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ある少女の強がり

『私、Cystic Fibrosisなの。』


その日の小児科実習に定刻通り参加したのは、スウェーデン人のYちゃんと私の2人だけでした。

その日の私達が紹介された患者は15歳のブルガリア人少女でした。
思春期特有の背伸びしたい感とちょこっと強気な雰囲気をまとっているけれど、体は小学生低学年ほどでとても小柄な少女でした。


私もYちゃんもブルガリア語は大の苦手。
そんな私たちを察してか、彼女は流暢な英語で自分の病状を説明してくれました。
本当に自分の病気に対する理解が良い。
きっと長い間、自分の病気と向き合ってきたのでしょう。


問診も終わり、Yと担当医と少女についてディスカッションしていたその時。

トルコ人のグループメートAとイギリス人Mが遅れて実習にやってきました。

トルコ人のAくんはいわゆるバッドガイで、クラブでお酒を飲んでナンパした女の子達からブルガリア語を学んでブルガリア語堪能。英語もうまい。
患者、病棟スタッフ、同期、年齢問わず女性受けが良い、何とも言えない特別なセクシーさをまとっている男の子でした。

到着するなり『患者さんのところに行ってきます!』と息巻いていたのに、ものの数分で私たちのところに戻って来て一言。

『あの子、元気ですしか言わないんだけど!お前ら本当に病歴とれたの?』

普段、ブルガリア語の問診がうまくいかない時は、ブルガリア語の話せるAくんに問診を引き継いで患者さんの情報を集めていました。
そんな事が続いていたので、Aくんからしたら何故私たちが病歴をとれたのか、半信半疑な表情をしていました。


『きっとAくんと話すの恥ずかしかったんだと思うよ。』って言いかけて止めました。男性相手に強がっちゃうことってあるじゃんね。


小児科病棟で出会った少女が素敵な恋をしていますように。

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