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日本の『ハイボール缶』の起源

■今や定番 角ハイボール缶

現在は、コンビニに行けば、メーカー各社の様々なハイボール缶が売られています。

ただ、この日本のハイボール缶市場で一番メジャーなのは「角ハイボール缶」だと思います。

そして、角ハイボール缶の発売は2009年ですが、これこそが今へと繋がるハイボール缶のブームの起源なのだと思われます!

2008年に、角ハイ「ジョッキスタイル」で、居酒屋で飲むプロモーションが始まりました。

このお店で飲む「角ジョッキ」(2008年)からの、で飲む「角ハイボール缶」(2009年)の流れで、1984年をピークに25年間に渡り右肩下がりで、2008年には消費量が1/5まで落ちこんでいた「日本のウイスキー市場」が、反転して増加に転じることとなったのです!

(ちなみに、NHKのマッサンの放映は2014年なので、このドラマを機にトレンドが反転したのではなく、角ハイボールにはじまった「ウイスキー市場の反転」を大きく後押しした、と言えると思います。)

話を戻して、この日本のウイスキー市場の伸長は、2009年からもう10年以上たった今も続いています。

10年以上、続くってこれはもはやブームではなくて、ひとつの文化ですよね。
ウイスキー愛好家にとっては嬉しい限りです!


■昭和にもあったハイボールブーム

この2009年から続くハイボールブームですが、昭和の高度経済成長(1955年~1973年)の時にも、「トリスバー」「サントリーバー」「ニッカバー」「オーシャンバー」といった『大衆バー』を中心にハイボールブームが巻き起こりました
 
一つの歴史の幕おり[松山市]BAR露口。 「最後の初代サントリーバー」|チャーリー / ウイスキー日記|note

実は、その昭和のハイボールブームの時にも、ハイボール缶があったんです!!


■昭和にもあったハイボール缶

その名も「トリス ウィスタン」(1960年発売)です!

※ 下記のリンクのサントリーHPから引用

品質をささえる「匠」たち 自由|サントリーの安全・安心への取り組み (suntory.co.jp)

サントリー トリス ウイスタン - YouTube

「ウイスキー+炭酸」で、ウィスタン
超COOLなネーミングですね!!

この「トリス ウィスタン」が、日本のハイボール缶の元祖だと思われます。

そして今回、このウィスタンについて調べていて、いくつか発見したことがありますので、解説してみたいと思います。


■ウィスタン その「ネーミング」

この商品を発売した1960年当時は、すでにトリスハイボール(トリハイ)というフレーズはとてもメジャーになっていました。

したがって、『ウィスタン』とは「ウイスキー+炭酸」の『飲み方=いわゆるハイボールを指す言葉でなく、あくまで「ハイボール缶」という『缶商品』を指す言葉だったということです。

この『缶製品のアピール』という点は非常に重要です。
ウィスタン発売の1960年は、「缶ビール」が日本国内で発売された直後だからです!

そして、缶が「瓶に代わる これからの容器」として、もてはやされていた時期なわけです!!


■日本における缶ビールの歴史

1958年 アサヒビールから缶ビール発売
1959年 サッポロビールから缶ビール発売
1960年 キリンビールから缶ビール発売
1960年 洋酒の寿屋から「トリス ウィスタン缶」発売

(サントリーのビール事業参入は1963年なので、当時はビールを販売していません。そして、ビール事業参入と同時に「洋酒の寿屋」から「サントリー」への社名変更をしています。)

缶ビール・トップバッターのアサヒビールさんの発売時ポスターの文言を引用します。

アサヒビールが
アサヒゴールドの
缶入りを発売しました
いままでのびんより ずっと早く冷えます
冷蔵庫に入れても楽に倍は はいります
一缶75円で 容量は小びんより少し多く
しかも目方は半分くらいです
スポーツ・ハイキング・ご家庭に 
参考:日本ビール検定公式テキストP126 
監修(一社)日本ビール文化研究会 マイナビ出版

ちなみに、当時のビール小瓶334mlの希望小売価格=70円です。

重さではなく「目方」っていう表現が、時代を感じさせて、グッと来ますね!


■缶ビールの進化

実は、この最初に発売された缶ビールは、今からは信じられませんが、専用の缶切りで、「2ケ所に穴をあけて」注ぐスタイルでした。

カップ焼きそばの「湯切り」のイメージです。

※ ウィスタンのYouTubeの最初に一瞬出てくるシーンが、缶切りで、穴をあけている場面です!

ちなみに、この専用の缶切りは、景品でついてきたようです。
今のビアボール小瓶のキャップみたいですね!

その後、1965年「プルトップ型」の登場で、缶切りが不要になりました。

プルトップ型缶ビールの発売時ポスターの文言を、再びトップバッターのアサヒビールさんのポスターから引用してみたいと思います。

缶切りよ さようなら
缶切りのいらないプルトップ
新発売
缶入アサヒ
価格は据え置き
1コ 75円
参考:日本ビール検定公式テキストP126 
監修(一社)日本ビール文化研究会 マイナビ出版

この文言もシンプルで、なんか良いですよねー。

その後、1990年から国内ビール各社が現在主流の「ステイオンタブ型」へ移行して、今に至ります。

それにもして、アサヒビールさんは、最近は「ジョッキ缶」もヒットさせていますし、容器提案力が凄いですね!


■ウィスタン その「売価」

アサヒビールさんの広告から、当時の缶ビールの希望小売価格は、1958年も1965年も75円だったことがわかります。

一方で、「トリス ウィスタン」ですが、YouTubeを見てみるとその中で「60円!」と文字でも音声でも思いっきりアピールしています。
つまり、缶ビールより缶ハイボールの方が安かったわけです!

これは、今も(発泡酒とかではなく)缶ビールと、缶ハイボールの価格を比較したら、ハイボールの方が安いので、価格優位性を保ったままです。

それが、現在のハイボール缶の人気が続いている理由のひとつでもあると思います!


■ところで・・・

・昭和のハイボールブームのど真ん中
・空前のトリハイ人気
・時代を先取りした新しい缶容器
・アンクルトリスを起用したコミカルなTVCM
・価格優位性

そして、NETで調べると、「ウィスタンの販促景品の鉛筆」があったりするので、かなり力を入れてプロモーションしていた商品なんだと思います。

ところで、この商品、今は跡形もありません。

なぜこの商品は生き残れなかったんでしょうね??

最初は売れたけど続かなかったのか?
最初からコケたのか??
正直、全然情報を見つけられないです。。

日本のハイボール缶の元祖、謎多き「トリス ウィスタン」

もし追加情報を入手できたなら、また記事化したいと思います!!


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