ココナツ・チャーリイ

映画レビュー、ブックレビュー、新聞流通研究の3本柱で記事を書いています。 2023年7月まで更新していたブログ「CharlieInTheFog」(http://charlieinthefog.com/)から、記事を順次移行中です。 大阪在住、20代。

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「80年 躍進する敦賀」は今 賀春CMの企業を見に行く

 YouTubeには古いCMの録画がたくさん投稿されていますが、最近目にした動画の中でもひときわ、珍しいと感じるものがありました。  内容はいずれも、敦賀市関連企業による賀春のあいさつ。登場するのは各企業の幹部。アナウンサーではありませんから、どうも喋りがたどたどしく、これが今となっては趣の深い映像になっています。  果たしてこれらの企業は今もあるのだろうか――。今回は、回数が余っている青春18きっぷを使って敦賀を訪ね、「80年 躍進する敦賀」に登場した各企業が今どうなっ

    • 「企画立案」と「総合調整」の含意

       内閣法や内閣府設置法にある「企画及び立案」や「総合調整」の意味するところについて。 企画立案 田中一昭・岡田彰(2000)によると、橋本行革の議論が行われていた1997年当時、行政改革会議事務局が起草したドラフトでは、内閣官房の企画・立案権については案を重ねるにつれて後退していったという。  1997年6月12日の第1次案では「内閣の重要政策に関する企画、立案」だったのが、同15日の第2次案には「閣議に係る重要事項に関する基本方針に関する企画」に、同23日の第3次案では

      • 「文献渉猟メモ」関心事項まとめ

         新マガジン「文献渉猟メモ」を始めます。関心事項について調べ物をする中で目に留まった文献から引用しつつ、メモをとっていきます。なんらかの成果物にまとめる予定はありませんが、一種の小ネタ集として、もし関心を同じくする方がいらっしゃいましたら、ご参考にしていただければと思います。  下記から、関心事項別にメモをご覧いただけます。(まだメモのないものもあります) 内閣機能・統治機構 社会保障・労働政策 報道をめぐる体制・制度 その他

        • 朝日新聞取材班『ルポ 京アニ放火殺人事件』評/事件が投げ掛けた問いにルポは応えているか

          (朝日新聞出版、2024年)  2019年7月18日の京都アニメーション第1スタジオ(京都府宇治市)放火殺人事件について、公判での証言を中心にまとめた朝日新聞取材班によるルポルタージュ。  143日間にわたった公判の内容を整理してまとめるだけでも、書籍としての価値があることは間違いない。おおむね新聞既報の内容ではあるが、まとまった形で読むとあらためて考えさせられることは多い。しかし、事件を社会的な出来事として受け止めようとする試みとしては中途半端にも思える。 厳しい半生

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          2024衆院選 翌朝各紙の残り議席数推移

           新聞は販売エリアにあまねく届けられますが、印刷工場からの配送に要する時間は当然その距離等に応じて異なるため、同じ日付の新聞でも複数の締め切り時間を設定し、複数の版を製作しています。  大型選挙の投票翌日付朝刊は、開票状況を少しでも紙面に反映させるため、いつもよりも多くの締切を細かく設定し、より深い時間まで新しい版を製作することが知られています。  10月27日に投開票された第50回衆院選でも、各社は特別態勢を組みました。関西各地で収集した紙面を集計して、各紙がいつ締切を

          2024衆院選 翌朝各紙の残り議席数推移

          2024衆院選 各放送系列の残り議席数推移

           10月27日に投開票された第50回衆院選では、今回も各放送系列が特番を編成して開票速報を伝えました。  その時点でまだ当選確実が出ていない、残りの議席数の推移を、各系列の放送映像を確認してグラフにまとめたのが下の画像です。  20時以降、5分ごとに映像を確認しました。ただしきっちり毎正秒というわけではなく、ちょうどそのタイミングで議席数のテロップが消えていたり、CMに入ったりしている場合は前後近しい時間で確認できた議席数を採用しています。TXNで線が途切れているのは、1

          2024衆院選 各放送系列の残り議席数推移

          2024衆院選 議席予想と結果

           第50回衆院選は10月27日、投開票されました。実は事前に、各社の情勢調査の情報などをにらめっこしつつ、議席予想を作っておりましたので、結果を振り返ってみたいと思います。  予想は新聞各社の情勢調査の表現(「リード」「競る」など)を見比べたうえで、次のように行いました。  選挙区では、全候補に「A」(8時当確もありえる)から「E」(当選見込みなし)までのランクを付け、当落線上の「C」はどちらか勝ちそうな候補に「C+」、他方に「C-」とします。「中央」はA、B、C+の合計

          2024衆院選 議席予想と結果

          2024衆院選 候補者一覧の派閥表記が各紙で微妙に異なっている

           2024年衆院選が15日、公示され、一般紙各紙は16日付朝刊で全国の候補者一覧を掲載しました。自民党派閥の政治資金問題をめぐり、除名や非公認などの処分、派閥の解散などさまざまな動きがあった中での総選挙ということで、候補者一覧に掲載される情報が、新聞によって微妙に異なっています。 自民党(旧)派閥の表記 現在、自民党の派閥は麻生派(志公会)のみが現存し、安倍派(清和政策研究会)、茂木派(平成研究会)、岸田派(宏池会)、二階派(志帥会)、森山派(近未来政治研究会)の5派閥は解

