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アーリータイムズ、つくり手の変更がもたらせたもの 《アーリー⑦》

■日本で、アーリータイムズといえば?

アーリータイムズの7回目です!

◇日本で、アーリータイムズといえば?
【A】有名なアメリカのバーボン!
【B】昔からよく見かけるなぁ。
【C】比較的安くて、BARだけでなく、居酒屋とかでもよく見かけたよね。
【D】そういえば、最近、あんまり見なかったような?
【E】今回発売されたやつは、随分とイメージが変わったね!

【D】についての解説の3回目です。


■アーリータイムズ・イエローラベルが休売からの終売となった理由

日本国内で、アサヒビールにより販売されていたアーリータイムズの定番品イエローラベルが、2021年12月に休売、2022年6月に日本での取扱が正式終了となり、2022年9月に明治屋が新・アーリータイムズを発売するまでの9ケ月ほどの間、正規流通品がなくなっていました。
これが「最近、あまり見かけなかった」理由です。

で、なぜアサヒビールからの取扱が終了してしまったのか?というと、

商品の供給が追いついていないから

であり、

なぜ、商品の供給が追いついていないのか?というと、

澱オリが発生した商品があって、その確認のため出荷を止めていたから

であり
(※ 澱はうま味成分的なものなので、「見た目が良くない」という以外のマイナスポイントはありません。)

なぜ、澱が発生したかというと、

つくり手が変わったから ではないか?

と私は推察しています、というのが前回までの内容でした。


■製造元変更と日本での販売状況を時系列で確認

《米国》
◇2020年
アーリータイムズ・ブランドがブラウンフォーマン社 から サゼラック社へ売却される。
※ブランド権・原酒在庫・レシピを移管
《日本》
◇2012年~2020年
アサヒビールがアーリータイムズ・イエローラベルを販売(ブラウンフォーマン社製造)

◇2020年~
アサヒビールがアーリータイムズ・イエローラベルを販売(サゼラック社製造

◇2021年12月
アサヒビールがイエローラベルの休売を発表

◇2022年6月
アサヒビールがイエローラベルの日本での取扱終了を発表
⇒日本における正規流通品のアーリータイムズが消滅

◇2022年9月
明治屋やアーリータイムズ・ホワイトラベルを日本で発売
⇒ホワイトラベルは日本が世界先行発売


■つくり手が変わることで

2020年からアーリータイムズのブランド権・原酒在庫・レシピは、サゼラック社に移り、サゼラック社が生産するようになりました。

ここからは私の推測です。

ブランドの売却時に「ブラウンフォーマン社が瓶詰したアーリータイムズ」の商品在庫(完成品)も、サゼラックへ移管されたはずです。
なので、最初のうちは、サゼラック社から、前の製造元:ブラウンフォーマンが瓶詰した商品が日本に送られてきて、アサヒビールはそれを販売していた。(2020年~2021年秋)

その商品在庫がなくなると、ブラウンフォーマンが製造し、ブランド売却によりサゼラック社へ移管されたアーリータイムズ用の原酒樽の中身を、サゼラック社が瓶詰した製品が日本に送られてきて、アサヒビールはそれを販売した。
(2021年秋~冬に販売されたらしいです。NET情報によるとこのアーリータイムズは、それまでのものとボトルキャップの仕様が少し異なっていて、見比べたらわかるそうです。私は見たことがありませんが。)

この商品について、澱オリが発生した商品が出てきてしまったらしい。

そのため、2021年12月に一時休売。

その後、この問題を解決すべく動いてみたものの根本的な解決が難しいと判断したのかアサヒビールは、そのまま2022年6月に日本でのアーリータイムズ・イエローラベルの取扱を終了した。

そして、サゼラック社としても、つくり手も変わった(ブラウンフォーマン社→サゼラック社)ので、まったく同じ商品をつくり上げるのは困難と判断。

(そもそも、サゼラック社がアーリータイムズ用の原酒製造を自社で始めたのが2021年らしいです。バーボンとしては最低2年以上、一般的には4年以上の熟成が必要なので、少なくとも2023年半ば、通常では2025年半ばにならないと、「レシピ通りにつくった」としても、「本当にアーリータイムズ用の原酒として仕上がっているのか?」を確認することができない。)

また、サゼラック社としてはこの機会をポジティブに考え、日本で50年以上の歴史を持つイエローラベルを大胆に終売。
ホワイトラベルという新テイストの新商品で、勝負に出た。

こういう流れだったのかな、と勝手に推測しています。


■繰り返しますが

澱オリは見た目が悪い以外に、ネガティブな要素はありません。
むしろ「うま味成分」的なものなので、現在でも「澱は発生するもの」として、瓶詰前の冷却ろ過を行わない商品も多いのです。

それでは、「原酒を瓶詰する会社の変更」は、「澱の発生の有無」に影響を与えるのでしょうか?

可能性はあると思います。理由しては、

・原酒樽の保管環境
・冷却ろ過の度合い

などによって、澱の発生状況が異なるからです。

熟成環境の「温度の高低」「湿度の高低」「寒暖差の大小」などによって、原酒の熟成度合いは変わるので、それによって澱の発生度合いは変わってくるでしょう。

一方で、冷却ろ過工程では、

・冷却温度(何度くらいまで冷やすか?)
・フィルターの目の細かさ

によって、ろ過される度合いが異なるので、やはり「原酒を瓶詰する会社の変更」は、「澱の発生の有無」に影響を与える可能性はあると思います。

もっとも、ブラウンフォーマン社が製造していたアーリータイムズ・イエローラベルについては、

ろ過工程で、ココナッツの皮をつかった活性炭でろ過することで、熟成中にできた不純物を除去しているため、スムースな味わいとなっている。

という説明があるので、ろ過工程も、そもそも通常のバーボンとは異なっていました。

こういった点からも、「つくり手の変更」によって、瓶詰前の「ろ過工程の変更」になったことが、商品に影響を与えたのではないかと思うのです。

ちなみに、この活性炭ろ過は、多分、ブラウンフォーマン社の看板商品:ジャンクダニエルの製法の特徴である「サトウカエデの炭でろ過」(=チャコールメローイング製法/リンカーン・カウンティ製法)を応用したものではないかと思います。


■米国と日本の温度差

また、澱は低温になると発生することが知られています。
(そもそも、冷却ろ過をするくらいですから)

そして、ケンタッキー州の夏は暑く、乾燥しています。

前述した通り、サゼラック社が瓶詰したアーリータイムズが、2021年秋~冬に日本に届き、それを販売しようとした時に澱の発生を見つけた、という時系列であれば、瓶詰はケンタッキー州において、2021年の夏頃ということになります。

夏の高温&乾燥のケンタッキー州で瓶詰した時には発生しなかった澱が、冬の低温・湿潤の日本では発生してしまった。

ということもあるのかなーと思っています。


■次回は

アーリータイムズ・イエローラベルの終売につながったと思われる『つくり手の変更』をもたらせた『ウイスキーのブランドの売買』について考えてみたいと思います。


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