ウイスキーというお酒は、どこで誕生したのか?? 《スコットランド?》
■前回からの続きです。
「ウイスキーというものは、どこで誕生したのか?」について、
「5大ウイスキーのうちの、どこかで誕生しただろう」と当たりをつけて、
前回は3ケ国を検証しました。
そして、結論的には
というのが現状です。
ただ、この2ケ国のそれぞれで「うちが発祥国だ!」という主張があります。
今回は、スコットランド発祥説についてご紹介したいと思います。
■スコットランド発祥説①《文献》
現在、正式に確認できる文献上では、『スコットランドが最古』となります。
(今後、新たな文献の発見があれば、塗りかえられることでしょうが。)
有名な、1494年のスコットランド王室(在位:ジェームズ4世)の財務係の記録がその文献です。
(当時の王室の公式文書のためラテン語で書かれているそうです)
※1 古い重さの単位、8ボルで約500kg。
※2 ラテン語の直訳で「命の水」の意。具体的には「蒸留酒」のこと。
このジョン・コーさんは、当時の王宮から近いリンドーズ修道院にいた修道士です。
古い時代に、修道院がお酒を造っていたのは世界共有です。
ウイスキーも、リキュール・スピリッツも、ワインも、ビールも、修道院でつくられていました。
日本でも、お寺で日本酒(どぶろく)がつくられていたようなので、一緒ですね
■ジョン・コーさんの仕込み量
で、ジョン・コーさんのつかった『500kg』って、まあまあの仕込み量ですよ。
例えば、イチローズモルトで有名な秩父蒸溜所の第一蒸溜所の1回の仕込み量が400㎏です。これで、約200Lのニューポット(透明なウイスキーの赤ちゃん)が得られます。
そして、200Lは、バーボン樽でちょうど1樽分となります。
ウイスキー1樽をつくるのに、大麦麦芽はどれほど必要なの?|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)
ジョン・コーさんも、1回の仕込みで500㎏すべてをつかったわけではないと思います。
ただ、この量を使うということは、この時点で初めて生産する(試しにつくってみる)という段階ではなく、すでに生産工程が確立されていた可能性が高いのではないでしょうか?
つまり、ウイスキーづくりについての最古の文献ではあるものの、
「これ1494年の記録以前に、すでにウイスキーづくりがはじまったいた」
ということだと思います。
■リンドーズ修道院とあれこれ
最近、このリンドーズ修道院があったところに、クラフトのリンドーズ蒸溜所ができて、ついに3年もののシングルモルトが発売となり、話題となっています。
【特集】リンドーズアビー蒸留所(Lindores Abbey)|場所・歴史・製法・味と種類|スコッチウイスキー (whisky-roundup.com)
ちなみに1494年の前年の1493年には、スコットランド軍がアイラ島に攻め入って、そこを治めていた豪族から、アイラ島をスコットランドの領地としてブンドリました。
この時に、
という噂(希望的観測?)があります。
で、その秘伝のウイスキーづくりの方法を用いて、ジョン・コーにアクアヴィテをつくらせた、というお話です。
このお話は空想的な部分が強いと思いますが、ウイスキー愛好家には実にロマンがあるお話です。
いずれにせよ、
「1494年にジョン・コーさんに蒸溜酒をつくらせましたよ」
というのが、大麦由来の蒸溜酒の最古の記録であり、
一般的に『ウイスキーの最古の記録』とされています。
でも、ウイスキーって、『木樽熟成』をさせてないといけないんじゃないっけ??
ウイスキーと『木製樽』での熟成|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)
■スコットランド発祥説②《木樽熟成》
スコットランドでは、1707年にイングランドに併合されるとウイスキーに重税が課せられるようになります。
そこでウイスキー生産者は、スコットランド北部のハイランドの山奥に逃げ込んで、密造ウイスキーを生産するようになります。
この時、お国側の徴税官がやって来た場合に備え、シェリーの空き樽に、透明なウイスキー(アクアヴィテ)を詰めて隠しておきました。
こうして、しばらく木樽に入れておいたら
という話も、修道士ジョン・コーの話とともに、ウイスキーの誕生秘話としては有名な話です。
ただこれは、密造者のやったことなので、いつ誰が木樽熟成を始めたのか、公式記録はありません。
しかし、
という記録はあります。
そのため、『ウイスキーの誕生=木樽熟成の発見のタイミング』とする考え方をとるのであば、
という解釈もできます。
これも、スコットランド起源説の1つの主張です。
■一方のアイルランド説は?
このように、
という点が、『スコットランドがウイスキー発祥の地』と主張される大きな理由です。
でも、アイルランド側にも言い分があります。
次回に続きます!
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