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読者記録61『オルタナティブ』

永野『オルタナティブ』
(リットーミュージック 2023年)


最近、芸人永野が再ブレイクしている。
コロナ禍、少し前から音楽をYouTubeで語っている姿が面白かった。
さらには、YouTubeでの出版区やD.Oとの対談など興味深く共感できるものが多く書籍も読んでみたくなった。

光と影。芸人永野はメインストリームではない影の芸人。しかも、ひねくれて拗らせてたどり着いた場所。音楽や映画、人とのかかわりに関して感覚が似ていた。

散々、自分も考えてきたことだが。
『オルタナティブ』とはなんなのか?
(まあ、今となってはそんなカテゴライズどうでもいいんですが笑)

永野さんは、
『オルタナティブとは、自分が愛しいと感じた作品群。人物。寄り添ってくれたもの。ささえてくれたもの。心許したもの…』という。

映画や音楽や、本は大きな影響を与えてくれる。まして、若かった頃ならなおさらだ。

この本は、芸人永野がどのように形成されたのか。そして、ひねくれたおっさんが到達した現在地を伝えてくれる。

陽キャ、陰キャに分かれたのなら。
確実に私も陰キャである。
キラキラした学生時代ではなかったし、その空気感に合わせるようなことはちょっと無理だった。

自分自身と同じような境遇かつ年齢を重ねた先をみている永野さんは、『あたりまえの感覚』で物事を考えている。流されず常に批判的だ。(誰にでも文句を言うだけではない。耳を傾けて年下の優れた話を聞く様子はYouTubeでよくみられる。多様性を振り回したり、初めから全否定するような姿はない。)

このご時世、誰かが言えないようなことを代弁してくれる破天荒な人物として再ブレイクしているんだろうが永野さんの魅力は、そんな表面的なことではないだろう。当たり前の感覚でまっすぐなところに私は惹かれている。むしろ破天荒ではない。奇人なんかじゃない。

永野さんは、ある対談で「無理におっさんがわかるよと言って若い人や時世を理解するためのアップデートをやめたらいいんじゃない?」と言っていた。

もちろん、理解をすることを放棄せよといっているわけではないがどう考えてもついていけないことにはついていく必要がないことを伝えていたのだろう。おじさん(私も含む)には、もうそんな時間も体力もないのだから。


以下は、自身と重なったり共感した部分の備忘録。

1,昨日まで野球を見ていた人間が「オーレーオレオレ…」と歌い出す。急な変貌をした時のショックが忘れられない。

2,売れてから手のひら返しをした人間。「あの頃はおれも苦しかった」という。そんな人間がオシャレをし、毛先を遊ばせることができるのか?本当に苦しかった人は辞めていった。そういう人間は自分を責めない。あなたは悪くないと言われることを誘導する猿芝居。「自分を好きになろう」「自分を好きにならなくて誰がすきになってくれるの?」というサイコな親に育てられたんだろう。

3,純粋悪やサイコは一切己を疑わずに近づいてくる。自分を徹底的に疑うのがオルタナである。

4,どんな世界でもトゥーマッチな人間が人の心を揺さぶる。

5,祭り行事を否定していた自分のつまらなさ。「なんで当たり前のように祭り行事にいくの?」と投げかける自分がさも特別なことを考えているように思っていた平凡さ。そう思うことがあの頃のガソリン。60近いのにいつまでも新しいこと新しいこと言ってる方が不自然で向き合ってない。

6,世間では常に新しいことをやる大人が尊重されるが、40を過ぎてやってたら迷惑でしか無い。キスのことを考えてキラキラしている中年のような気持ちの悪さ。新しいことを放棄したのだはなく、桃源郷に到達したということなのです。

7,本物になろうとしている人は多分本物よりも異常。だから好き。

8,自分が落ちている時に助けてくれた人を忘れない=オルタナ

#読書感想文 #永野 #リットーミュージック #オルタナティブ #読書記録

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