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【自由研究】Netflixのナイジェリア映画全て観てみた話

映画仲間がハンガリーやルーマニアなど一国に特化して映画を研究している。私も映画の伝道師としていい加減一国特化記事を書かなきゃいけないなと思った時にNetflixでナイジェリア映画が大量に配信されていることを思い出した。2015年、日本にやってきて映画サブスクリプションサービスの覇権を握ったNetflix。サービス開始時点から、ナイジェリア映画(通称ノリウッド作品)が大量に配信されていた。

なかなか日本で観られないような作品があり、『オクラを買いに行かせたら』は2017年の年間ベスト(旧作海外作品部門)に選出した。本作は、イギリスで暮らすナイジェリア人の子ども目線から二世の複雑な気持ち、移民同士の軋轢を描いた作品で興味深い作品であった。

高野秀行「幻のアフリカ納豆を追え!」によると、2015年時点でナイジェリアの映画制作本数はインドに次ぐ世界2位、997本が作られている。ただ、一説によれば2,000~2,500本近い作品が作られているとのこと。

さて、現在のNetflixでは約20本近いナイジェリア映画が配信されている。今年の初め頃から半年近くかけて全て観てきた。かなり映画として厳しい作品も少なくないものの、ある特徴が浮かび上がってきたのでレポートとして特徴をまとめていく。


1.結婚至上主義との闘いとしてのノリウッド

まず、ノリウッド作品を観ていくと日本映画ではあまりみかけない光景に気がつく。それは、ビジネスに関する話題が多いということだ。結婚式のプランナー、弁護士、バス会社の経営者etc…。しかも、多くの作品において女性がその職種についている。これはNetflix配信作品以外でも確認ができ、例えば『EYIMOFE(THIS IS MY DESIRE)』では、工場の電源盤を保守するエンジニアをこき使うマネージャーが女性である。

Netflix作品に戻ると、自分のキャリアを歩む女性がナイジェリアの伝統的な結婚至上主義と対立する、またはハラスメントと立ち向かう話が多いことに気付かされる。

ナマステ・ワハラ ~トラブルよ、こんにちは~』を例にとる。この映画は主人公であるディディ(イニ・ディマ=オコジエ)がインド人と恋に落ちる内容である。ここに複雑なナイジェリアでの心理関係が紡がれるのだ。

そのひとつとしてナイジェリアにおける結婚至上主義問題がある。ディディは、NGOでボランティアしながら弁護士をしている。実業家の父は、それをあまりよく思っておらず、「早く結婚して子どもを授かってほしい」と願っている。彼女は、結婚とキャリアの間で板挟みとなるのだ。この家族が娘の結婚を心配する話は『恋愛プランナー』でも描かれており、こちらでは他人の結婚式のアレンジばかりしている娘を心配する家族像が描かれている。

ディディはインド人である銀行家のラジ(ルスラーン・ムムタズ)が一目惚れをしたことにより恋愛関係になる。仕事と恋愛を両立させる方向に進むのだが、人種を意識する母親から難色を示されてしまう。

ナイジェリアにおける伝統的な結婚至上主義との対立を「ロミオとジュリエット」的に描いているのである。実際に高野秀行のフィールドワークによると、ナイジェリア社会において女性=家事を行う者という価値観は存在するとのこと。女性は手間をかけて料理を作るべきといった価値観から、味の素を使う女性を「怠け者」だと嘆く状況がある。

Netflix配信のノリウッド作品では、そのような価値観を打破しようとする動きが観測できる。

2.ハラスメントとの対峙

『ナマステ・ワハラ ~トラブルよ、こんにちは~』では、もうひとつのテーマにハラスメント問題がある。ディディが弁護士として担当する案件として性的暴行被害者の弁護の仕事が舞い込んでくる。よりによって、自分の父親の取引先の人が容疑者となっているため、親子関係に亀裂が入る。その中でどうやって証拠を掴んでいくかが物語の肝となってくる。

Netflixではこのようなシビアなハラスメント裁判映画がいくつか配信されている。そして、そのどれもが切り口、展開に注目すべきものを持っている。

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