用いて少量塗布するのがおすすめです。

6.塗装

【必要なもの】
・各種塗料

 組みあがったパーツを塗装します。自分の場合、塗装はスプレーで済ますことが多いです。塗装は苦手なうえに特筆すべきこともないので、詳細は割愛します。

7.窓ガラスの接着と組み立て(2)

【必要なもの】
・透明クリアファイル
・接着剤(ゴム系・木工用ボンドなど)
・各種やすり
(・楊枝)
(・厚手の板、プラ板、その他平らなもの)

 窓サッシのパーツにガラスパーツを装着していきます。私はいつも透明クリアファイルを切って使っています。安上りですのでお勧めです。クリアファイルを介しても住宅の中が見えてしまうという場合は、クリアファイルをやすって曇りガラス状にするとよいと思います。クリアファイルをやする際は、下に必ず板やプラ板などの平らなものを敷いてください。凹凸のあるところでやすりをかけると、ファイルがそれに追従してまだら模様のようになって見栄えが悪くなってしまいます。
 続いて、本体と屋根とを接合していきます。完成間近で非常にワクワクしますが、最後の最後でずれが生じないように慎重に接着しましょう。接着の際は、先ほどと同様につまようじ等で各種接着剤を薄く塗布します。

8.作例の完成図とディティールアップについて

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 最後に、作例として屋根の設計で取り上げた住宅の完成画像を貼っています。なお、ディティールアップとして
  ・屋根の淵に2㎜幅の装飾を追加
  ・2㎜プラ角棒で建物下部のベースを追加製作
  ・ベランダの断面に手すりとしてプラ材を配置
等の追加工作を行っています。ほかにもウェザリングやガスメーター等の小物配置などまだまだやることは尽きません。このようなディティールアップについては別途記事を公開しておりますので、よろしければ下記リンクからご覧ください。

(2023.04.26追記)
 本記事の作例を含めた住宅街ジオラマの詳細な工程は、以下のTwitterモーメントをご参照ください。

https://twitter.com/i/events/1441262305094758401?s=20

9.終わりに

 本記事ではストラクチャー制作の一連の工程について、できるだけ詳しく書き連ねてみました。すでに10000字overとなっており、期末レポート並み(もしくはそれ以上の)大長文になってしまいました。駄文にお付き合いいただいた皆様に感謝申し上げます。本記事がストラクチャー制作の一助となれば幸いです。

(2023.04.26追記)
 本稿の内容につきましてご不明な点等ございましたら、本記事のコメント機能やTwitterのリプライ機能等にて、ご遠慮なくお問い合わせいただければと思います。可能な範囲で対応させていただきます。直ぐの対応が難しい場合があること、また、TwitterのDMは開放しておりませんことをご了承ください。

(本文中の画像はすべて筆者作成)

END


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