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■黒部川に土木の魅力を訪ねる■③黒部川のいろいろ

真冬の宇奈月温泉に来ています。前回は宇奈月温泉駅周辺を散策しましたが、欅平に向かうトロッコは運休中で、街は閑散としています。しかし、やはりとても興味深いものが多い場所であることを再認識しました。
(前回の探索はこちら)

今回は、宇奈月温泉から移動し、黒部川関係の様々な魅力的な場所を訪ねます。

■黒部川下流域を地図で見る

今回探索するのは、宇奈月温泉から、一旦宇奈月ダムを見て、そこから黒部川を下流に河口を目指します。国土地理院の地形図で、色別標高図と地形図を重ね合わせると、こんな絵が描けます。

黒部川下流の色別標高図+地形図。
愛本橋から美しいくらいの扇状地が広がります。

■宇奈月ダムへ

ではまず、宇奈月温泉の少し上流、宇奈月ダムに行ったところからご紹介します。

宇奈月ダムは、2001年に完成した、国交省直轄の多目的ダム。
重力式コンクリートダム、という形式のダムです。
洪水対策・利水対策・発電の目的を合わせたダムです。
宇奈月ダムの湖面橋。
バスケットハンドル型ニールセンローゼ橋(川田工業施工)

【建設当時の川田技報:1991年】 https://www.kawada.co.jp/technology/gihou/pdf/vol10/10_topic02.pdf

ダム湖。少し遠巻きに見えるのが、関電の新柳河原発電所。
初代の旧・柳河原発電所はダム湖に沈んでしまいました。
こちらに見えているのは、ダムができる前の
黒部峡谷鉄道の廃線跡軌道敷です。
湖面橋の上に一筋の横線が。こちらは十二貫野用水が流れていた場所。
(今はトンネル化されていいるようです)
ダムのPR館の中には、黒部峡谷の模型が展示されています。
ダム堤体もすごいですが、背後の法面工もかなりすごいです。
【ダム本体連絡トンネル 1990年 北陸地方建設局 延長75m 施工 坂田建設】

■下流側をめぐる

宇奈月ダムから、宇奈月温泉の裏側を通り、音沢発電所、愛本発電所を訪れました。こうやって見ると、水力発電施設が下流側にも沢山あることがわかります。

宇奈月温泉の対岸から、温泉街を望んだところ。
正面に見えるコンクリート構造物が、黒部峡谷鉄道の駅です。
少ない平坦地にコンクリート構造物を追加した形です。
こちらは、少し下流の音沢発電所。
その脇には、昔の発電所の大きな部品が保存されています。
こちらは、黒部川の扇状地の一番要に位置する、愛本発電所。
白い建物は昭和11年の建物です。

愛本発電所の横にある、ダムのようなものは、下流の灌漑用水のための「愛本堰堤」と呼ばれる施設です。黒東・黒西用水がここから取水されています。

愛本橋。1969年豪雨で流失した橋を再建したものだそうです。
黒部川、やはり暴れ川なのですね。
こちらが、愛本堰堤から取水された、黒西合口用水です。
たくさんの水量が下流側に流れています。

■黒部川の河口を目指す

引き続き、黒部川の河口をめざしますが、黒部川流域の用水路には、小水力発電所がいくつもあるとか。用水路を管理する土地改良区が、豊富な水の流れを利用してタービンを回す発電所をつくっています。そういう発電所を見学しました。

こちらは、黒部川の用水路の水流を利用した、小水力発電所。
黒部川流域には、水の恵みがいろんな場所にあります。
【舟子川用水発電所 出力190kW 黒部川左岸土地改良区】

出力190kWは、愛本発電所(最大出力30,700kW)の実に100分の1以下の小出力ですが、こういう発電所を多数つくり、環境にやさしいエネルギーを生み出しているようです。

発電所から流れ出した水が放流される様子。
この豊富な水量が、発電のエネルギーの源泉です。
黒部川の河口に来ました。土砂の供給が多いからか、河口に砂の堆積が多かったです。
河口から見た、雪の立山連峰。素敵です。
黒部川の堤防は、霞堤になっていて、何列も連なっている形です。

■黒部宇奈月温泉駅の地域観光ギャラリーにて

黒部川のことを、最後に立ち寄った黒部宇奈月温泉駅前の地域観光ギャラリーでも改めて知ることができました。

巨大なジオラマ。黒部川の扇状地は、他の川のどれよりも大きい感じがします。
ジオパークのことを教えてくれる展示。なかなか充実しています。
黒部川がいかに急流河川であるかを教えてくれています。
①が片貝川、②が常願寺川、③が黒部川。どれも富山県下の川。
片貝川は、30km足らずで2500mの標高から流れ下ります。
このジオラマ、海底も見えます。山も急峻ですが、海も深いのが富山湾の特徴。
帰りの新幹線に乗ります。
旅のお供は、ます寿しです。とても美味しかったです。

■終わりに

冬の宇奈月温泉をおとずれた今回の遠征。黒部川の豊富な資源は、発電だけでなく、灌漑や小水力発電にも使われていることを知りました。そんな意味でとても魅力的な場所であると改めて知りました。

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