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アーリータイムズ 禁酒法から今まで《アーリー③》

■日本で、アーリータイムズといえば?

前回からの続きです。

◇日本で、アーリータイムズといえば?
【A】有名なアメリカのバーボン!
【B】昔からよく見かけるなぁ。
【C】比較的安くて、BARだけでなく、居酒屋とかでもよく見かけたよね。
【D】そういえば、最近、あんまり見なかったような?
【E】今回発売されたやつは、随分とイメージが変わったね!

1860年にジャック・ビームさんが誕生させた「アーリータイムズ」。
1920~1933年のアメリカ禁酒法で、ピンチに追いこまれます。


■禁酒法とビール会社

禁酒法では1920年の施行当初、薬用ビールの処方は「無制限」に認めてられていました。

しかし、医者による薬用ビールの処方があまりに急増したため、1921年にビールも、スピリッツと同じく1パイントまでに制限されました。

これにより、いよいよビール会社の経営は厳しくなります。

禁酒法で禁止される酒類とは、Alc.0.5%以上のアルコール飲料です。

はい、誰もが考えそうなことですが、いくつものビールメーカーが、ニアビアと呼ばれる0.5%未満の微アルコールビールを発売します。

今のアサヒビールのビアリーみたいな商品ですね。

しかし、この努力も虚しく、これもギャングが密輸するビールが大量に出回ると、各社は経営危機に陥ります。

そして、ビールメーカー各社は、生き残りをかけた多角経営へと舵を切ります。

ジンジャーエールやルートビアなど、アルコールを含まない炭酸飲料事業へ進出する会社。

お酒づくりには、イースト(酵母菌)を使いますから、イースト事業へ進出する会社。

同じ「アルコール産業」ということで、工業用アルコール事業に進出する会社。

同じ「嗜好品としての食品」ということで、チョコレートキャンディアイスクリームをつくりはじめる会社。

大きな意味で、同じ「食品」ということで、スパゲッティーマカロニをつくりはじめる会社。

はたまた、マヨネーズお酢をつくりはじめる会社。

そして、投資事業(宝石・金鉱山・鉄道・ダンスホール運営※etc.)に乗り出す会社。

※当時は「ジャズ時代 jazz age」と呼ばれた、音楽・ダンスブームでした。

■禁酒法とウイスキー会社

薬用ウイスキーの販売を許された「ビッグ・シックス」以外の中小の蒸溜所の多くは廃業に追い込まれました。

※ビッグ・シックスについては前回を参照ください。
アーリータイムズ 発売から禁酒法まで《アーリー②》 | 記事編集 | note

ちなみに、ジム・ビームさんも禁酒法により、ウイスキー事業からいったん撤退して、採石場や柑橘園の事業を手を出したそうです。
失敗して、禁酒法撤廃後、ソッコーでウイスキーづくりに戻るわけですが・・・

そして、中小の蒸溜所は、資金に困っていたので「熟成ウイスキーの在庫」「ブランド権」を、ビッグ・シックスのどこかに売却することが多発しました。

たいていは安く買い叩かれましたし、魅力のないブランドは整理整頓されました。

・A・Ph・スティッツェル
  → オールド・フィッツジェラルドを買収

・アメリカン・メディシナル・スピリッツ
  → 58ものブランドを買収

・ブラウアンフォーマン
  → アーリータイムズを買収(1923年)

やっと出てきましたね、アーリータイムズ!


■アーリータイムズとブラウンフォーマン社

こうしてアーリータイムズは、ブラウンフォーマン社のもと、禁酒法期間中も薬用ウイスキーとして販売され、生き残ります。

そして、1933年に禁酒法が終わると、そのまま順調に売上を伸ばし、1953年頃にはアメリカで最も売れるバーボンとなりました!

その時の広告は「ケンタッキー・ウイスキーを有名にしたウイスキー」というキャッチフレーズだったそうなので、ノリに乗っていますね!

その地位はその後約30年にわたって維持されたそうです。

そして、アーリータイムズは長らくブラウンフォーマン社の傘下で製造・販売されて来ました。

ちなみに、ブラウンフォーマン社は、世界一売れているアメリカン・ウイスキーであるジャックダニエルで有名な会社です。(1956年に買収)


■みんなビックリ! ブラウンフォーマンがアーリータイムズを売却!!

2020年6月に、びっくりニュースが飛び込んできます。

ブラウンフォーマン社が、禁酒法時代の1923年から約100年間所有してきた「アーリータイムズ」を、なんとサゼラック社に売却したのです!!
※「ブランド権」と「在庫」を売却。

サゼラック社は、日本ではあまり聞かないと思いますが、超大手のバーボンメーカーです。
(代表銘柄としては、バッファロートレースが有名。)

◇アーリータイムズ 生産場所

ブラウンフォーマン社傘下:2020年
(ルイビル)ダウンタウン蒸溜所
   ↓
サゼラック社傘下:2020年~
(バーズタウン)バートン1792蒸溜所
 ※ サゼラック社は、ブラウンフォーマン社時代と同じオリジナルのレシピとマッシュビル(原材料のコーンやライ麦の比率のこと)を使用して、2021年よりバートン1792蒸溜所で製造すると発表。

こうして、アーリータイムズは、現在、サゼラック社の傘下にあるのです。


■アーリータイムズ 歴史まとめ

1860年  
ジャック・ビームさんが発売

1923年 
ブラウンフォーマン社が買収
※ 禁酒法時代:1923年~1933年

1953年頃
アーリータイムズがバーボン売上NO.1に!

2020年  
サゼラック社が買収

※正確には、1920年に従業員のサールズ・ルイス・カズリーが蒸溜所・ウイスキー原酒・農場を買い取って、カズリーが1923年に「アーリータイムズ」をブラウンドフォーマンに売却しています。 ただ、これもキチンと説明しだしとかなり複雑なので、今回は注記するに留めます。

1950年代には、一番売れていたバーボンだから、そりゃ有名なわけですよね?


3話かかって、やっと 【A】有名なアメリカのバーボン!の話題が終了です。

次回は、【B】昔からよく見かけるなぁ です!

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