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アマガエルセラピー 09

アマガエルセラピー

 ここ10年くらい、ずっと家にいるのが大好きな私は、気立てがいい働き者の妻に扶養されている身です。エッセンシャルな家事さえきちんとこなせば、あとは自分の時間を好き勝手に使えます。だからオンシーズンの夏場には、気がつくと朝夕2時間ずつくらいカエルたちと遊んでいることもざらです。いい大人が何やってんだと客観的に思うこともなくはありません。

 下手を打って会社をクビになり、仕方なくフリーになっても思うようにはいかず、少々くすぶっていた時期に心機一転、海と里山のある鴨川に移住したところ、カエルたちに出会いました。見ているだけで楽しく、最初のころは四六時中つぶさに観察していました。元々依存体質ですが、カエル依存症といってもおかしくないほどです。

 カエルたちはそれぞれお気に入りの寝床を確保し、昼間はずっと寝ています。暗くなると黒目を全開にして活動を開始。ぴょんぴょん跳ねるイメージですが、実際は四つん這いで動き回り、ライトに集まる羽虫を捕ったりしています。ところがいったん餌付けに慣れると、もう羽虫をちまちま追いかけたりしません。エネルギーの消費を節約し、餌をもらえるのをじっと待つようになります。

 こんな調子のいいところも含め、なんだか自分に似ている気がしてなりません。集団行動が苦手で競争は嫌いだし、前世はカエルだったのかも。自由気ままで暢気なカエルたちと接していると妙に癒されるのは、きっと仲間意識も関係しているのでしょう。

 心地いい寝床があって、食事の心配がいらず、自分の時間を自由に使える。今こうして元気で生きていられるだけで、十分幸せなことに気づきました。もちろん妻にはいつも感謝してやみません。法事などで親戚に会っても、今は専業主夫で家事全般を担当しているんですよと堂々といえるようになったのは、カエルたちのおかげです。

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