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京都みなみ会館 最後のオールナイト上映

 9月30日で閉館する京都・九条のミニシアター「京都みなみ会館」は、オールナイト上映も名物の一つでありました。9月22日(金)の夜、最後のオールナイトを見に行ってきました。

 今回の企画は、立命館大学映像学部と京都みなみ会館の共同主催によるものです。立命館大学映像学部は2008年から、2年生以上が受講する「映画上映実習」の課題として学生プロデュースのもと、京都みなみ会館で特集上映を催してきました。今回のオールナイト上映はその番外編として、担当教員の川村健一郎教授が作品を選定し、学生が運営に携わる「学生プロデュース企画Extra」の形で行われました。

 最後はせっかくだからフィルムで、ということで4作品すべて35mmフィルム上映となりました。作品は次のとおり。

  • 22時50分~『次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊』
    1954年/103分/監督=マキノ雅弘/出演=森繁久彌、水島道太郎、川合玉江、志村喬、小堀明男
    ※22時45分開始予定だったが、冒頭川村教授による企画経緯の説明があり、5分押しで開始。

  • 0時50分~『宵待草』
    1974年/96分/監督=神代辰巳/脚本=長谷川和彦/音楽=細野晴臣/出演=高橋洋子、高岡健二、夏八木勲
    ※こちらも予定より5分押しで開始。

  • 2時40分~『汚れた血』
    1988年/119分/監督=レオス・カラックス/出演=ドニ・ラヴァン、ジュリエット・ビノシュ、ミシェル・ピコリ、ジュリー・デルピー

  • 4時55分~『希望のかなた』
    2017年/98分/監督=アキ・カウリスマキ/出演=サカリ・クオスマネン、シェルワン・ハジ、イルッカ・コイヴラ、カイヤ・パカリネン、カティ・オウティネン

 邦画はモノクロ、カラー1作ずつ、洋画はカラー2作で、スクリーンサイズがスタンダード、シネマスコープ、ヨーロピアンビスタ、アメリカンビスタと全て異なる作品が集まりました。古今東西の名作を豊富に扱ってきた京都みなみ会館を象徴するような作品群です。

 私にとってはすべて初見の作品でしたが、『次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊』と『汚れた血』が収穫でした。この2作は、プリントがとってもきれいでした。

 『次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊』は、序盤、森繁久彌演ずる石松ら次郎長一家の会話の、流れるようなショットと、キレのよい森繁の発声でもうぐっとつかまれます。志村喬演ずる、近江の親分・身受山鎌太郎の押し出しの良さと、石松の度が過ぎるほどの義理堅さ、そして喧嘩がめっぽう強かったはずの石松が最後にたおれゆくときの弱々しさが、圧巻でした。

 『汚れた血』は夜の闇の中に入る光と色彩の美しさに見惚れる映画でした。話の筋は疑問符が付くことも多い映画なのですが、そんなことはもうどうでもよくなるほど、ルックの良さで2時間押し切られてしまいました。

 『宵待草』は、ロマンポルノ世代の映画がそもそも好みじゃないこともあり、うまく乗れませんでした。『希望のかなた』は笑わせどころの配置と、笑っていられない絶望的な社会状況との、絶妙なバランスが素晴らしい作品でした。


 私が京都みなみ会館を知ったのは、1年前なのでごく最近の話です。オールナイト上映の経験は、昨年10月22日の「ヌーヴェル・ヴァーグの夜」、12月10日の「directed byマイク・ミルズ」の2回です。

 京都みなみ会館は、近鉄東寺駅が最寄りですが、私はいつも京都駅八条口から南に歩いて訪ねていました。ターミナルから外れ、閑静な街にたたずむ立地に3スクリーンを抱えて多様な作品を上映する映画館があるというのは、とても贅沢なことだったのかもしれません。

 しかし、みなみ会館の独特の雰囲気の中で見たからこそ、好きになった作品も間違いなくあります。ジャック・リヴェット監督『北の橋』(1981年)は、その一つでありました。

 おそらく同じような思いのも多かったのでしょう。今回の興行は、金曜夜のオールナイトにもかかわらず、チケット完売で実際にほぼ満席状態で、客層も老若男女多種多様でした。

上映前
上映後


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