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バーボンはダイナミックな熟成!

■スコッチは長期熟成派!

スコッチウイスキーの場合、冷涼かつ湿潤の環境の中、「長期の熟成」を念頭に、ゆっくりとした熟成が好まれます。そのため、熟成庫の中でも低層、中でも地面により近い一番下の樽が「良い樽」とされます。

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■バーボンはダイナミック熟成派!

一方で、バーボンの場合、酷暑かつ乾燥した環境の中、比較的短期で「ダイナミックな熟成」を念頭に、ウイスキーづくりが行われます。
そのため、スコッチでは「地面により近い一番下の樽」が「良い樽」とされるのに対して、バーボンでは真逆で、「屋根に近い一番上の樽」が「良い樽」とされます。
バーボンの熟成庫は高層であり、高いところと低いところの温度差が大きく、気温の高い上層階では熟成がよりダイナミックに進むからです。

そのため、バーボンの熟成庫の上層部を「イーグルズ・ネスト=鷲の巣」と呼び、バーボンの熟成に最も適した環境とされます。
エンジェルズ・シェア(天使の分け前)という単語は、ウイスキーがお好きな方ならご存じかも知れませんが、このイーグルズ・ネストという単語まで知っているとしたら、相当なウイスキー通と思われます。


■静のスコッチ、動のバーボン

「熟成庫の下層を好むか、上層を好むか」という点以外にも、スコッチとバーボンには、つくりの考え方において、いくつかの違いがあります。

それを一言で表すなら『静のスコッチ、動のバーボン』
(これ私が今、考えたフレーズなので、一般的なフレーズではありません・・・)

スコッチでは、一度、熟成庫に置かれた樽は、基本的に瓶詰めまで動かさず、一貫してその場所で熟成されます。
一方でバーボンでは、(最近はこれを行わないケースも増えているそうですが)熟成をある程度均一にするため、樽の位置を上下で入れ替える作業をすることが多いそうです。これを、バーボン用語でサイクリングといいます。

また、スコッチウイスキーづくりにはない発想で、バーボンには、熟成庫にヒーターを入れている蒸溜所もあります。気温が下がる季節にヒーターで庫内を暖め、熟成をより効率的に進めるためです。

こういったつくりの点からも、『自然に熟成を委ねるスコッチ、ダイナミックな熟成を追求するバーボン』と、つくり方の思想が異なることがうかがえます。


■バーボン、さらに熟成を追求します!

バーボンの特徴として、第一に「原材料にトウモロコシ(コーン)を51%以上使用しないといけない」ということがありますが、その次には「色の濃さ=熟成感の違い」があります。
例えば、バーボンと同じく、トウモロコシが主原料のウイスキーとしては、シングルグレーンウイスキー知多があります。この知多とバーボンを比べた場合、圧倒的に違うのがその色味です。バーボンの方が圧倒的に濃い色をしています。逆にバーボンでは、薄い色みの商品は皆無です。

なぜでしょうか?

答え①
暑い熟成環境で熟成がダイナミックに進むから。

例えば、スコットランドや日本で3年間熟成させるのと、ケンタッキー州で3年間熟成させるのでは、ケンタッキー州の方が圧倒的に早く熟成が進みます。
一方で、このダイナミックな熟成は、エンジェルズ・シェア(蒸発による欠損)も多くなるため、バーボンにはスコッチのような「50年熟成」といった商品は、基本的には存在しません。ケンタッキー州で50年も熟成させていたら、中身がなくなってしまうからです。

答え②
バーボンは『内側を焦がしたオークの新樽』で熟成させなければならない、という法定義があるから。

この「新樽でなければならない」という規定は、他のどの国のウイスキーにもありません。


■新樽熟成の効果

ウイスキーの熟成では、通常、樽は、1回目・2回目・3回目と何度も原酒を詰めて、使い回します。
その中でも、1回目に新樽(ヴァージン・オーク樽)に原酒を詰める場合は、2回目・3回目に詰める場合と比べ、木材の成分がMAXに残っていますから、圧倒的に多くの木材の成分が溶け出します。
そのため熟成が圧倒的に早く進行し、透明だった原酒が、他の国のウイスキーより圧倒的に早く琥珀色へと色付くのです!


■1回使ったバーボン樽はどうなるの?

バーボンは新樽しか使えないため、1度使った樽は「バーボンづくり」には、もう使用することができません。ではその樽は、どうなるのでしょうか?

答え
スコットランド、アイルランド、カナダ、日本、その他の世界各地の蒸溜所が、購入する。

バーボン樽の原材料となる「アメリカン・ホワイトオーク」は、「漏れが少ない」「溶け出す成分のフレーバーが良い」「程よく木材の成分が溶け出す」など、ウイスキーづくりにとって秀逸な木材です。
そのため、世界中の蒸溜所から引く手あまたなので、1度使ったバーボン樽の行き先は、心配無用なのです!


■バーボン、熟成がダイナミックすぎるぞ!

こんな記事を見つけました。

「Bespoken Spirits(ビースポークン・スピリッツ)」(米メンロパーク)は、ウイスキーの中に樽板のかけらを入れ熟成を促す技術を開発した。専用の機械にかけて圧力や温度を変化させ、樽の成分を抽出することで、長期熟成した場合と同じような香りや味を数日で実現するという。

年単位の熟成を1日で シリコンバレー発の「インスタントウイスキー」を飲んでみた:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)

朝日新聞GLOBE+

こういう発想が生まれるのも、「ダイナミックな熟成」がつくり手の思想に根付いている『動のバーボン』ならではだと思います!


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