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『オーヘントッシャン』、3回蒸溜のスコッチ・ウイスキー

■3回蒸溜はアイリッシュ・ウイスキーの得意技!

3回蒸溜は、ポットスチ・ウイスキーにはじまる、アイリッシュ・ウイスキーの得意技であると、ご案内しました。
アイリッシュ・ウイスキーならではの『ポットスチル・ウイスキー』|チャーリー / ウイスキー日記|note

アイリッシュ・ウイスキー(ポットスチル・ウイスキーとモルト・ウイスキー)において、3回蒸溜は、法律のレギュレーションとして規定されているわけではありませんので、2回蒸溜のアイリッシュもあります。
ただ、19世紀後半に、アイリッシュ・ウイスキーが、スコッチ・ウイスキーを上回り、世界を席巻した時の製法であるため、アイリッシュ・ウイスキーの特徴のひとつとされています。

一方で、スコッチ・ウイスキーで、ポットスチルで、モルト・ウイスキーをつくる場合、基本的には2回の蒸溜をします。


■3回蒸溜をしているスコッチ・ウイスキー

実は、スコッチ・ウイスキーの中でも、3回蒸溜をしている商品がいくつかあります。

◇オーヘントッシャン12年(ローランド・モルト)【オーヘントッシャン蒸溜所】

その3回蒸溜のスコッチ・ウイスキーの中で、有名かつ伝統的に3回蒸溜を行ってきた蒸溜所が、オーヘントッシャン蒸溜所です!
その主要製品「オーヘントッシャン12年」は、都会派ローランドのシングルモルトとして、スムーズな味わいのシングルモルトとして人気があります。
オーヘントッシャン シングルモルトガイド サントリー (suntory.co.jp)


■アイルランド島とスコットランドとの結びつき

3回蒸溜のスコッチ・ウイスキーは、基本的に、キャンベルタウン、アイラ島、ローランドなど、アイルランド島に近いエリアで、つくられるケースが多いです。
これは、地理的にアイルランドに近く、そういった技術が伝わりやすかったということだと思います。

◇ドーバー海峡
(ヨーロッパ大陸のフランスと、ブリテン島のイギリスとの間)
33.3Km

◇佐渡海峡
(新潟と佐渡の間)新潟市出身の私が子供の頃は越佐海峡エッサカイキョウと呼ばれていましたが・・・
31.5Km

◇海峡名は不明。。。
(アイルランド島とブリテン島のキンタイヤ半島との間)
19Km

アイルランド島とスコットランドって、ちかっ!「橋をかけるぞ!」って話もあるくらいみたいです。
スコットランドと北アイルランドに橋を架ける案が浮上中。ジョンソン首相が指示:イギリス・ブレグジットで(今井佐緒里) - 個人 - Yahoo!ニュース

ちなみに、このアイルランド島とスコットランドが近かったというのは極めて重要です。
ウイスキーに必要なアルコールの蒸溜技術は、キリスト教の布教とともにヨーロッパ本土から伝播してきたと考えられています。

そして、スコットランドよりキリスト教が伝わったのが早かったとされるのがアイルランド島です。

そのため、ウイスキーづくりに必要な蒸溜技術は、キリスト教の布教の流れとともに、12~13世紀頃、アイルランド島からスコットランド島に伝わったというのが、今の主流の考え方です。(諸説あります。またキリスト教そのものは6世紀頃にアイルランド島からスコットランドへ伝わったとされています。)

そして、3回蒸溜も、アイルランド島で一般化して、スコットランドへ伝わりました。
すなわち3回蒸溜は、「アイルランド島→スコットランド」の『2回目の蒸溜技術の渡来』(19世紀前半ごろか?)ということになります。


■3回蒸溜のスコッチ・ウイスキーは人気者!

