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なぜ介護福祉士から看護学生になったのか? 〜その1〜

 

 

アドボケイターという言葉がある。

 

アドボケイター(アドボケーター)

…自分の意見や権利を上手く伝えることのできない患者 の代わりに、意見や権利を主張する代弁者のこと

引用元:看護roo!看護用語辞典ナースpedia

 

誰かの代弁をする時、私は長年、

その人の訴えたいことをそのまま人に伝えさえすれば、

伝わるのだと勘違いをしていた。

確かにその人の訴えを発信したはずなのに、

受け止めてもらえなかった出来事があった。

 

そしてある訪問看護師に、

ただその人の言葉を伝えるだけではなくて

相手を納得させるだけの根拠づけが必要ということを

学んだのだ。

 

 

 

在宅で介護福祉士をやっていたとき、

様々な理由により、意思確認が困難な方が少なくなかった。

日常生活のサポートをする上で、意思確認は頻繁に行われる。


トイレに行くのかどうか、

風呂に入るのか、

どんな服を着るのか、

なにを食べるか、

なにを買うか、

どこに行くのか、

あなたはどうしたいのか?

 

私は利用者と真剣に向き合い、

数年単位の長い月日を共にして、

第一にその人の訴えに耳を傾け、

様々な職種と情報を共有しその人の理解に努めていた。

 

 

ある日、長年、訪問していた

人工呼吸器ユーザーの利用者の様子が、

いつもと違った。

 

いつもよりも真剣な目で私を見ている。

 

発語はできないが、

まばたきで意思確認が可能な方である為、

なにが仰りたいか、いつもどおりに、

状況から推察しうる質問をして、

まばたきで意思確認をする。

質問の範囲を、大きいものから徐々に狭め、

すこしずつ確認していく。

 

「なにか言いたいことがありますか?」

YES

「具合が悪いですか」 

少し間があってYES、ポイントを変えて、

「なにか気になりますか?」

YES

「体調の事ですか?」

YES

 

そんな感じで確認していくと、

具合が悪いわけではないが、

体調の事でなにか気がかりだという。

 

しかしそれ以上、私は読み取れなかった。

それでも、なにか体調面で訴えたいことがあるのは確か。

 

そうこうしているうちに、

もうすぐ訪問入浴が来る時間になった。

「もうすぐお風呂ですけど、入れそうですか?」

 

そう訊くと、眼に力が入り、わずかに表情がこわばった。

 

これだ!

 

お風呂に入りたくないのですか?

YES

 

バイタルは正常範囲内、

しかし理由は定かではないが、

こんなに入浴に対し拒否感をあらわにするのは

はじめてのことだった。

 

訪問入浴のスタッフと協議の結果、

結果的に入浴からベッドバスに切り替えて対応し、

本人も納得の様子であった。

 

しかし、その対応について異議が上がった。

ケアマネと主治医からだ。

 

ケアマネの訴えは、

「〇〇訪問看護ステーションの所長に、入浴させるように言われていた。だから困る。」

というもの。

 

主治医の訴えは、

「入浴させ清潔を保つ事は本人の健康維持につながる。嫌がっても入浴させるべきだ。」

というもの。

 

私が何を言っても、

利用者の意思を2者に伝える事が出来なかった。

 

そして、よく一緒に仕事をする看護師A氏が

この利用者宅を訪問した際に私と顔をあわせ、

この件について、あくまで業務的に報告をした。

 

その時の彼女の言葉、そして立ち振る舞いによって、

看護師の持つチカラを自分のものにしたい

と感じることになった。

 

つづく

なぜ介護福祉士から看護学生になったのか? 〜その2〜

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