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ジャパニーズウイスキーは、日本の四季が育むお酒。

■ジャパニーズウイスキーの熟成の特徴は?

スコッチは長期熟成派!
https://note.com/charlie_244/n/n1fa8356a00c5
バーボンはダイナミック熟成派!
https://note.com/charlie_244/n/nf51cd25269e1

《問題》
それでは、ジャパニーズウイスキーの熟成の特徴とは?

《答え》
日本の気候風土、すなわち『日本の四季』が、その味わいを育むという点が、ジャパニーズウイスキーの大きな特徴の一つといえます。


■日本のウイスキーの先生はスコッチウイスキー!

日本の四季がウイスキーに与える影響についてお話しする前に、日本のウイスキーの成り立ちを振り返ってみたいと思います。
日本におけるウイスキーづくりは、その導入期からずっと、スコッチウイスキーを手本として発展してきました。そのため、基本的にはスコッチづくりの思想と同じ「長期熟成」を念頭に、ウイスキーづくりが行われてきました。

ただ、いくらつくり方を真似しても、真似ができない部分がありました。
それが熟成環境=気候・風土です。


■樽熟成と気候風土

ウイスキーは熟成中に樽の中で、蒸発によって目減りすると、以前に書きました。いわゆるエンジェルズシェアのことです。

参考記事
https://note.com/charlie_244/n/n1fa8356a00c5

樽の中で、ウイスキーの原酒が減った空間に、逆に取り込まれるものがあります。それは「外気」=「熟成庫を取り巻く環境の空気」です。
つまり原酒熟成時に木樽は、「蒸発によって原酒を放出する一方で、外気を取り込む」といった呼吸をしていることとなります。

そして、この際に取り込まれる「空気」は、ウイスキー原酒に、その熟成環境ならではの特徴を与えます。熟成環境の気候風土が、原酒に宿るのです!


■気候風土が樽熟成に与える影響

例えば、わかりやすいのが、ボウモアやラフロイグ、アードベックといったアイラ島で作られるスコッチウイスキーです。これらのアイラ島の蒸溜所のシングルモルトウイスキーは、アイラモルトと呼ばれ、個性的な味わいが、熱狂的なファンを獲得しています。
どのような「個性的な味わいか」というと、「強いスモーキーフレーバー(燻製香)」とともに、うっすらと「海の潮気」を感じることができます。アイラ島の蒸溜所は海岸際に立地することが多く、その熟成庫も海の近くにあることがほとんどのため、その潮気が原酒に入り込むと考えられています。(正確には、もっと色々な要素が絡み合って、そのような潮気が感じられるようですが、ここでは話を簡略化してご説明します。)

特に、ボウモアは、熟成庫が波しぶきを被るほど海の近くにあります。その中でも、現存する世界最古のウイスキー熟成庫ともいわれる、ボウモアの「第1熟成庫」の中は潮の香りに満ち、そこで熟成された原酒には磯の香りが漂います。
同じく、海の近くで熟成される、タリスカー(アイランズ・モルト)、スプリングバンク(キャンベルタウン・モルト)にも、それぞれ少しずつ違った「海のフレーバー」を感じとることができます。

熟成庫のある気候・風土に想いを巡らせながら、ウイスキーの入ったグラスを傾ける。とても有意義な時間ですよね。


■日本の気候風土が与える影響

世界と比べた場合の、日本の気候の特徴としては、はっきりとした「四季」があげられます。そしてその日本の四季、すなわち「暑さや寒さ」「湿度の上下」などが、スコッチウイスキーとは異なる、ジャパニーズウイスキーならではの味わいを、原酒に付与します。
一方で、日本の風土の特徴としては、とても南北に長く、日本の中でも北海道から沖縄まで、非常に多様な「その土地ならではの環境」を持つことも挙げられます。

スコットランドの面積は約79,000㎢で、約83,000㎢の北海道に近しいサイズ感です。
そのため、スコッチウイスキーは6大生産地に分けて、特徴や味わいを分類することが多いですが、その6つの区分も「北海道内の市町村の違い」といった距離感の違いになります。

一方で、日本では、北海道のニッカウイスキーの余市蒸溜所と、鹿児島南部の本坊酒造のマルス津貫蒸溜所を比較したならば、本場スコットランドとは比較にならないほどの距離感の違いがあります。
そして、その風土の異なる熟成環境で、長期にわたり木樽熟成をさせることで、「その土地ならではの味わい」を、ウイスキー原酒にクッキリと形づけるのです。


■気候風土だけではないジャパニーズウイスキーの特徴

今回は「熟成環境」にフォーカスして、「気候=日本の四季」「風土=日本の国土が南北に長く多様性に富む点」が、ジャパニーズウイスキーに与える特徴をご紹介しました。
ただ、『外的要因』である「気候風土」以外にも、作り手の『内的要因』である「つくり方の違い」からも、ジャパニーズウイスキーならではの特徴が存在します。例えば、ブレンドに対する考え方や、原酒づくりの方向性などです。
これらについては、また別途記事化して行きたいと思います。

それにしても、この記事を書いていたら、原酒が熟成される熟成庫に、頭の中でで旅に出て、まだ日が出ているうちから、爽やかなハイボールが飲みたくなってきました!
こんな時には、森の中の熟成庫で育まれた『白州 森香るイボール』、最高ですよね!!

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