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Misak物語❹ 国境を越えて〜

タイ移住を決意し、職場にも退職の意思を伝えたが、家族にはまだ何も伝えていない

父親は私の決断に反対したことは今まで一度もない。
昔から、周りとは少し違った道を選ぶ癖があった私を、母親は心配し毎回反対したが、
父だけは、
「王道の人生を歩むより、よっぽど面白いじゃないか。どんどんやりなさい」と言ってくれ、応援してくれた
今回もきっと行ってこいと言うだろう

問題は母親だ
母とは、休みの度に一緒にスーパー銭湯に行ったり、飲みに出かけたり、友達みたいに仲が良い。
きっと、私がタイに移住する事を知ったら、寂しがり、そして怒るだろうと思った。
でも、言わなきゃいけない

私はまず、父の携帯に電話した
「もしもし」
「あ、お父さん、私だけど。」
「私、タイに移住する事にした」
「もう、会社にも今年いっぱいで辞めるって昨日伝えたから」

「....なんで?」

父は何があったのか聞いてきた
私はタイでの出来事、カオルさんとの出会いなどを詳しく説明した
すると、父が突然

「おかーさん、美希がタイに移住するってよー!」
と大きな声で叫んだ

「また、バカな事言って!あんたはどうしていつもそうやって、思いつきだけで行動するの!タイに移住するなら、親子の縁を切るからね💢」
電話口でガッシャンガッシャン大きな音がする。
母は怒ると、何をするにも大きな音をたてる。
大きな音でドアを閉め、大きな音で階段を上がり、大きな音を立てて皿を洗う。
多分、今は皿を洗っているんだろう...。

「めっちゃ怒ってるやん」
そう私が言うと、父は
「寂しんでしょ」と大きな音の中でゲラゲラ笑った

「じゃあ、おかーさん、来年は2人でタイ旅行に行けるねー!」
父は優しい声で呼びかけた

うしろから「絶対行かないから」
と少し笑った母の声が聞こえた

父のおかげで、大丈夫そうだ
うまくいかなかったら、無理をせず帰国することを約束して電話を切った。

1月8日 出発当日
真冬の中、前回と同じTシャツの上に厚手パーカーを羽織り、再び夜の羽田空港に向かった
駅まで見送りに来てくれた両親は私が見えなくなるまで笑顔で手を振っていた。
多分、母は泣くのを我慢している...
母が見えなくなったら、涙がボロボロ出てきた

「お母さん、ごめん。お父さんとお母さんに何かあったらすぐに帰ってくるから」

真夜中の空港
飛び立つ飛行機の窓から見える綺麗な光

たった6時間の距離なのに、永遠の別れかのような感覚。
寂しくて、初めて不安が押し寄せた

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