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ブルガリアでは酒は薬だと思い始めた件

日本で医師として働き始めてそれなりの年月が経って、改めてブルガリアの医療を見てみたいと思うようになっている。日本と比較してブルガリアの医療、ことプレヴェンの医療は遅れていた。EU国内で最貧国のしかも田舎の大学病院だから当然だ。ただ、自分の過去の日記を見返していて、プレヴェンでは何かがなければ他の何かで補っていたり、工夫を凝らして治療をしていたんだなと改めて気づかされることがある。医学的にいいとか悪いとかは置いといて、プレヴェン大学病院のある意味適当でおおらかな部分は今思うと大変興味深かったなと思う。

さて、本題。

ある日、私とグループメートは外科病棟で実習していた。その日私たちのグループにあてがわれたのは胆のう炎の術後の患者だった。患者の体からチューブが伸びている。で、問題はチューブの先。500mlペットボトルに刺さっている。体から出ているチューブの先が不潔な容器に突っ込まれて、排液が垂れ流されていたことなんて日常茶飯事だったから、当時はそういうものだと思っていた。私達と合流したT先生から患者について解説が入る。

『このペットボトルの中身は胆汁なんだけど、苦いからビールと混ぜて患者に飲ませます!』

これ飲めるのか!!しかも術後患者にアルコール飲ませるとか!!!
医学生3年生だった私は本気で暴挙だと思った。

実は患者の体から排出された胆汁を飲ませることは、日本でもやることはあるらしい。あの日の治療がガーレ還元というれっきとした治療の一環だったと知ったのは、その患者に出会った3年後だった。しかも、適度な飲酒は胆石のリスクを下げるらしい。しかも胆汁の苦みを抑えるために敢えてビールの苦みと合わせてくれるなんて、理にかなっている上優しさであふれているんじゃないかと思うよ。日本では術後の入院患者に甘んじてアルコールを摂取させるなんてありえないことだからさ。

ブルガリアでは酒は薬だという記事を何度か書いた。

ここまで来ると、アルコール摂取はプレヴェンの医療の一端を担っているのではないかと思う。入院中にお酒が飲める、それが許されるって本当にすごいよね!笑

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