催花雨(さいかう)に打たれて
「私のことを思ってくれるなら、お前ならできる、って、応援してよ!」
舞は思わず、母に声を荒げた。
「そんなこと言ったって、ダンサーなんて、心配だから」
母はいつも、二言目には、心配だから、と言う。舞はそれが嫌だった。
「そんなに心配されるほど、私はダメじゃない!」
舞はそう、母に言い放って、家を飛び出した。
二月の終わりでも、千葉県の外房では、さほど寒くなった。制服のまま、コートも着ずに、舞は海まで走った。
舞は走った勢いのまま、砂浜に駆け下りて叫んだ。
「お母さんの、バカヤロー!!」
一言叫ぶと、胸がすっとした。
舞はポケットから携帯を取り出して、お気に入りの曲を流した。そして、悔しさを振り払うように、夢中で踊った。
——もうすぐ春が来る。精いっぱい踊って、私は個性的に花開きたい。
そう思う舞の頬に、雨粒が当たり始めた。春の雨は、どこか温かった。
温かい催花雨に打たれて、もうすぐ花が咲く。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?