金成隆一『ルポ トランプ王国2─ラストベルト再訪』
※2019年10月7日にCharlieInTheFogで公開した記事「見た・聴いた・読んだ 2019.9.30-10.6」(元リンク)から、本書に関する部分を抜粋して転載したものです。
ワシントンやニューヨークとは別の、トランプを支持するアメリカを探ってラストベルト(さび付いた工業地帯)を繰り返し訪ね、現地の人たちと交流しトランプ人気の構図を描いた2017年の傑作ルポルタージュの続編です。
グローバリゼーションを背景に、エネルギー転換に伴う石炭産業の衰退や、中流層の崩壊に伴う貧困と薬物乱用のまん延などが、地域の誇りを感じにくくさせる現状のなかで、ラストベルトの人たちにトランプは当選後の凱旋集会で「家を売らないで」と呼び掛けます。つまり仕事を用意するから家を売る必要はない、今のコミュニティーを捨てる必要はない、と、現地の人たちにとっては心に寄り添った発言と受け止められたのです。それははっきり言って空手形でしかないけれど、空手形だという批判は響かない。エスタブリッシュメントへの不満はそれほどうずたかく積もっていました。
前作でトランプ支持者の、友達は大切にするけれど人種差別的、排外的な人たちの強行的な姿勢が浮き彫りになった感じがあったのですが、今回はトランプ就任後ということもあり、そもそもトランプに過度な期待をしていない市民という側面がより強調されているように感じました。聖書に忠実なエヴァンジェリカル(キリスト教福音主義派)や、ベトナム戦争帰還兵のエピソードも盛り込まれ、分かりやすい支持層像からの脱却が成功しているでしょう。トマス・フランク、アーリー・ホックシールド へのインタビューが脇を固めています。