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VTuberになってみた話

こんにちは、映画の伝道師che bunbunです。

みなさんにとって2022年どんな年だったでしょうか?

■VTuber元年だった2022年

▶︎YouTube動画研究の始まり

私にとって2022年は、「VTuber元年」でした。昨年末からCINEMAS+で映画ライターとして記事を書くようになり、また近年トークショーにゲストとして呼ばれることが多くなり、

映画とは何か?

映像メディアとは?

を考える機会が多くなってきました。おかあさんといっしょアンパンマンといった子ども向け映画が過小評価されていると感じており積極的にリポート記事を書いてきた。2022年はYouTube動画を研究しようと、500本近い動画を観てきた。

一般的にYouTube動画は平面的な構図の動画が多いのですが、お笑い芸人ガーリィレコードが運営するチャンネルが、フェニックスさんの天才的な長回しと空間構図による作品を多数制作していることに気付かされました。

これは凄いぞと実際にCINEMAS+さんで寄稿を行い、本格的にYouTube動画研究を始めたのが2月であった。

▶︎衝撃!寝ている姿を5時間収めたVTuber配信動画

3月にはASMR動画を追っていたのだが、一本の動画に惹かれた。にじさんじ所属のVTuber物述有栖さんが5時間に渡って自分の寝ている心音を聴かせるASMR配信動画だ。

半世紀以上前、アンディ・ウォーホルが友人である詩人のジョン・ジョルノが寝ている姿を撮り5時間以上の作品に仕上げた『スリープ』を発表した。本作は映画レビューサイトFilmarksだと苦しんで観たような感想が散見される。それに対して物述有栖さんが寝ているだけの動画には多数の好感コメントが寄せられ、10万回以上再生されている。

▶︎哲学学会、ライブ、凸配信に参加してみた

これはどういう現象なんだとVTuberを追い始めた。VTuberの世界は非常に特殊で映画界隈からすると異質なものであった。顕著なのは、「切り抜き動画」の存在だ。映画界隈では映画のフッテージを繋ぎ合わせて物語を10分程度で語る「ファスト映画」が摘発された。一方で、VTuberの配信を切り抜いた動画はある程度許容されている。むしろ、広告塔として活用されていたのだ。この違いに衝撃を受けた。また、映画の同時試聴を扱う配信動画も見つけた。映画は一人で黙って観るものだと思っていた私にとってこれまた衝撃的であった。

そこから、9ヶ月VTuber動画を片っ端から観てこの異様な文化に迫っていった。夏にはVTuberを哲学の領域から研究する山野弘樹氏によるフォーラム発表「VTuberがVTuberとして現出するということ」を拝聴したり、推しのVTuberピーナッツくんのライブ「Walk Through the Stars Tour」に行って、その度に驚かされた。この感覚は、私が中学時代に『ファイト・クラブ』、『2001年宇宙の旅』などといった作品を観て映画にのめり込んだ感覚に近い。久しぶりに掻き立てられるこの感情に胸躍らされた。

さらに映画系VTuber萩野ナイトさんの凸配信にお邪魔してみた。Discordというアプリを繋いで行なった。実際にやってみると、VTuberがどのように異なる場所にいる方と通信をとっているのかがよく分かる。他の映画系VTuberの配信も拝見して、実際にコメント打つ体験も行い、VTuber配信におけるインタラクティブなコミュニケーションの感覚を掴むことができた。

▶︎clubhouseやスペースでの日々

ここまで、来ると自分でやってみたくなるものである。実際に2020年〜2021年にかけてclubhouseやTwitterのスペース機能といった手軽に音声メディアで自己表現できる場ができた。これが非常に面白く、いままで文字列上の存在だった映画ファンと話すことができ、以前から尊敬している映画専門家・済東鉄腸さんとは物理世界でも会うような関係になった。

また、コンゴ民主共和国在住のてんやわんやママさんと公開インタビューを行うこともできた。遠く離れた人と親密に濃い話ができるのは、ブログやTwitterのTLではなかなかできないことである。一方で、私のclubhouseやスペースでは基本的に専門的な話を行うため、

