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アマガエルセラピー 10

3つのタイプ

 田んぼからマンションを目指してくるアマガエルは大きく3つのタイプに分かれます。まるで天敵のごとくヒトを拒絶するAタイプ、同じ世界のよき隣人としてヒトを受け入れているっぽいBタイプ、そしてその中間のビビりなCタイプです。カメラを向ければ、そのタイプが判明します。

 静かに休んでいる被写体にマクロレンズをスローモーションで近づけていきます。Aタイプはこちらに気づいた瞬間、たたんでいた後ろ足をさっと横に広げて踏ん張り、いつでも逃げられるように身構えます。どこまで寄れるかは個体差がありますが、いったん許容ラインに侵入すれば、モニター上からぴょーんと消え去ります。

 Bタイプはこちらに気づいても悠長に構えています。警戒態勢をとることなく、ピントが合う最短撮影距離までぐっと近づけても全然怖がりません。それどころか、何やってんのかなあと興味ありげにレンズを覗き込んだり、ちょっと付き合ってやるかといった調子で、ポーズでもとるように居住まいを正したりする子もいます。

 Cタイプは一応警戒しますが、Aタイプのように絶対ダメという拒否反応ではなく、少しずつあとずさりして逃げていく感じです。ヒトを嫌いなわけじゃないんだけど、本能的にやっぱり怖い。単に気が弱いんでしょう。いったん慣れたと思っても、そっぽを向かれたり、おいそれとははいきません。

 うちのベランダに自力または保護されてやってきて、ずっといつく確率はAタイプはゼロです。餌付けまで進めないため、最初からあきらめています。どうにも納得いかないのがBタイプです。出会ったその日に手から直接食べるような子が、思いのほかすぐにいなくなることも少なくありません。逃げ回って餌やりに手がかかるCタイプとほぼ同率です。いなくなるたび、ヒトの世話になるのはごめんだよ、といわれた気がします。

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