          2024衆院選 候補者一覧の派閥表記が各紙で微妙に異なっている

          満薗勇著『消費者と日本経済の歴史』

          (中公新書、2024年)  私たちが自分のことを「消費者」であると認識するとき、そこには単にモノやサービスを買う者という意味を超えたニュアンスを帯びていることが多いと思います。  本書はそうした「消費者」をめぐる認識や、「消費者の利益」に関する議論がどのように変化してきたかに着目し、戦後日本の経済社会の歴史をたどります。それは「消費者の権利」が主張されるよりも、むしろ、消費者の行動によって社会や経済を変えていくという「消費者の責任」に期待する議論が前面になりがちな歴史でし

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          濱口竜介監督『何食わぬ顔』の、肌に触れるまでのサスペンス

           大阪・十三の第七藝術劇場で開催中の濱口竜介特集「映画と、からだと、あと何か」の中で、濱口が東大映画研時代に撮った8ミリ映画『何食わぬ顔 (long version)』(2002)が上映されていた。筆者の鑑賞は3回目である。  動いているものを見る喜び、人の顔を見る喜び、人が人に視線を向けているのを見る喜び等々、映画を見ることで得られる喜びのうち重要ないくつかが8ミリの粗い画面に凝縮されていて、得も言われぬ感動がある。  中でも最初の鑑賞から強く印象に残っているのが、劇中

          濱口竜介監督『何食わぬ顔』の、肌に触れるまでのサスペンス

          映画『きみの色』評/心的な動揺が不可視化された現代を描く問題作

          (山田尚子監督/2024年/日本/100分/カラー/アメリカンビスタ)  長崎のミッションスクールに通う高校生トツ子、中退して古書店で働く少女きみ、医学部進学のため長崎の塾に通いつつ内緒で音楽活動をしている離島の高校生ルイの3人によるバンドの物語。  きみにとってもルイにとっても、最大の関心は、周囲の期待をいかに裏切らずに生きていくかということに向けられている。自我を内面に閉じ込めて、いかに体裁を整えるかにエネルギーを使い、疲弊している。このあたりは、現代の思春期世代のリ

          映画『きみの色』評/心的な動揺が不可視化された現代を描く問題作

          2024夏 四国旅行記(その2)

           2024年8月15~17日に、大阪→和歌山→徳島→高知→愛媛→岡山→大阪という一筆書きのようなルートを青春18きっぷでたどった旅の記録。今回は2日目。 (前回記事) 朝から列車を逃す 投宿先のホテルタウン錦川(高知市)で起床したのが朝4時半。シャワーを浴び、NHKの5時のニュースを見ながら支度してチェックアウトする。始発の普通列車に乗るべく高知駅へ歩いて向かう。セブン-イレブンでおにぎりを買って頬張る。  途中で見つけた、あまりにシンプルすぎる「中谷元」の看板。衆院議

          2024夏 四国旅行記(その2)

          映画『ラジオ下神白―あのとき あのまちの音楽から いまここへ』評

          (小森はるか監督/2023年/日本/70分/カラー/16:9)  東京電力福島第一原発事故により避難を余儀なくされた高齢者のためにつくられた、福島県いわき市の復興公営団地「下神白(しもかじろ)団地」で、ドラマー出身の文化活動家アサダワタルらが取り組んでいるコミュニティーづくりの活動「ラジオ下神白」を記録したドキュメンタリー映画である。  2016年に始まった活動は、居住者に元々住んでいたまちと音楽の思い出をインタビューしてラジオ番組風に編集したCDを、団地内で配布する取り

          映画『ラジオ下神白―あのとき あのまちの音楽から いまここへ』評

          2024夏 四国旅行記(その1)

           もはや旅も食傷気味だが、さりとて家にいてもやることもないので、例によって今夏も青春18きっぷ旅行に出た。まだ訪問したことのない高知県で泊まることを第一目的に、大阪→和歌山→徳島→高知→愛媛→岡山→大阪という一筆書きのようなルートをたどる2泊3日(2024年8月15日~17日)の旅だった。 とくしま好きっぷで南下 この日の早朝、大阪市などで一時24万戸あまりが停電する事態が発生し、大阪環状線などでダイヤが乱れた。元の旅程では阪和線と紀勢線で和歌山市駅へ出て、南海和歌山港線に

          2024夏 四国旅行記(その1)

          さようなら、一人酒

           先頃の健康診断で尿酸値が基準値を大幅に超えてしまい、受診が必要なレベルだと判定されてしまった。  独り身だし、別に健康になりたいわけでもないが、昨今の企業は健康管理までするようになっているので、放置してたら会社からいろいろ言われそうだから、とりあえず病院に行った。  医者は「別に太ってるわけでもないので原因は酒でしょうね」と言った。  確かにこの1年、飲酒の頻度が増えた。量はせいぜい1〜2缶だが、ほぼ毎日飲んでいた。  ここのところ公私ともども生活がうまくいっておら

          さようなら、一人酒

          西野智彦著『ドキュメント通貨失政 戦後最悪のインフレはなぜ起きたか』

          (岩波書店、2022年)  1971年8月のニクソン・ショックから、同年12月のスミソニアン協定、73年の変動相場制移行、石油危機、そして74年の狂乱物価とスタグフレーションにかけて、大蔵省や日本銀行の首脳陣の間でどのように意思決定が行われ、結果的に「失策」と回顧される過程をたどることとなったのか――。  『平成金融史』『ドキュメント日銀漂流』などで知られる屈指のジャーナリストが、さまざまな資料を博捜して探求した歴史ノンフィクションである。  当時、円の切上げは、金解禁

          西野智彦著『ドキュメント通貨失政 戦後最悪のインフレはなぜ起きたか』