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いつも心にリトル有村架純を

有村架純になりたい。

女性になりたいという意味でも、芸能人になりたいという意味でもなく、有村架純になりたい。正しくは、心の中にリトル有村架純を持っていたいということになるだろうか。そんなことを、先日発売された有村架純の写真集『sou』を眺めていて思った。

有村架純に初めて肩入れしながら見た作品は2018年のNHK連続テレビ小説『ひよっこ』まで遡る。出稼ぎに出たきり失踪した父を探し自身も東京に出稼ぎに出る有村架純演じるみね子。勤め先の倒産や竹内涼真演じる地方から出てきた御曹司との叶わない恋に翻弄されながらも、倒産後勤めることになる洋食店すずふり亭の面々や、やがて結ばれることとなる磯村勇斗に支えられながら成長していく4年間の物語だった。視聴率こそ決して注目を浴びる作品ではないが、朝ドラには珍しい一代記ものではない構成や、ワンカットの会話劇のみで15分を終えることもしばしばという脚本の妙にすっかり惚れ込み、いまだに我が家のHDDには最終回が保存されており、酔っ払っては最終回だけを見て涙を流すことを繰り返してきた。

『ひよっこ』出演後も、『コントが始まる』や『石子と羽男』など追いかけた作品が多く、「見させる」女優だなあと思う。

そんな有村架純だが、以前モデルプレスのインタビューでこんなことを答えていた。

さらに、自身が可愛くなるために実践していることを聞かれた有村は「何もやってません、と言った方がカッコいいんでしょうけど…やってますね、色々(笑)」とコメント。具体的には「ジムにも通ってますし、ランニングしたり寝る前にストレッチしたり。お肌のケアも気にしてはいて、ビタミンやたんぱく質を沢山とったりとか。でも、皆さんが一般的にやられていることをやっているだけだと思います(笑)」と打ち明けた。

https://mdpr.jp/news/detail/1880726

ここまで上り詰めた人でも、いや、だからと言うべきなのか、日々の努力を窺い知ることができて、そしてそれを素直に打ち明けてしまうところに憧れを持った。それ以来、心の中にリトル有村架純を持って、「有村架純だったらどんなにお腹空いてても飲んだ後にラーメン食わないよなあ」と思ってセーブしたり(敗北も多々)、「有村架純だったら寒いけどこんな日にもランニングに行くよなあ」と自分を奮い立たせたり、都合よく使わせてもらっている。そういう、自分のなりたい姿に向かっての努力を惜しむことなくでき、嫌味なく人にもさらっと言えるような人間に、僕はなりたいのだろう。

こんなことを考えているときある一冊の本に出会った。けんすうこと古川健介さんの書かれた『物語思考』という本だ。この本の主張は作品中にも出てくるこの一文に尽きる。

「自分のキャラクターを設定して、それにより行動(プロセス)を変えようというのが、「物語思考」でぼくの言いたい主張です。

けんすう『物語思考』p .103

あえて自己啓発本みたいな本を書きたかったとあとがきにもある通り、SNSの運用方法やワークのような内容もあるが、自分のなりたい状態を叶えているキャラクターを設定して、そのキャラクターならどんな行動をとるのかを考えて思考と行動を変えていこうという主張は、リトル有村架純の考え方そのままであったし、有村架純に限らず、僕の人生にはそんなリトル〇〇がたくさん存在してきた。

小さい頃はウルトラマンや仮面ライダーにハマって変身スーツを私服にしていた頃からその癖はあったのだろう。2010年南アフリカW杯の時期には、本田圭佑のようなビッグマウスに憧れ、当時の担任に「受験は過程より結果ですよ」などと言ったこともあった。今思うと、その行動にハマっていることこそが、本田圭佑という人間のようになりたい、というゴールから逆算した「過程」をなぞっているだけというのがオチなのだが。

今はその対象が有村架純のストイックさだったり、嫌味のなさだったりするわけだが、今後も「この分野ならこの人」と増えていくこともあるだろう。逆にもう本田圭佑のビッグマウスに憧れなくなったように、そのキャラにサヨナラをすることもあるだろう。自分の憧れる姿が変わっていくから仕方ない。

判断基準を持つとすれば、自分が読者や視聴者になってその物語を見たときに、おもしろい人生にするということだろうか。何も起きない人生は、物語にならないから。

この文章を書き終えたら3本目のお酒に手を伸ばさず大人しく寝ることにしよう。

心のリトル有村架純の言う通り。

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