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#2「背景」”ハラスメントの変化”

これは(録音を)してるな…って。

(この記事は #1「背景」”ただでは転ばない” の続きです。)

体調不良を理由に上司へと相談したところ、ハラスメント被害にあってしまったMさん。何度かの交渉の末、解決金と会社都合という名目を約束させ、退職する。

しかし、ハラスメントは著者の想像とは少し異なるものだった。

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上司の正体。パワハラの変化。


Mさんの話を聞いていると、ふと話の流れで、
「それであの女が…」とMさんが口走った。

私はずっとAを男性だと思い取材を進めていたが、
Aは”妙齢”の女性らしい。

一昔前はいわゆる  ”女性の都合”  に関して口出しをするのは男性のイメージが強かったが、今日ではだいぶ事情が異なっているという。

Mさんによれば、男性によるそういった口出しは  ”パワハラに加えてセクハラにも問われるリスク”  があることや  ”経験がない故に深く言及ができない”  こと、また、当人の立ち回りやその環境の男女比などにも左右されるものの、  ”女性全体を敵に回すリスク”  があることから、比較的男性側からそういった物言いは近年では少ないのではないかと語る。

反対に女性からの場合は、自身の症状が軽度な場合、他の女性が過度に主張していると考えて攻撃対象にすることがあり、男性よりも事態が面倒になることが多い印象がある、とのことだった。

「 自分は軽いのにほんとにそんなに重い人がいるの?って 」

「  ”確かに重いけど動けないほどじゃないし” って感じの人は、自分に当てはめてしまって理解ができないんじゃないですかね」

と語る。

わからないから男性が無責任に責める、というだけではなく、ある程度の理解があるからこそ責める女性もいるのだろう。

一連を通して


Mさんは一連のやり取りを通してAはかなり人を辞めさせることに手馴れていたと語る。

そもそもMさんとAは、最初のやり取りがあるまでは、面識すらなかった。

だからこそ、Mさんは一回目からあまり深刻な話にはならないだろうと考えていたのだが、最初から退職を迫る対応をされ、ひどく困惑したとのことだった。

たやり取りの最中についても、二回目のやり取りから、Mさんは録音をし、パワハラや会社都合と主張する根拠となる材料を引き出すための立ち回りをしていたが、幾度もあったやり取りの中でAは巧妙に  ”NGワード”  は用いず、また、材料となるような発言もしなかった。

「  ”そういったお話(人間性などについて)をされるのは、(辞めさせるための)意図があったりするんですか?”  って聞いてました。  ”あくまで、今お話してるのは体調についての話じゃないんですか”  って。」

「 でも  ”そんなつもりはない”  ってしっかり否定するので  ”慣れてるなあ”  って感じましたね。」

 Mさんはやり取りを通してかなり洗練された印象を感じたが、それでも騒ぎになっていないのは、今回のMさんの一件のように金銭を介した  ”穏便な解決”  をしてきたからではないかと推察していた。

「 会話の中で、体調が悪い人は辞めちゃった、男性ももっといたけど辞めちゃったって話していたんですけど、絶対に辞めさせてるだろ…って思いました。」

 また、録音についても向こうも録音をしていると感じていたという。

「 絶対に以前言った内容を変えないんですよ」

「 就活のサポートのための資金について、払うかどうかの真偽を尋ねたときも、知らん顔はできたはずなのに、ちゃんと認めたので、これは(録音を)してるな…って。」

ただMさんが何より驚いたのは、現場の上司が一連のやり取りについても、当日に辞める可能性があったことも何も知らされていなかったことだった。

「 Aが呼び出す時は、現場との兼ね合いもあるので、一度直属の上司を介して呼び出されるんですが、Aからこういった話があったと相談したら、その上司は私の退職について何も聞かされてなかったんですよね笑 」

と無邪気に笑っていた。

暗殺のような退職勧告がずっと続いていたのだろう。
退職者の多い職場で同僚や先輩が気付いたら来なくなる、というのは
珍しい話ではない。

こういった職場の管理職は ”辞められること” にも ”辞めさせること” にも慣れており、こういった退職を秘密裏に進めるのには慣れているのだろう。

Mさんは今回のことを振り返って

「 相手はかなり手馴れていましたが、試用期間を超える期間分の給与を払うって言ってしまったのは向こうにとっては失言でしたね。」

「 試用期間を超える形での雇用の体裁は向こうにとってはデメリットが大きすぎるのでそこは死守してくると思っていたんですが、そのラインを向こうから超えてくるなら、もう青天井ですから笑 」

「 ただ普通はこういった扱いをされて青天井が見える子は少ないでしょうし、パ二クっちゃう子は多いんじゃないですか。なんなら最初のパワハラの時にショック受けて辞めちゃう子もいると思います。」

と語った。

不幸にもパワハラに逢ってしまったMさん。彼女は早い段階で見切りをつけ、持ち前の打たれ強さや行動力で自ら相手と折り合いをつけた。

しかし、彼女も語っていたが、実際にパワハラに真っ向から立ち向かって交渉できる人は少ないだろう。当人の環境によってはもっと過酷な環境で耐え続けなければいけないケースも多くあると聞く。

近年相談が増え続けているハラスメント被害にほん少し風を吹かせるような話だった。

#3「背景」 ”倫理の暴走” に続きます。

本当はいかなくていいんですよ…。今ならわかります…。

※#3、#4は有料記事になります。

気丈で不器用なMさんをMさんたらしめた過去について。
よろしければご一読ください。


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