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シンギュラリティ #1

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~三勢力代表による競売から始まる世界~

さあ、競売が始まる。

その瞬間、目眩の様な感覚に襲われて強烈な光に目を閉じ周囲が暗くなったのを感じると少し鼻を付くようなカビ臭い様な懐かしい様な匂いを感じる。
ゆっくり目を開くとまず目に入ったのがフローリングの床。
顔を上げ見渡すとそこには長机とパイプ椅子、ノートPCがある普通の会議室のような部屋。
しかし、何か心が落ち着く妙な空間で
窓の外は森林…

「え?どこだよここは…」

思わず声が漏れた
すると「ガチャ…」っとドアが開き、男が2人と女が1人入ってきた。

「悪くない空間じゃない」

ショートカットの髪に赤い縁のメガネを掛けて少しクールな印象、ストレートに言えば冷たい感じする女性が言った。

「どういうことでしょう?」

自分の理解が追い付かないまま3人が部屋をうろうろして壁の写真や机の材質、ドアノブの形など。

競売って不動産の競売か?
一瞬そんな事を頭に過ったが違うよな。

「うちは2万くらいが限界だろうな。」
「そう、私達は3万までは出せると思うわ。」

スーツ姿の男の後に女性が言い、その後にもう一人の迷彩服の男が言った。

「決まりだな、俺達は部屋にライフルやナイフを飾ってる様な奴じゃなきゃ興味が無いのでね。
この手の地味なやつはあんたにやるよ。」
「最終的に決めるのはあなただけどね。」

まだ、何を言ってるのか理解が追いつかないでいるが、自分が品定めされ売買されようとしているのはわかった。
自分が言葉を発しようとした瞬間、目の前に突然ポップアップのような画面が現れサインを求められる様な表示が現れた。

〈サインをするには左目を閉じウインクしてください。〉

目前に漂うディスプレイにはそう書かれてある。
あまりにもリアル過ぎる感覚にまたこれは夢だと思いこんでた事を忘れてビックリして後ずさりしてしまった。

「これはなんです?」
「それはあなたが決める事。決めるのは私達と契約するかどうかよ、断ることも出来る。」

そう言われると、両手で顔を押さえ数秒考える…いつもの癖だ。

「今、決めなきゃダメなのか?」
「そんな事はない、決めるのはいつでもいいが事態は日々悪化してる。
もう少し世界を見渡して私達が正しい事をしてると思った時に契約してくれて構わない、もちろん他の勢力と契約に望んでも構わない。
あなたが決めること。」

やるべき事を先延ばしにする事はあまり好きでは無かったのだが選択肢があまりに理解不能でそうするしかなかった。
そこにポップアップとは別に通知のような点滅してる様なものを見付けたがスーツの男が話かけて来たので男の方に視線を向ける。

「アドレスカードは送ってた、気が変わったら私達に連絡してくれ。
金額の交渉には応じる事は出来ないけどね。」

そう言うと迷彩服の男はテーブルの上に座り組んでいた足を戻すとトレッキングシューズの様な靴のフローリングに付く「パン」という音に視線が行き、壁にもたれかかっていたスーツの男が電子タバコを口に咥える。
そのまま二人の男はドアを開け出ていってしまった。

「私も契約書とアドレスカードを送ったから必ず目を通して返事してね。
それとストレージも用意したから、一先ずそこで暮らして。」

そう言うと、女もドアから出ていってしまった。

またいつもの癖で頭を抱えてしまった。
長机に置いてあったノートPCが目に入りパイプ椅子に座りエンターキーを押して見る…
が、何も起動しない…
ケーブル類も何もないタダのオブジェなのか?
ふと先程から気になっていた視界の隅で点滅する通知の様なものが気になった。
次の瞬間、目前にARディスプレイが突如出現し、見出しが4つ並びnewの見出しが付いている。

一番上の「j」の文字を右手で触れるように伸ばしてみた。
すると、もう一枚のARディスプレイが現れた、そこには宇宙開発推進連合、とメールアドレスの様な英数列と「j」と言う名前が書いてあった。
jなんてシンプルな名前なんだ、そして次の「seed」のところそこには宇宙環境保護団体と…
ここまで来たらなんとなく開発か保護かで揉めてるのは察しが付いたが自分に高額を付けてくれたのはもう一つの団体。
それが「NWO ニューワールドオーダー」。
アドレスカードの名前は「rey」。

嫌な予感と言うより寒気に近い様な感覚がしもう一つの通知に目をやる、それは先程の契約書だった。
これにサインすればNWOと契約した事になるかそんな事を考えて居ると眼の前にまたポップアップ。

ここは5秒後に閉鎖されます。5,4,3…

「え!?ちょっとま…」

突然の事で考える暇もなくまた目の前が真っ白になる。
これは、やっと悪夢から開放されるのか…
それともストレージとやらでの暮らしが始まるのか…
そんな事を考えながら意識が遠のくがわかる、死ぬってこんな感じか。

薄れゆく意識の中で目の前に線がが現れる。
円柱形で横に細長い…筒かな…
その筒状のものに左から緑色の液体が少しづつ流れ込む。
既視感を感じながらも緑色の液体が筒の中ほどまで来た所で数字が見えた48%…

そうこれはプログレスバーだよな…このロードが終われば現実世界に帰れるか?
そんな事を考えてるといきなりバーが98%まで進み意識がはっきりした。

視界にはまたフローリング、顔をあげるとそこには女の子が一人。

次回へ

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