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プロフェッショナルの心の育て方。

 個人的に今年は、春のWBCの開催以来、久々に野球をよく見たなぁという印象があります。明らかにブームに乗せられたということなのだとは思うのですが、球場に何度か足を運びました。そのきっかけはやっぱり、WBCの優勝トロフィーを見に行くということだったのだけど、試合を球場で観戦すると、テレビで見ている以上に、熱い気持ちがこみ上げてきます。

 WBCの中継を見ていた時に、監督以上に存在感を感じたのが、WBCで日本代表のコーチで今年からロッテの監督をされている、吉井理人さんでした。選手時代の印象と違うように思う部分もあって、気になっていて、本屋さんでこの本の表紙を見かけて手に取りました。

 エピソードの1つ1つから、吉井さんが選手から指導者側に回る過程で、苦悩を重ねてこられた姿がひしひしと伝わってきました。ご自身が日本とアメリカでプレーした体験や、その中でコーチや監督とのかかわりの中から感じたことや学んだことがあって、その体験による経験と勘の指導ではなく、相当なレベルまでのコーチングの理論と技術を学んだ上での指導をしてこられているということを、この本を読んで初めて知りました。日本の指導方法とアメリカの指導方法の大きな違いを着眼点にして、様々な指導方法を試してこられて、その中でうまくいったことだけでなく、逆にうまくいかなかったことについても書いていらっしゃる部分から、何か伝わってくるものがあるように思います。

 プロをはじめとして、トップクラスのスポーツの世界のことは、どうしても遠い世界のように感じてしまいますが、吉井さんがこの本を通して伝えていらっしゃることは、ビジネスの世界にも通じること。仕事をしてお金をもらうということは、キャリアの段階にかかわらず、『プロフェッショナル』であるということは、変わらない事実。だからこそ、コーチングの技術がビジネスのどのような場面で効果的なのか、どんなターゲットに対してはどのようなアプローチが必要なのかということについて、吉井さんの体験やエピソードが大きなヒントになるように思います。

 本編も学びになりましたが、各省の終わりにある、過去に吉井さんがお世話になってきた指導者の方々とのエピソード。素晴らしい出会いがあったからこそ、今につながっているのだと感じます。1つ1つの出会いが、人の人生を彩っていくのだと強く感じます。

 キャリアカウンセラーの実技試験を受けたときは、相手との信頼関係性をつくることが、ポイントで、その後どのようにカウンセリングのセッションを進めていくかということについては、あまり強く意識することはありませんでした。しかしながら、実際のキャリアカウンセリングやキャリアコンサルティングの場面を想定すると、どのように話を展開し、どのように終わらせていくかを考えていく必要があります。その展開で悩むような人にとっても、とても良いヒントになるように感じました。

 スポーツをする人だけでなく、部下や後輩の指導にかかわることのある人、そして、キャリアコンサルタントの方にも是非、お勧めしたい、素敵な本でした。

最高のコーチは、教えない。
吉井 理人 著 ディスカバー・トゥエンティワン発行を読んでの感想
関西ダービーの日本シリーズで盛り上がっている狭間の夜に。

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