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【南大沢土木構造物めぐり】No.18 「橋」か「トンネル」かどっち? ~カルバートという構造物~

表紙の写真は、南大沢から上柚木地区に向かう遊歩道の一風景です。上に道路が横切っています。道路との交差部においては、これまでいろいろな「橋」を紹介してきましが、ここには桁が架かった橋ではなく、コンクリートの構造物の上に土が盛土された、「トンネル」のようにも見える構造物によって交差しています。

この構造物、「カルバート」と呼んでおり、簡単に言うと、コンクリートで壁や天井を作り、その上に盛土をしたものです。ただこの構造物、「橋」なのか「トンネル」なのか、定義があいまいです。地上で交差する道路を跨いでいるので、「橋」でもありますし、ある意味「暗渠」と考えるとトンネルと考えてもおかしくありません。下の写真はこのカルバートの内部。これを見ると「トンネル」と言いたくなりますね。

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ただ、上から見ると、何となく「橋」に見えてきませんか?

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路上からだと、高欄が無い限りは、下に遊歩道が交差していという印象がありません。

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このように、カルバートという構造物は、橋、トンネルのどっちの機能も有する存在です。もう少し別な場所のカルバートを眺めてみましょう。

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これは同じ道路と別の遊歩道が交差する場所。地元の人には、「三徳」と「オーケーストア」という2つのスーパーマーケットの下を行き来できる遊歩道、というと場所が何となくわかるのではないでしょうか。ここは先ほどのカルバートよりもさらに盛土が高いため、何となく「トンネル」っぽい風格があります。天井部分がアーチ状の、「アーチカルバート」という構造物です。これも「橋」か「トンネル」かは、道路管理者に聞かないとわかりません。

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上から見たら、もう歩道橋の存在は全く見えません。「橋」か「トンネル」か、という前に、上の人は下に交差する遊歩道に気づかないかもしれません。

もう1か所紹介しましょう。ここは、上記2か所からは少し離れて、鑓水地区の多摩美術大学に近いところ。上に尾根緑道という遊歩道が走り、その下を道路が通っています。どう見ても「トンネル」の風格が漂っていますが、アーチを作って盛土したものなので、土木の構造形式からすると、「カルバート」で、「橋」か「トンネル」かやはり曖昧な構造物になります。

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おそらく、カルバートは「函渠」とも書きますので、どちらかというと「トンネルっぽい」と感じるかと思います。この写真から見ると、どう見てもトンネル、ですよね。

さいごに、鑓水地区の大栗川の上流で見かけた、「カルバートの工事」について紹介します。前の2事例とは違って、下は大栗川、上は道路です。この工事、蛇行する上流域の河川と、車が通行するのが難しい狭い道路を改良するために工事しているものです。

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川の下流側から見たところ。上の道路には、盛土がほとんどないため、これは「カルバート」というよりは「ラーメン橋」に近いです。見た目もこれは「トンネル」と呼ばず、「橋」と呼ぶ人が多いでしょう。

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川の水が流れていないように見えますが、手前の「コルゲート管」で川を一時的に迂回させて工事をしています。

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下流側の状況。ほとんど水が流れていません。降った雨は、この川ではなく、どうやら並行する雨水下水管線に流れているようです。

この場所を工事が本格化する前に撮影した写真です。

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狭い小川に狭い橋がかかっていたものを、カルバートに作り替え、道路も川も改良しようとしているようです。

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工事説明看板には、「現場打ちボックスカルバートを整備」とあります。あえて「橋梁」と書いていないですね。

【終わりに】

今日はいろいろな場所にある、「カルバート」という構造物を紹介しました。「橋」と「トンネル」のどちらに近い役割も果たしています。都市部の地下鉄の駅や線路も、この構造で作られているものも多く、立派な「隧道」として位置づけられているものもあれば、「橋梁」に近いものも多く、あるいは電線などが入った「ボックス」のようなものも少なくありません。知らないところで「カルバート」にお世話になっていることが、実はたくさんあるのではないかと思います。

身近な場所で、「カルバート」を見かけたら、「橋」か「トンネル」どっちかな?と想像してみると楽しいのではないでしょうか。

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