1.画像がないとわかりにくい
2.リスナーがフラッと入って試聴しづらい

といった問題を抱えていた。私としては、日本未公開映画や謎の映画を布教し、映画の魅力を伝えていきたいものがあった。特に近年は、本業が中間管理職的ポジションになり忙しくなってきたのと、体力の衰えから膨大な作品を観る余裕がなくなってきた。体力がありあまり、未知なる映画に興味を持っている者に異次元の扉の開き方を伝授する必要があるかなと思っていた頃だった。YouTubeの映画系配信者を追っていると、専門的な配信を行なっているのは年配の方が顔出ししているものが多い。みるからに専門的で入りにくく感じるのではないか?

そう考えた時にVTuberは有効だと考えた。日本の場合、アニメになると多くの者の関心が集まり、どんなに難解な作品であっても考察しよう、深掘りしようとする特殊な心理状態があるように思える。

実際にシン・エヴァンゲリオン劇場版:||』や『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』は、実写であったら3大映画祭に出品されるような難解形而上映画だと思う。しかし、ブログや映画感想投稿サイトを観ると熱気に溢れている。つまりアニメ調のアバターをまとうことで、隠れた名作を観ていただけるかもしれない。日本未公開映画沼に入ってくれるかもしれない。「死ぬまでに観たい映画1001本」フルマラソンに挑戦してくれるかもしれないという期待が高まった。

すぐさま脳裏に配信者として映画紹介している自分の姿が浮かんだ。

「できる!」

と思った。

とはいっても、アバターを動かすなんて、配信なんて難しいんじゃないか?と躊躇する気持ちが数ヶ月私に停滞をもたらした。

▶︎イーロン・マスクのご乱心が私をVTuberにさせた

12月中旬、映画仲間と忘年会でトルコ料理屋に行った。その時に、仲間のひとりが「スペースが使えなくなっている!」と言い始めた。確かにTwitterを開くと、スペースのボタンがなくなっているではありませんか。どうやらイーロン・マスクが勢いでスペースを使えなくしたらしい。

12/29(木)に2022年映画ベストスペースを開こうとしていたのに果たしてできるのだろうか?翌日にはスペースは復活していたものの、イーロン・マスクの暴走っぷりをみるに、当日開催できない可能性があった。どうしよう、別の手段……そうだ!VTuberなろう!

残り2週間を切っていた。私のVTuber配信プロジェクトが発足した。

■VTuberになってみる

▶︎配信環境確認

VTuberというと動くアバターを用意し、複雑な配信環境を構築する関係上、パソコンに負荷がかかる。なのでゲーミングPCで配信している人が多い。自分はMacBook Proしか持っていなかった。スペックは下記の通り。

チップ:Apple M2
メモリ: 8GB
ストレージ:245.11GB

調べてみると、この環境でもYouTube配信はできるらしい。しかし、配信に必要なソフトウェアOBSを使う上でMacだと制限があったり、難しい設定が必要とのことであまり推奨されていないようだ。しかし、理論上はできる。ではやってみよう。

▶︎立ち絵を用意する

ここで重要な問題とぶつかる。

「アバター」をどうするか?

一般的にVTuberは動くアバターを使用する。コラボ配信の場合だと、静止画を使うこともあるが、それは例外だ。しかし、VTuberの本質は「物理世界とは異なる画を通じて配信する者」だと思う。一旦、動かぬ立ち絵を用意して配信してもVTuberといえるだろう。

各SNSのアイコン

立ち絵だったら描いてくれる専門家を知っていた。以前、SNS用のアイコンを旧友であるながみちながるさんに依頼して描いていただきました。

ながみちながるさんは鈴木祐の書籍『まんがでわかる 最高の体調』のイラストを手がけていることで知られている方だ。

自分の妄想が炸裂したイメージ図

彼女に依頼したところ、二つ返事でOKをもらいました。早速、イメージ図を送った。2時間ぐらいでラフ図が送られてきた。なんと、立ち絵だけでなく背景まで用意していただいた。背景の構図が若干玄人向けなものだったので構図を微調整する必要があったが、私のイメージ図が具現化されて「絵師って凄いな」と感動した。

