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《焼酎 vs ウイスキー》 蒸溜器の違い=減圧蒸留とは? 『ニッカ・ザ・グレーン』⑧

■「ニッカ・ザ・グレーン」について解説する8回目です。

・ニッカウイスキーがチャレンジングな商品を限定発売する、ニッカ・ディスカバリー・シリーズ《第三弾》で、2023年3月、「ニッカ・ザ・グレーン」が発売された。

・これは複数のグレーン蒸溜所の原酒をブレンドした「ブレンディッド・グレーンウイスキー」であり、非常に珍しいスペック。

◇ニッカ・ザ・グレーン 4蒸溜所/7原酒

《蒸溜所1》ニッカ・宮城峡蒸溜所
 ①宮城峡カフェモルト
 ②宮城峡カフェグレーン

《蒸溜所2》ニッカ 旧・西宮蒸溜所
 ③西宮カフェモルト
 ④西宮カフェグレーン

《蒸溜所3》さつま司蒸溜蔵
 ⑤未発芽大麦グレーン
 ⑥コーン&ライ・グレーン

《蒸溜所4》ニッカウイスキー門司工場
 ⑦未発芽大麦グレーン

「焼酎もウイスキーも同じ蒸溜酒なので、焼酎用の単式蒸溜器でも、(できあがる酒質は別として)ウイスキーをつくれますよ!」

「そうはいうものの焼酎とウイスキーの蒸溜器には違いがいくつかあって、最大の違いはその材質!」

というお話をしました。

今回は、焼酎独特の蒸溜方法である『減圧蒸溜』についてご紹介します。

◇焼酎の単式蒸溜器と、ウイスキーのポットスチルの違い
①    蒸溜器の材質
②    焼酎では減圧蒸溜も可能
③    加熱方式


■焼酎では減圧蒸溜も可能

お酒に詳しい方なら、焼酎の蒸溜方法には「常圧蒸溜」「減圧蒸溜」があることを、ご存じだと思います。

◇焼酎の蒸溜

《常圧蒸溜》
気圧の調整をせずに、そのままの外気圧で蒸溜。
昔からの蒸溜方法。
しっかりした「どーん」という香り・味わいの「ザ・焼酎」の味わいになる。

《減圧蒸溜》
蒸溜器内の気圧を下げて、低い沸点で蒸溜。
1970年代に開発された新しい蒸溜方法。
すっきりと「飲みやすい」、クリアな感じの「都会派」な味わいになる。

減圧蒸溜は、焼酎の世界に革命を巻き起こし、

◾️飲みやすい甲類焼酎
 鏡月など →  [連続式蒸溜機]

◾️飲みづらい乙類焼酎 ≒ 本格焼酎
 白波など →  [単式蒸溜器・常圧蒸溜]

の2パターンから

◾️飲みやすい本格焼酎
  →    [単式蒸溜器・減圧蒸溜]

という新しい3つ目のカテゴリーを生み出しました。

本格焼酎ブームが到来した背景には、こういった減圧蒸留の普及もあったのです。(本格焼酎の消費のピークは平成19年=2007年。)

ちなみに、プレミアム焼酎の中で一番有名といっても過言ではない
「芋焼酎・魔王」も減圧蒸溜
でつくられています。

ただ、「常圧と減圧のどちらが優れているか?」という話ではありません。

通常、焼酎蔵元はこの「常圧蒸溜」と「減圧蒸留」を、目指す焼酎の味わいに合わせて使い分けています。


■減圧蒸溜器の発明は福岡県の日本酒メーカー

今回、減圧蒸溜について調べていて、それが福岡県の日本酒メーカー(焼酎もつくっている)『喜多屋』さんであることを初めて知りました。

ゆったり焼酎日和 | 減圧蒸留機は日本酒蔵からって知ってた? | 九州焼酎島 (44471.jp.net)

喜多屋さんでは、この「減圧蒸溜器」について『特許』をとっておらず、焼酎業界発展のために、蒸溜器メーカーに無償でこの製造・販売を許可しているそうです。

凄いですね!


■ウイスキーで、減圧蒸溜が導入されない理由

《答え》
ウイスキーの蒸溜器=ポットスチルは、
銅製だから!

銅は、「柔らかく加工しやすい」ので、当初からウイスキーの蒸溜器の素材に採用され、その銅が「ウイスキーを美味しくする」ことが経験則としても、科学的にも証明されてきたので、今も昔もポットスチルは銅製です。

ただ、「柔らかく加工しやすい」性質の銅製のポットスチルでは、『減圧に耐えられない』そうです。
もし減圧処理を施したなら、『バコン!!』と凹んでしまうことになってしまうようです。

そのため、ウイスキーの蒸溜では、減圧蒸溜は導入されて来ませんでした。

ちなみに理論上では、標高で高いところでは気圧が低くなるので、そこで蒸溜をすれば、減圧蒸溜と似た効果が得られるはずです。
(実際の減圧蒸溜ではかなり気圧を下げるので、標高が1,000mくらいでは、それと比較すると効果が薄いですが、味わいに一定の影響を与えると思います。)

以前に記事化しています↓

山だぜ日本! ジャパニーズウイスキーの可能性!!|チャーリー / ウイスキー日記|note


■話は戻ってニッカ・ザ・グレーン

ニッカ・ザ・グレーンでは、焼酎蒸溜所の原酒としては、「2工場・3原酒」が使われています。

《さつま司蒸溜蔵》
 未発芽大麦グレーン原酒
 コーン&ライ・グレーン原酒

《ニッカウイスキー門司工場》
 未発芽大麦グレーン原酒

ここで、「減圧蒸溜」×「ウイスキー」は、存在しているのでしょうか??

《さつま司蒸溜蔵の2つのグレーン原酒》
  初溜:常圧蒸溜
  再溜:常圧蒸溜
  ※ 蒸溜器としては常圧も減圧も、切替可能

《ニッカウイスキー門司工場のグレーン原酒》
  初溜:減圧蒸溜
  再溜:常圧蒸溜

きたー!! 門司工場! 「減圧蒸溜」×「ウイスキー」
そして、やっぱり味わいは「すっきり」しているのか??

実際にその原酒をテイスティングさせてもらったが、さつま司のものに比べてより軽く、すっきりとしていて、洗練されている。

ウイスキーガロア APRIL2003 Vol.37 P48
発行:ウイスキー文化研究所

やっぱり、減圧蒸溜の原酒は味わいが、「すっきり」しているそうです!!

ただ、すっきりの要因は、蒸留器のサイズをはじめ他の要因も、色々と影響していると思います。

■蒸溜器=小さい
 → 味わいしっかり
 → さつま司は、小さめの蒸溜器

■蒸溜器=大きい
 → 味わいすっきり
 → 門司工場は、さつま司の10倍くらい大きい蒸溜器


■次回は

《焼酎vsウイスキー》蒸溜器の違いの3つ目、「加熱方式の違い」についてです!

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