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『すばらしき世界』感想メモ

役所広司のヤクザ映画を観ないと孤狼の血でLevel2になれない。(どういう論理?)

いつもの箇条書きメモ。
後半『ヤクザと家族』に言及してます。
本文が長い。許してください。


・タイトルの出し方えげつない。空が広い。

・三上が出所してからの生活のリアルを丁寧に描写されるので、序盤からしんどかった…
正直3回くらい、三上が辛い思いするのみたくないからもうここで映画終わっていただけませんか?になった

役所広司が可愛いというパワーワード
この映画で役所広司がアイドルという噂をきいたけどなるほどね…

・六角精児めちゃ絶妙すぎてよかった…絶妙なリアリティ…なんかこれはみてもらわなきゃ伝わらん気がする

・「あの頃。」を観たっていうのもあるんだけど、個人的信頼を置ける俳優リストに仲野太賀が加わりました

・プロデューサーの女、都合のいいことしか言わんし三上をコンテンツとしかみていない姿勢は苦手なのだけど、言ってるセリフはすごく刺さる

・レールから外れた人間は生きづらいのだけど、レールから外れないように生きている人間も幸せではないから、レールから外れた人間を攻撃してしまう(意訳)、あまりにも現代社会を言い得ている。地獄じゃん

・あとプロデューサーの女のセリフで好きだったのが、焼肉屋の帰りの乱闘を見てカメラを持って逃げる津乃田に、「撮るか争いを止めるかどっちかにしなさい、お前みたいなやつがいちばん何も産まないんだよ(意訳)」ってやつ
一般人からしたら津乃田の行動がいちばん常識的に思えるんだけど、確かに彼の行動は何も産まないし、あの言葉から彼女の報道者としての矜持が見えてどきっとしちゃった

・ケースワーカーの先生が序盤で「人とのつながりを持つことが大事です」って言っていて、真理だった。三上は彼の経歴を受け入れてくれる人との温かな繋がりや支援を得たという点においては、まだ「まし」な側の人間なんだよな…
実際は人とのつながりにすら手が届かない弱者がいて、声も上げられないのだと思っている

・三上が人との温かなつながりの中に生きている姿を観るだけで愛おしさのような切なさのような感情で泣きたくなってしまった。
児童養護施設の場面とお風呂の場面と就職祝の場面がよすぎて…

・身元引受人の先生の奥さんの言葉を借りれば、三上は「人間としてまっすぐすぎて社会に適合できない」のだけど、彼が暴力に走る瞬間って彼なりの正義感に反した時なんですよね。焼肉屋の帰りの場面で顕著だけど、誰かが理不尽に虐げられているのを見たときというか。
大半の人間が、自分に危害が及ぶのを恐れて見ないふりして触れない「悪」を三上は見逃すことができない。
終盤、介護施設で彼は自分の正義に反する悪をみても、暴力を振るうのを耐え空気を読んで「社会に適合する」ことに成功したけれど、あの場面で社会に適合することは必ずしも正しいのか…??になってしまった 

・介護施設の場面の会話、胸糞だけどああいう悪気のない差別が世の中にいくつもある

・介護施設での場面、「似てますね」って言うまでの三上の眼の演技えげつなくて鳥肌立った…ありがとう役所広司……

レールから一度外れた人が戻ろうとしても、戻るまでの壁が高すぎるし、戻りたくなくても外れた道に戻らざるを得ないという話だった。普通を外れた人間にとって普通になるための労力が大きすぎて、同じように普通を外れた人と生きるほうが、たとえそれが正しくなくても生きやすいんだよな
三上はヤクザに戻らずにすんだきっかけがあったからこの終わり方だっただけで、ヤクザに戻って刑務所で人生の終わりを迎えるようなオチもこの映画ならあり得たなと思う。


※以下『ヤクザと家族』の言及含みます

・どうしても『ヤクザと家族』の対比で見てしまうんですが、『ヤクザと家族』の山本出所後(令和の時系列)の部分を「すばらしき世界」が映画1本分の尺で丁寧に描いてきたかんじ

・『ヤクザと家族』が山本と周囲の人間模様に着眼点を置いていたのに対し『すばらしき世界』は三上がどうやって生活をやっていくかに着眼点を置いていたなという印象

・『ヤクザと家族』って我々鑑賞者と同じ視点をもつ人間が劇中にいないから他人の物語を眺めているような感覚だったけれど、『すばらしき世界』は津乃田が我々鑑賞者と同じ視線を持ち物語の中で生きていたから物語に入りやすかった部分はある

・『ヤクザと家族』の山本も『すばらしき世界』の三上も、弱者を虐げるために理不尽に暴力を使うんじゃなくて、相手の行動が彼らの正義感からみて正しくないから暴力を使うという印象を受けた。悪意はなくて、むしろ善良なんだよな。
ふたりとも0か100かしかないみたいなところがあるから、相手をぶちのめしてしまい問題になるのですけど。

・両作品ともに普通から外れた人間の生きづらさがテーマだった。『すばらしき世界』はそういう人たちに対してどうすればいいかの1つの答えを描いているように思う

・最終的に家族を失って、同じ境遇の同胞に刺されて彼とともに人生を閉じる山本、最終的に人との繋がりを得て、自宅で孤独に人生を閉じる三上。完全にこじつけだけど対比的だなあ…


以上!

やっぱ2月の映画、良作多すぎないですか??

しんどい社会派映画の適性があることが発覚したし、なぜか極道への解像度が上がった2月でした。
3月はもうすこしぽわぽわしたかんじにしたい。


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