基本的に2回蒸溜のスコッチのモルト・ウイスキーの中でも、すでにご案内したオーヘントッシャン蒸溜所は、その蒸溜所でつくられる商品は、基本的にすべて3回蒸溜です。

ただ、「いつもは2回蒸溜をしているけど、商品によっては3回蒸溜をしていますよ!」というスコッチ・ウイスキーも結構あります。
そういった3回蒸溜するスコッチは、「すっきりとした酒質」かつ「珍しい」ので、人気ものです!

◇ポートシャーロット(アイラ・モルト)【ブルックラディ蒸溜所】

もともとポートシャーロット蒸溜所でつくられていた商品。ポートシャーロット蒸溜は閉鎖していて、近隣のブルックラディ蒸溜所が復活させて製造しているブランド。この「復活させたブランド」というパターンは、スコッチ・ウイスキーでも、バーボン・ウイスキーでも、結構あるあるのパターンです。
レミーコアントロージャパン | RÉMY COINTREAU JAPAN (rcjkk.com)

◇ヘーゼルバーン(キャンベルタウン・モルト)【スプリングバンク蒸溜所】

もともとヘーゼルバーン蒸溜所でつくられていて、その蒸溜所は閉鎖。近隣のスプリングバンク蒸溜所が復活させて製造しているブランドという「復活ブランド」のパターン。
ヘーゼルバーン蒸溜所は、かの竹鶴政孝が3ケ月にわたって修行した蒸溜所として超有名!
ヘーゼルバーン10年 | Explore our craft philosophy (whisk-e.co.jp)


■2.5回蒸溜、2.81回蒸溜

実は、2.5回蒸溜、2.81回蒸溜なんていう商品もあります!
どういうことかというと、
「一部の原酒は2回蒸溜をしていて、また一部の原酒は3回蒸溜をしています。その原酒をブレンドしていて、計算上は、2.5回や2.81回の蒸溜になりますよ!」
ということです。

◇スプリングバンク(キャンベルタウン・モルト)【スプリングバンク蒸溜所】

2.5回蒸溜の超人気のキャンベルタウン・モルト。ウィニーと表現される「潮感」が特徴で、「モルトの香水」と称される銘品です!
人気すぎて、最近はなかなか手に入りません。
スプリングバンク蒸溜所 | Whisk-e

◇モートラック(スペイサイド・モルト)【モートラック蒸溜所】

スペイサイドの中のダフタウンという地区でつくられている、古い歴史を持つモートラック蒸溜所でつくられ、複雑で豊かなコクが特徴で、「ダフタウンの野獣」とキャッチーなあだ名がついているスコッチです。
初溜と再溜が対になっておらず、形・大きさがバラバラのスチルを擁し、一番小さいポットスチルは、「ウィーウィッチ=小さな魔女」と呼ばれ、個性を生み出しているといわれています。
2.81回蒸溜。。。もはや、具体的なつくり方はよくわかりません。
MORTLACH | Moët Hennessy Diageo (mhdkk.com)


■3回蒸溜のバーボン・ウイスキー

ちなみに、基本的には連続式蒸溜機でつくられるバーボン・ウイスキーにおいて、「ポットスリルで3回蒸溜しています!」というウッドフォードリザーブという商品もあります。
(ポットスチルと連続式蒸溜機を併用しているという噂もありますが、調べきれていません。スミマセン。)

◇ウッドフォードリザーブ

ウッドフォードリザーブ | アサヒビール (asahibeer.co.jp)


■3回蒸溜の可能性

『3回蒸溜のモルト・ウイスキー』は、2回蒸溜の一般的な「モルト・ウイスキー」と、連続式蒸溜の「カフェ式モルト」の中間に位置するような存在だと思います。
ちなみに、スコッチ・ウイスキーの法律では、2回蒸溜でも、3回蒸溜でも、原材料が大麦麦芽100%であれば、「モルト・ウイスキー」と分類されます。
(ここで気が付きましたが、ポットスチルで、4回蒸溜・5回蒸溜した商品は、ないのかな??)

このポットスチルで3回蒸溜したウイスキー。なんか可能性を感じます。
日本の蒸溜所でも、こういったチャレンジをするところが出てくるかも知れませんね!

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