VTuber動画を観たことがないと伺ったので年間ベストスペースの構図に近い配信を幾つか送り、調整した。その結果、爆誕したのが下記である。

立ち絵+背景
背景
立ち絵
タリスカーのボトルイメージにCHE BUNBUNのラベルとぽちょむきんが描かれています。
芸の細かさに感動した。

また、おまけでマスコットキャラクター・ぽちょむきんの立ち絵も送っていただきました。実際に本番の配信ではローディング画面(待機画面)作りに活用しました。『戦艦ポチョムキン』をイメージしてセーラー服の可愛らしいホーランドロップのイラストに仕上がっていました。

ローディング画面(待機画面)

▶︎配信環境構築

ここからは配信環境の構築である。調べてみると、MacBook Proから配信するにはいくつかのアプリケーションをダウンロード、ユーザー登録、設定する必要があるらしい。

1.YouTube Studio→YouTubeにアップする配信動画をコントロールする
2.OBS→配信画面を作る
3.Discord→ゲストとの通信を行う
4.BlackHole→仮想オーディオデバイス(Macの場合、PC内の音を拾う時にオーディオデバイスを用意する必要がある)
5.AudioMIDI→ヘッドホンやBlackHoleを一つの出力装置として扱うよう設定するアプリケーション
6.LadioCast:仮想オーディオミキサー(音声の入力出力を制御する)

幾つか参考資料を確認しながら設定してみた。

▶︎有識者とのDiscordテスト

萩野ナイトさんの凸配信を行う際に、Discordを使ったことがあるKnights of Odessaさんと一緒に音声テストを行った。今回も、動作検証をお願いしました。併せて、済東鉄腸さんも招いて配信できるか確認してみました。

しかし、何故か自分のヘッドホンから自分の声が聞こえるは、YouTubeと連動させてみたら、PC内の音がループして放送事故を引き起こしたりして散々であった。1時間ほど粘るも改善されず、一旦解散しました。その後、さらに1時間ほど粘る。

BlackHoleとヘッドホンの入力/出力の関係性を図にしたら腑に落ちた。

まず、アプリの関係性がわかっていないのではと思い、図を描いてみることにした。物理世界でシステムエンジニアをしているだけに、ノウハウが役に立つ。そして、下記のように設定したら、上手く動作した。

▶︎配信設定の確立

【AudioMIDI】

BlackHoleはインストールすると自動的にオーディオ装置に組み込まれるので、MacBook ProにデフォルトインストールされているAudioMIDIから設定する。

【LadioCast】

入力と出力の関係を制御するアプリケーション

【Discord】

ユーザー設定>音声・ビデオから設定できる。
なお、PCとスマホアプリではGUI(画面)が異なるので注意。

【OBS】

OBS画面。ここに文字や画像、コメントを置ける。
オーディオの詳細プロパティ。
音声を扱う項目の「モノラル」にチェックが入ってないとイヤホンの片側からしか
聴こえない問題が発生する。
配信に来ていただいた方からのコメントを受けてチェックを入れたら改善された。
OBS側での音声入力/出力設定

【YouTube Studio】

ストリームキーをOBSと連携することで配信できる。

▶︎初心者とのDiscordテスト

今回の配信では、初配信にしてはハードルが高いゲストを招いた対談方式を取った。ゲストのTERRA_sunさん寺本郁夫さんはDiscordを使ったことがない。そこで、事前に動作確認を行うことにした。Discordの概念を説明し、実際につなげてみるも、なぜか髭剃りの音が鳴り始めてしまいには声が聞こえなくなってしまった。調査をするとどうやらゲストのPCに負荷がかかっているらしく、PCのファンの音を拾ってしまっているようだ。これは別の方法を取ろうと、スマホから繋ぐ方法を試してみたが、なぜかこれも上手くいかない。もうひとりにもスマホからの接続を行なっていただいたのだが、何故か繋がらない。iPhoneの入出力デバイスのアクセス制御を見直してみるも、Discordは許可されている。なんだろう?

