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複雑な気持ちも日本を出れば言葉にできる!言葉迷子になったら読みたい一冊

日々の中で、うまく言葉では表せない気持ちを抱いたことはありませんか?寂しい、幸せ、イライラするなどと言葉にしてみても、なにか物足りない。複雑な感情にぴったり合う言葉が見つからないというのは、誰しも一度は経験があるのではないでしょうか。

そんなときは日本を出て、世界に目を向けてみましょう。今世界には196ヵ国あり、6900もの言語が存在するといわれています。国の数だけ文化があり、もちろん国ごとに表現の仕方や言葉のニュアンスも異なります。そのため、ある国ではあなたの気持ちに名前がついているなんてこともあるのです。

そんな世界のさまざまな言葉を紹介しているのが、エラ・フランシス・サンダース著『翻訳できない世界のことば』という絵本です。絵本といっても大人向けで、世界の言語をとおして私たちに新しい視点を教えてくれます。

気持ちや状態を表す、世界のおもしろい言葉 

では、日本にはない外国の言葉には、どんなものがあるのでしょうか。この本で紹介されている世界の言葉をいくつかご紹介します。

Kummerspeck(クーマンシュペック)
みなさんも、「ついやけ食いをして太ってしまった!」なんていう経験があるのではないでしょうか?「食べ過ぎが続いて太ること」をドイツではKummerspeck(直訳すると悲しいベーコン)といいます。感情にまかせたやけ食いを皮肉った言葉に、ユーモアを感じます。

CAFUNE(カフネ)
「愛する人の髪をそっと撫でるしぐさ」をブラジル・ポルトガル語ではCAFUNEと表します。ロマンチックなシーンにぴったりなこの言葉は、まさに愛と情熱がひしめき合う国ならではの表現ですよね。

COTISUELTO(コティスエルト)
カリブ・スペイン語で、シャツの裾をズボンにしまわない男の人をCOTISUELTOと表現します。だらしのない男性の行動にまで名前がついていたなんて、ユニークでクスッと笑ってしまいます。

RAZLIUBIT(ラズリュビッチ)
「何かのきっかけで恋が一気に冷めてしまう」「かつて愛した人が今や別人のよう」、そんな恋心の変化についた名前が、RAZLIUBITというロシア語です。恋が冷めてしまった、ほろ苦い気持ちを表しています。恋の終わりを捉えた言葉につい、「わかる!」と頷いてしまいます。

HIRAETH(ヒラエス)
特定の切なさを表す言葉がウェールズにはあります。久しぶりに地元に帰ったとき、以前通っていたお店が無くなっているとき、新しい建物がひしめきあい昔の景色が一変してしまったとき……言うに言われぬ切なさを感じますよね。そんな気持ちを、HIRAETHと呼びます。戻ることのできない場所、過去に失った場所に対する哀愁に名前があったなんて驚きですよね。

IKTSUARPOK(イクトゥアルポク)
イヌイット語では、「誰かが来ているのではないかと期待をして、何度も外に出て確かめること」をイクトゥアルポクという言葉で表します。私たちの中にも、パートナーや気になる人からの連絡を待ち侘びて何度もスマホを見てしまうという経験をした人もいるのではないでしょうか。実はそんな気持ちは、デジタル版イクトゥアルポクだったようです。


日本にしかない言葉もあるんです

この本にはいくつか日本語も取り上げられています。では、日本特有の言葉にはどんなものがあるのでしょうか。

日本にしかない言葉の一つが「木漏れ日」です。木漏れ日はほかの言語でうまく当てはまる言葉がありません。木々の隙間からこぼれる陽の光を表したこの言葉は、日本人ならではの感性を表しているといえます。

そのほかにも「侘び寂び」「積読」「ボケーっとする」なども、日本特有の言葉として紹介されています。特に著者は日本語の「ボケーっとする」に出会ったことで、海のそばに座っているおじいさんを見て「boketto」と感じるようになったと記しています。新しい表現を知ることは、新しい見方を教えてくれるのです。


感情に名前をつけよう

『翻訳できない世界のことば』は世界のユニークな言葉に触れられる本ですが、新しい言葉を知ることは単に知識が増えるというだけではないと私は思います。

不透明だった感情に名前をつけられると、感情の正体が明らかになった感覚が得られ、人々が共通で感じている気持ちなのだと心に落とし込むことができます。病名がわかると安心する、といった感覚と同じかもしれません。
感情の言葉化をうまく活用すれば自身の感情を客観的なものにし、怒りや悲しみといったネガティブな感情と距離を置けるかもしれません。


著者が「boketto」を感じるようになったように、これを読んだみなさんも、今後「私は今、ラズリュビッチだな」と感じる場面があるかもしれません。「あのときの気持ちってこんな名前がついていたんだ」と新たな視点を得られると共に、「こんなシチュエーション、あるある!」と新しい世界にワクワクする一冊。イラストレーターでもある著者が描いたイラストも見どころです。

『翻訳できない世界のことば』でぜひあなたも、新たな言葉と出会ってみませんか。

このnoteは、オンラインスクール「SHElikes」のWebライティング入門コースの課題で実際に執筆したおすすめの書籍を紹介する記事です。
課題提出後に添削いただき、加筆修正いたしました。


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