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山崎12年は、山崎18年になれない!

◾️年数表記についてお話しする前に

年数表記についてお話しする前に、知っておいてほしい前提があるので、3点、ご説明させていただきます!

《前提①》
ウイスキーは、例えシングルモルトウイスキーであったとしても、様々な原酒を混ぜてブレンドして商品化している。
※ シングルカスクの場合は、加水する場合はありますが、原酒のブレンドはされていないです。(ただし、かなり稀な商品です。)

《前提②》
商品化されるウイスキーは、製品毎に「目指す味わい」が決まっているので、製品毎に「ブレンドのレシピ」も決まっている。

《前提③》
商品化されたウイスキーの年数表記は、ブレンドされた原酒の中の「最低酒齢」が表記される。

前提③を補足します。山崎12年であれば、山崎蒸溜所で蒸溜された原酒を12年寝かせて、その「12年熟成原酒」のみを使用して商品化しているわけではありません。
12年以上寝かせた様々な原酒をブレンドして、「山崎12年」という味わいに仕上げます。
そのため、12年以上熟成させた13年や15年、はたまた20年以上寝かせた原酒もブレンドされている可能性もあるのです。逆に、12年に満たない「11年熟成以下の原酒」は、使うことができません。


◾️ 山崎12年が山崎18年にはなれない理由

山崎12年を樽に戻して、6年熟成させても、山崎18年にはなりません。
なぜならば、前提②で書かせていただいたように、「山崎12年」と「山崎18年」では、「目指している味わい」=「ブレンドのレシピ」が違うからです。

例えるなら
・1時間煮込んだバーモントカレー
・2日間煮込んだタイカレー
・3日間煮込んだインドカレー

同じカレーですが「レシピ」=「目指している味わい」がまるで違います。
「1時間煮込んだバーモントカレー」を、あと47時間煮込んでも「2日煮込んだタイカレー」にはならないですよね。同じく「1時間煮込んだバーモントカレー」を、あと71時間煮込んでも「3日間煮込んだインドカレー」にはならないです。

同じように、「山崎12年」なら山崎12年の目指す味わいにするため、様々な原酒をブレンドをします。山崎18年のブレンドとは、まるで違うわけなので、山崎12年は、山崎18年には、なれないのです。


◾️ブレンドのレシピが違うぜ!パターン①

《ブレンドに使う原酒が違う!》
商品の年数表記によって、使われている原酒の種類が異なるパターンです。

シングルモルト山崎(ノンエイジ)
山崎の伝統であるミズナラ樽貯蔵モルトと、革新のワイン樽貯蔵モルトをはじめとした様々な山崎モルトが出会うことで生まれた山崎です。

https://www.suntory.co.jp/whisky/yamazaki/product/

山崎18年
シェリー樽熟成由来の甘いドライフルーツや香ばしいチョコレートの香りが印象的。ミズナラ樽の長期熟成原酒も潜む熟成感と奥行きのある味わい。

https://www.suntory.co.jp/whisky/yamazaki/product/

山崎ノンエイジには、『革新のワイン樽原酒』がブレンドされていますが、山崎18年にはブレンドされていないようです。
https://www.suntory.co.jp/whisky/yamazaki/product/

このように、製品として仕上げる時には、ブレンドをして、目指す味わいに仕上げているのです。
そのため、ブレンドで使われている原酒の種類や構成比率が異なるので、山崎ノンエイジを再び樽に戻して、何年さらに熟成させようとも、山崎18年にはならないのです。

◾️ ブレンドのレシピが違うぜ!パターン②

《原酒を違う樽に詰めかえて、新たなフレーバーを加えている!》
商品によって、様々な後熟を行っているパターンです。

バルヴェニー12年 ダブルウッド
バーボン樽で熟成後、シェリー樽に詰めかえ後熟。2種の樽による絶妙なハーモニー。

https://www.suntory.co.jp/whisky/balvenie/?fromid=001&_ga=2.135295729.1511401652.1652609009-818023698.1652609005

バルヴェニー14年 カリビアンカスク
バーボン樽で熟成後、カリビアンラムの樽に詰めかえ後熟。トロピカルフルーツのようなまろやかなコク。

https://www.suntory.co.jp/whisky/balvenie/?fromid=001&_ga=2.135295729.1511401652.1652609009-818023698.1652609005

バルヴェニー12年は、原酒をまずはバーボン樽で熟成させてから、シェリー樽に詰めかえて、合計12年以上の熟成。
バルヴェニー14年は、原酒をまずはバーボン樽で熟成させてから、ラム樽に詰めかえて、合計14年以上の熟成。
バルヴェニー シングルモルトガイド サントリー (suntory.co.jp)

バルヴェニー12年と14年数では、後熟(熟成の後半に違う樽に詰めかえて、異なるフレーバーを加えること)に使用する樽が、シェリー樽とラム樽で異なります。
別々のフレーバーが原酒に加わることになりますので、バルヴェニー12年は、バルヴェニー14年にはなれないことが、ご理解頂けると思います。


◾️年数表記の結論

年数表記されたウイスキーは、ウイスキー樽で、原酒をその表記された年数まで寝かせて、そのまま瓶詰される訳ではありません。
それぞれの商品で、「狙った味わい」になるように、ブレンダーさんが、表記年数以上の原酒を絶妙にブレンドすることでできあがるのです!

畑からの採れたての野菜を「そのまま丸かじり」するか、一流の料理人によって「調理されたお料理」を食べるのか?
そんな感覚に近いかも知れません。

このブレンドというものこそ、商品化されるウイスキーの味わいを、最終的に決める神秘的な工程なのです!

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