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日々の仕事を通して、キャリアを描く。

 田中 研之輔先生の本を手にするのは、プロティアン以来。定期購読している雑誌の新刊紹介で目にして、すぐに書店に買いに行ったのを今でも覚えています。ここの所、色々な所で講演されていたり、メディアなどにも出演されていることも増えていて、そのような情報を通しても、学ばせていただいています。

 キャリアカウンセラーの養成講座の中で、キャリアの理論をいくつか学んでいきましたが、私が学んでいたころのテキストの中では比較的新しい理論として学んだのが、ダグラス・T・ホール教授の理論の中の、プロティアンという概念。キャリアは組織によって決められるものではなく、各個人が主体的に意思決定し、いかに変化に対応していくかということがベースになる考え方。この数年で世の中が大きく変わって、この考え方が必要になってきたと言えるのかもしれません。

 調べてみると、キャリアに関して国も色々な方針を出していますが、昔は、国が主体になっていたものを、いつの間にか企業が責任を持つべきものと定義したり、ついには、各個人が責任をもって考えるものであるというようなスタンスに変わってきています。つまり、自分自身のキャリアは、自分自身が責任を持たなくてはならない時代になっていると言えるのかもしれません。

 待っていれば、組織に属していれば、何となく仕事が与えられて、何となく結果を残していれば、それなりの人生を送れた時代はもう終わって、自分自身で切り拓いていかなくてはならない時代。とは言え、私達は日々の仕事を通して何かに取り組み、成し遂げていかない限り力が身につかないことも事実。ただ漫然と取り組んでいくか、自分自身の目的を意識しながら取り組んでいくかでも、大きな差が生まれてくるのだと思います。この本の中で田中先生のおっしゃる、キャリア自律が必要になってくるのではないかと思います。

 ワークシートもいくつか紹介されていて、自分自身で日々自分のことを振り返ったり、ゆくゆくの大きな目標のために日々の仕事に自分ならではの『意味』をつくることもできることなのではないかと思います。すぐに取り組める内容で、働くすべての人に活用できるノウハウだと思います。

 この本を通して、『給料をもらう』というよりも、『給料を稼ぐ』スタンスの大切さを田中先生は述べていらっしゃいましたが、日本の中ではまだまだ『稼ぐ』ということに対するマイナスのイメージが意識の中に刷り込まれているように感じます。仕事を通して価値を提供し、その価値に対して正当な対価を得ること。当たり前のことではあったとしても、これを当たり前の考え方として日本の中に定着させるのは、中々ハードルが高いことであると同時に、これからさらに重要になってくるように思います。

 個人的には第2章のコラムのところがズシリと刺さりました。私は国家資格ができる前にキャリアカウンセラーの民間資格を取得して、少し後に国家資格ができて、5年間の間に登録手続きをとれば、国家資格のキャリアコンサルタント資格の登録をすることができるという立場でした。色々な思いがあって、登録すべきかどうかを、4年半くらい悩んで、ギリギリのタイミングで登録手続きをとりました。田中先生の書かれていた通りの、『専門家としての覚悟』という部分が、いちばん強く悩んだポイントだったように思います。資格取得後も、5年間の間に所定時間の学びが必要なこの資格。それでも、自分の中で挑戦しようと決めて、登録しました。まだまだ行動できているとは言えませんが、あらためて火が付いた思いです。

 キャリアコンサルタントの資格を目指したいという方に、最近は良くお会いするようになってきたように思います。ただ、この資格を取得して、何をしたいのかということを明確にもっている人はまだまだ少ないのかもしれません。資格を目指す前にも、目的を明確にすることが大切であるということを、そんなコラムからも感じました。

 働くすべての方に読んでいただきたいのと同時に、これからキャリアコンサルタントをめざそうかと悩んでいる方に、特に読んでいただきたいと感じる素敵な本でした。

今すぐ転職を考えていない人のためのキャリア戦略
田中 研之輔 著 ディスカバー・トウェンティワン発行を読んでの感想。

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