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王様?俺様、貴族様!!

 お久しブリーフ。
そんなダンディズムが華麗に決まり民衆のスタンディングオベーションが鳴り止まないところだがどうか皆さん落ち着いて着席してもらいたい。
どうにも厄介な流行り病とやらで酒飲みの諸君は苦労した数年間だったのではないだろうか。
しかし我々は怯むことなく果敢にこれからも食事に対峙しなければならない。
シャボン玉みたいな名前の島から散り散りになったこの数年間での修行を忘れてはいないだろ??
そう、我々は邪悪の王である、その成果を発揮するにはただ飲むしかないのだ!!

 そんな色んな能書を垂れたが、かくいう私も進化をした。
その一端を語ろうではないか。
皆さんは均一価格というものをご存知だろう。
100円ショップやファンシーなありがたい店等、業態様々至る所で目にするだろう。
我々消費者はこの均一価格に滅法弱い。
酒飲みの皆さんならその答え合わせは容易だろう。
皆さんの好きな言葉だ、それではご唱和下さい…

明・朗・会・計

思わず海上レストランでも勝利しそうな必殺技が決まったようだな。
そうだ、酒飲みに嬉しいのはどんな相手だろうと何を飲み食いしても明確な状態だ。
そんな訳で新たな敵キャラの名乗り挑発を甘んじて受け入れ、相見える為黄色と赤の看板をくぐった。

 奴の名は、鳥貴族。
俺様に向かって貴族を名乗って対抗してくるとは良い度胸だ。
まずは決まり文句で先手を打とう、「とりあえず生」
この言葉は我が国では共通認識の魔法の言葉である。
さてさて、生ビールと共にどんな武器で突き出してくるか。
そんなに待ってもいないのに「お待たせしました」とやってくる琥珀の液体と白い泡。

美味い

わかりきっているが白い泡が乗ったシュワシュワする液体は喉を通るだけで高揚する。
しかしながら待てどくらせど二の矢が来ない。
そう、この貴族はお通しという文化を持たないのだ!!
この身に刻み込まれた注文もしてないのに突き出される一品、お通しという教育を受けて育ってしまっていた為、うっかり脊髄反射的に受け身を取ってしまっていた。
そうか、貴族ともなると先に手は出さない、あくまで正当防衛を貫こうという姿勢らしい。

 スッカリ出鼻を挫かれてしまったが、気を取り直してメニューを見直そう。
スピードメニューなるものがあるじゃないか。
自ら攻めてこない割に俊敏さにまで自信があるのか、もしやこの貴族なかなか強ェ奴か?オラワックワクして来たぞ。
そのスピードメニューとやらには定番のお通しとも呼べる枝豆や塩だれキューリ、たこわさに煮卵にチャンジャとバラエティに富んでやがる。
極め付けはキャベツ盛なんておかわり自由と来た。
富の分配までかましてくるとはなんと器のデカい貴族なんだ…
そこまで言うならお通し代わりにキャベツ盛を貰おうじゃないか。
そんな葛藤で既にジョッキは空になっていた。
気にすることはない、明朗会計なのだ、次を頼もう。

 ドリンクメニューを改めて眺めると、さすがに背筋が凍った…

メガレモンサワー?!

定番のレモンサワーを巨大化させただと?!
この貴族、器がデカいだけじゃなくジョッキもデカいのかよ!!
そっちがその気ならこっちも受けて立とう、そんな意気込みと共にメガレモンサワーも注文。
ついでにここのメインである焼き鳥も頼もう…

…おい、何だ貴族焼って。

とうとう自らの身を削ったのか?!
いや違う、明らかに大きな焼き鳥だ。
コイツ、明らかに攻めの威力がデカ過ぎる。
そうか、強過ぎて力を抑えてやがるのか…
ふざけやがって…この俺様を馬鹿にしてるのか!!
悟空のようなワックワクはベジータのような怒りに変わった。
かかってこい!!

 程なくして役者が揃った。
富の分配・キャベツ盛
聳え立つバベルの塔・メガレモンサワー
ロンギヌスの槍・貴族焼
まずはキャベツ盛、ごま油の香りと丁度良い塩気、まさしく最高なベジファーストの極み。
続いて貴族焼、ただただデカい…

通常の串より明らかにデカい…
とんでもない武器だな…
こんなもん振り回されたらひとたまりも無い…
やられる前に喰ってやる!!

う、美味い!!!!

完全に安物を想定してかぶり付いたらメチャクチャ美味いじゃないか!!!!
すかさずメガレモンサワーをグビる。

大丈夫、ちゃんと酒だ。
炭酸で誤魔化して量を増やすような姑息な手は使わず真っ向勝負して来てやがる。
こんな高コスパの酒にお得な焼き鳥、これが貴族というやつか…

そっちがその気なら、こちらも手を緩めることなく呑んで喰ってやる。

続く

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