まったく新しい着眼点 限定品:グレンモーレンジィ・フォレスト
■グレンモーレンジィの限定品
このフォレストの商品スペックが「そう来たか!」というものだったのでご紹介します!
■グレンモーレンジィ・フォレスト
A TALE OF THE FOREST | グレンモーレンジィ スペシャルサイト (mhdkk.com)
ふむふむ。森をイメージした味の設計なのだな!
新作「グレンモーレンジィ フォレスト」が2月15日に発売/モーレンジファンは必飲! (barrel365.com)
な、な、なに~!!
製麦工程の麦芽の乾燥で『森のさまざまな植物』を使っただとぅ!!
■大麦麦芽とは?
モルトウイスキーでも、ビールでも、基本的には大麦麦芽を使います。
『大麦麦芽』は、収穫された大麦を、水に浸してちょっと発芽させてから、乾燥して「保存性」を高めたものです。
ちょっと発芽させているので麦「芽」という名前であり、発芽させることで麦芽内に、お酒づくりに必要な酵素ができるのです。
したがって、お酒づくりでは、生の大麦と大麦麦芽は、明確に「区別」しています。
ちなみに、ウイスキー検定では、以下のひっかけ問題が良く出てくるので要注意ですよ!
ちなみに、ウイスキー蒸溜所でも、ビール醸造所でも、大麦麦芽を自社でつくっているケースは少なく、基本的には専門の麦芽製造会社にスペックを指定して、購入することがほとんどです。
■湿った大麦の「乾燥方法」と『フェノール値』
麦芽をつくる際、水に浸して発芽させてから、湿っている大麦を乾燥させる必要があります。
古くは、スコットランド(特に木の少ないアイラ島)では、ピートと呼ばれる泥炭がその熱源として使われて来ました。
「ピート」とはなんですか? サントリーお客様センター (suntory.co.jp)
ピートを使って「湿った大麦」を乾燥させると、『独特の薫香』が麦芽に付きます。
それがウイスキーの個性を形づくる、大きな要素の1つとなるのです。
一般的に、麦芽につくピート香はppmというフェノール値で表され、ノンビート麦芽でつくるウイスキーでは、それが0に近づきます。
一方で、アイラ島のウイスキーでは、
・ボウモア12年=25ppm
・ラフロイグ10年=45ppm
・アードベッグ10年=55ppm
といったフェノール値となっています。
「麦芽のフェノール値=できあがるウイスキーのスモーキー感」は、完全に一致しているわけでなく、その後の製造工程により製品化されるウイスキーに残るスモーキー感は前後します。
ただ、ざっくり「フェノール値=スモーキー感」となるので、我々、ウイスキー愛好家にとっては、このフェノール値というものが気になるのです。
ピートで乾燥させていた熱源は、その後、より効率の良い熱源として石炭へ変わり、今は熱風を送り込むようになっています。
そのため、現在は「大麦を乾燥させる」という意味においては、ピートを使う必要はないです。
しかし、『狙ったウイスキーの味わい=スコーキーさを実現させる』という目的において、製麦の乾燥工程でピートを使用します。
(ずっとピートを焚いているわけでなく、より大麦が湿っている乾燥工程の前半にのみ使用することが、ほとんどです。)
■ピートの採取地の違いが与える「ウイスキーの個性」の違い
ピートの焚き加減が、麦芽のフェノール値、ひいてはできあがるウイスキーに違いを与えると書きました。
ただ、そのピート香の「大小」だけでなく、ピートを燃やした際に発する「香り自体」も、そのピートが「どの土地でとれたのか?」によって異なります。
例えば、強烈な個性で有名な「ラフロイグ」で使っているピートは、アイラ島の海に近い土地から採取されるため、その塩気的なものが麦芽につくと言われています。
一方で、同じアイラ島でも「ボウモア」で使っているピートは、アイラ島内の丘のような土地から採取されるそうで、ラフロイグほどは塩気を感じさせず、アイラ・モルトでは中庸的な味わいとされます。
さらに、安旨スモーキー・シングルモルトとして人気の東ハイランドの「アードモア」は、ハイランドの山の中のピートを使っているので、スモーキー感はありますが、塩気はなく、たき火のようなフレーバーを感じます。
このように、ピートの「採取地の違い」による麦芽のスモーキー感の「個性の違い」は、すでに注目されていて、国内外の蒸溜所が取り組みを始めています。
特に注目すべきは、北海道・厚岸蒸溜所です。
すでに自社製麦に着手し(通常は麦芽専門会社から麦芽を購入する)、そこで厚岸産のピートを使う計画だそうです。
大麦の生産から、熟成に使う樽のミズナラまで、オール厚岸の「厚岸オールスターズ」の誕生を目指しているそうなので、かなり近い将来に飲めそうですね。楽しみ!
■コロンブスの卵的発想、ビル・ラムズデン博士
ここで、話が戻って、グレンモーレンジィ・フォレストです。
ピートの採取地が違うどころか、そもそも熱源となる「燃やすもの」に、森の「ボタニカル」も使用!!
これ、コロンブスの卵的な発想の転換です。
さすが、ラムズデン博士。
私チャーリーごときでは、まったく思いつきませんでした。
私も薄々、以下のように思っていました。
そう思っていたので、「古代のウイスキーメーカーたちが苔や倒木、ヘザーなど森にあるさまざまな燃料を使って大麦を乾燥」は、メチャメチャわかる気がします。
だって、とにかく、とっとと湿った麦芽を乾燥させたいわけで、苔だろうが枯葉だろうが、「燃やせるものは、ジャンジャン燃やしていた」と思うのです。
■ピート以外も大麦乾燥に使うことでの多様性
現在のクラフトジン・ブームの理由の一つに「その土地ならではの色々なボタニカルが使用できる」ということが挙げられます。
同様に、今後、モルトウイスキーの原料となる大麦麦芽の乾燥に、「その土地ならでは」の熱源を加えることができるとしたら、とても面白いことになりそうですね。
(例えば、海際の蒸溜所なら、乾燥させた海藻を燃やしてみるとか)
妄想が止まりません・・・
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