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「パイン販売」からの「パイナップル・ワイン」づくり

■パイナップル・ワインとは?

前回からのつづきです!
ラ・ピーニャ・ディスティラリーって?|チャーリー / ウイスキー日記|note

「ナゴパイナップルパーク」「ラ・ピーニャ・ディスティラリー」を経営する名護パイン園ですが、珍しいパイナップル・ワインというものをつくっています。

名護パイナップルワイナリー (nagopineapplewinery.com)

パイナップルのワインというものは珍しく、正直、私も聞いたことがありませんでした。

これまでの歴史の中でパイナップのお酒は伝承されていません。それは、パイナップルを栽培できる環境が熱帯・亜熱帯に限られた場所であることが要因と考えられます。
お酒はアルコールが発酵する時に発熱するため、温度が上昇します。温度が上がると酵母が活性化して発酵が加速します。さらにアルコール発酵が終了すると別の菌が活性化し、腐敗が進みます。
冷涼な季節でなければ自然環境下でおいしいお酒はできませんでした。
名護パイナップルワイナリー 30周年パンフレット


パイナップルはフルーツであり、最初から糖分があるため、本来、
「ブドウ⇒ワイン」
「りんご⇒シードル」

のように、つぶれた果実に自然酵母が入り込めば、お酒ができるはずです。 

しかし、酵母による発酵というものは、基本的には低い温度下でコントロールしやすく、落ちついた味わいの酒質が得られる傾向があります。

例えば、ビールやウイスキーのもととなる「麦汁」の発酵工程は、下面発酵ビールでは通常約10℃前後、上面発酵ビールでは15~25℃、ウイスキーづくりでも20〜22℃が最適で、35℃以下が発酵に望ましいとされます。
つまり、その範囲内でないと、「美味しいお酒になる発酵」となりません。

パンづくりの発酵でも、一次発酵の適温は28~30℃で、パン生地の温度が高すぎると「過発酵」という現象になり、発酵が進みすぎて美味しいパンにならないそうです。

したがって、「暑い地域の自然環境下」では、アルコール発酵はするものの「おいしいお酒にならない」ということです。

そして何より、暑い地域では、発酵とともに、腐敗も早く進みます。

アルコール発酵をしたパイナップルを飲もう(食べよう?)としたときには、すでにそのパイナップルが腐っていることになります。

そういった点で、ヨーロッパにおけるワインやシードルのように、気温との絶妙なバランスで、お酒として成立することはなかったと思われます。

 確かに、ワインでも、日本酒でも、ビールでも、ウイスキーでも、19世紀までは、基本的に「秋・冬の仕込み」のみでした。
1890年頃から冷蔵庫が普及しだすと、通年での仕込み(四季醸造)が可能になったのです。
 
このように「暑い地域」のフルールであるパイナップルは、

・過発酵により美味しくないお酒ができあがってしまう

・飲む前に腐敗してしまう

という点から、自然環境下では「お酒」として飲まれるようにはならなかったということのようです。

パイナップル・ワイン、なかなか出会わなかったわけです。

そして、そのような未知の領域「パイナップル・ワイン」への挑戦。
頑張れ、名護パイナップルワイナリー!です。


 ■パイナップル栽培には時間がかかる!

40年前からパイナップル栽培をはじめた名護パイン園。
私も今回初めて知ったのですが、パイナップルは栽培開始から出荷まで、最低で2年かかるそうです。(2~4年で実をつけるみたいです。)

その分、たくさんの土地も必要となりますし、キャッシュフローが極めて悪い農作物ということになります。
二毛作や二期作ができる農作物と比べたら、現金が入ってくるタイミングが、とっても後になりますから、資金繰りが大変そうですね。
まるでウイスキーみたい。
 
同じく原材料の生育に大変年数を必要とするお酒にテキーラがあります。
テキーラの原材料となるアガベ(和名:リュウゼツラン)は、最低でも6年、長いところでは10年以上もかけて育てます。
 
ちなみに、「リュウゼツラン」は、「竜舌蘭」と書きます。『ドラゴンの舌』のような形の葉をした『蘭』ということです。

そのリュウゼツランが畑からギザギザの葉っぱを出している姿は、パイナップル畑がギザギザの葉っぱを地中から出している姿にそっくり!

アガベ/リュウゼツラン/竜舌蘭の畑
パイナップルの畑

畑から出ているギザギザの葉っぱの姿も似ているのですが、テキーラの原材料として使う「地中に埋まっているリュウゼツランの根の部分」も、「手榴弾みたいな形状」でパイナップルに、さらにクリソツです! 

そして、そのリュウゼツランの根の部分の呼び名が「ピニャ」。 

リュウゼツランの根の部分は糖分をいっぱい蓄え40kg前後まで育ち、パイナップルを大きくしたような形なので「ピニャ」と呼ばれます。
日本テキーラ協会HP

テキーラができるまで | 日本テキーラ協会 Japan Tequila Association

パイナップルとアガベ(リュウゼツラン/竜舌蘭)、見た目も、生育に年数が必要になるのも似ていますね。


■名護パイン園がパイナップル・ワインをつくるまで

1960年代、パイナップルは、サトウキビと並ぶ、沖縄における2大農作物となり、地域の経済を支えます。

1979年、株式会社名護パイン園を設立し、パイン園での自社栽培のパイナップルの直販を開始。

そして、1992年、名護パイン園は、日本最南端のワイナリーであり、日本唯一のパイナップルワナリーである、株式会社名護パイナップルワイナリーを創業します。
 
パイナップルワイナリーの創業には、以下の目的があったと思われます。

・契約農家からの安定したパイナップルの買い取り
→経済面の安定=農家の収入の安定
→栽培面の安定=多年栽培のため、栽培しない年があれば、数年後にパイナップルが不足する。

・果実では日持ちしないが、ワインにすれば日持ちする。

・地元産パインの付加価値UP & ブランド力UP

・六次産業化によって、パイナップルをベースに地域経済の基盤を固める

・観光客に「パイナップル・ワインがあったら飲みたいですか?」などのアンケートや署名を集めたり
・町長さんが色々と働きかけたり
「当時、ワインの醸造免許を取るのは大変でしたが、やっと取れたと聞いています」と、ご案内いただいたスタッフさんがおっしゃっていました。


■そして、パイナップル・ワインのお味は?

少々長くなったので、お味については、次回の記事でご案内します!

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