試行錯誤すること早2時間。原因が分かってきた。どうやらPCからのDiscord通話が切れていなかったらしい。PC側の通話を切っていただき、スマホから再接続したら通信が取れた。これで配信ができる。

▶︎デモ配信

本番の配信は4時間を超える初配信とは思えぬ長距離走だ。果たして本当に配信できるのだろうか?心配になった私は、前日にデモ配信を行うことにした。

この日が、会社で忘年会が開催されていた。酒を飲まないようにしていたのだが、忘年会だから酒をスルーできるわけもなくガッツリ飲んでしまった。

割と酔った状態で配信していたのでアバター:ウェイ・オブ・ウォーター』評とかジャン=リュック・ゴダールの『ヌーヴェルヴァーグについての理論語りがポンコツすぎて本当に申し訳ない配信となってしまった。とはいえ、知り合いの映画仲間が駆けつけてくれてコメントを打ってくれたり、音声について違和感を指摘してくださったりして助かりました。私は結構ポンコツだったりするのですが、周りの有識者がアドバイスや指摘をしてくれるので本当に助かります。感謝しかない。私の映画話を楽しみにしている方のために努力は惜しみません。

▶︎配信当日

当日は30分前にゲストの方と打ち合わせを行い、配信を行った。

 右(配信用MacBook Pro)、左(Twitter、YouTubeコメント確認用MacBookPro)

PCは2台体制で行い、コメントを拾ったり、RTA in Japanのツイッター運用を参考にしてゲストが話す際にはYouTubeのリンクを貼ってすぐに飛べるよう運用を行った。

Knights of Odessaさんのベストポスター
ベストの文字が小さいので、Twitter用と別のタイルを用意しておけばよかったと反省。

各ゲストの発表時にポスターを用意した。しかしYouTubeに映すと字が小さくて見えない。Twitter用とは別のタイルを用意すればよかったなと反省。

また、ゲストの方と対話する中でclubhouseやTwitterスペースとの違いを少し言語化することができた。

★clubhouse、Twitterスペース:誰が視聴しているかが分かる。
→誰が来ているかが分かっていた方が話しやすい人には便利。
→ふらっと入りにくい。

★YouTube:コメントをしないと誰が来ているかが分からない。
→人数だけが表示されるので、リスナー側はふらっと入りやすい。

▶︎チャプターをつけよう

今回の配信は4時間半に及ぶものだった。アーカイブで観る人の中には特定の方のベストを聴きたいと思う。たまに、VTuberの配信を観ていると、時間バーが区切られていて何の話をしているか分かることがある。これをやりたいと思った。

ここでもエンジニア仕事の知恵が活かされる。重要なのは、やりたいことの概念を指し示す単語を特定することだ。これが時間がかかった。正解は「タイムスタンプ」「チャプター」であった。Web記事を元に設定してみた。なぜかシークバーに反映させることはできなかったのだが、概要欄から飛ぶことはできた。シークバー反映は今後の課題である。

嬉しいことに、翌日には150回以上も再生されていた。モチベーションが上がりますね。

ただ、今回は試験運用だったので、パイロット版も併せて2023/1/31(火)までの限定公開とすることにした。

■VTuberになってみた感想

実際にVTuberになって配信してみると、非常に奥深い世界だなと感じた。大学時代に、サークルでいろんな動画を撮ってきた。6年ぶりぐらいに動画をアップしたのだが、今やコメントを制御できたり、タイムスタンプをおけたり進化していて面白いなと思いました。

ここで気づく、肝心な自己紹介配信をしていないということに。他のVTuberの配信を観ると、伝統としてハッシュタグを決めたり、世界観を表す自己紹介配信をしているとのこと。これをやらずにいきなり4時間対談配信をしている状況に私はいます。しかも、折角立ち絵を描いてくださった、ながみちながるさんの説明を全然できていない。これは申し訳なさすぎる!

ということで年明けにでも自己紹介配信をやろうと思います。2023年は文章と映像でいろんな映画を紹介していけたらなと思います。また、4月に物理世界でVTuberをやっている方が入社する。そこまでには「アバター」を使えるようにして動的な配信をやりたいなと思います。

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