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左遷させられたけど、生まれて初めて自分でパソコンを買った

型落ちのパソコンを買おう

lenovoのメモリ16GB、SSD512、ryzen7-5800U。初めての脱インテルである。整備品というやつで型落ちだが、スペックは正直、会社から配られているよりもはるかにイケている。

 というのも、筆者が会社にめちゃくちゃ左遷させられた後に、期待されているというDV被害者のような構図になっているからである。
 
 ある日、会社は「求ム!デジタル人材!」のというこの時代にはにわかに信じ難い言葉で、今はやりの「学びなおし」を提案してきた。実は筆者、転職はしていないものの、web界隈の仕事をしている。まぁ素人が一生懸命やっているだけなので、一部は会社お抱えのコンサルに相談しながら、基本はノリと気合と独学で乗り切っている。案外何とかなる。
 だが、技術的になにかほしいし学ばなきゃいけないなぁと思っていた時だった。

「100万円まで支援。社内選考アリ」
 100万円といえばうまい棒が7万本程度(信じがたいことにうまい棒算が今や崩れつつある)帰る。大塚のエロい店なら500回行ける計算である。これには飛びつかざるを得ない。我は左遷の王。早速、左遷部署の長(この人は左遷されたわけじゃなく、いずれ偉くなるためにとりあえず雑魚部署のトップをしてみよう的なノリでいる)から推薦文を取り付けた。
 「この人は我が部のプレゼンスを大きく引き上げており、わが社にとって重要な存在となりうる」

 そして、そこからしばらくたったころ連絡がきた。
「あなたのプロジェクトを採択します」
 めちゃくちゃ左遷させられたのに、会社の学びなおしプロジェクトに通った。しかも全社で10人程度というから、驚くほかない。
 しかも「5年間はうちで働いてもらうし、退職したらその費用を弁済してもらいます」とある。
 普通の人なら足かせであろう。だが、筆者にとっては「めちゃくちゃ左遷させられたけど5年は退職させられなさそう」ということである。うっかり救われてしまった。そこで、パソコンを初めて買ったのだ。

 妻にはいくら言っても基本的にはいい顔はされない。妻は基本的に筆者がなんの仕事をしていようが関係なく、自宅に金が運ばれてさえくればよいのだ。筆者が今webの仕事をしているとか、パソコンの仕様がどうとか、いくら話をしても聞いてくれなかった。つらい。

左遷させられてから仕事が変わった

 当たり前といえば当たり前なのだが、左遷させられると仕事が変わる。
 わが社においてはwebの業務はかなり「どうでもいいこと」に位置されている。大きな会社だし、毎年新卒が入ってくるわけだが、「そういえばうちはネット戦略ってどうなっているんですか?」と聞くと先輩は「変な人たちがやっているよ」と答える。そのくらいのド左遷部署なのである。
 
 筆者もご案内の通り、花形部署にいたが、そこから一発で左遷させられ現在の部署にたどり着いた。だが、ここで運命の歯車が狂いだしたのだーー。

 作るものがほとんどヒットしている。おそらく、筆者が作ったものをフォロワーも一回も見たことがあるはずだ。この状況になぜか先日、会社の取締役が筆者のボスに
「あまつぶ君(※もちろん実際には本名)は実に頑張っている」
というメッセージまで送ってきた。
 そんなことするなら、この部署から出してほしいこと山々ではあるが、そのくらいの注目を集めているのは事実で、「あいつにできるなら俺にも」的なノリの会社の後輩たちが筆者の部署にたくさん来たがっているというのだ。

 まさか、筆者も自分でパソコンを買う日が来ることになろうとは、露とも思わなかった。この年齢で専門学校に行くことになるとは、まさか家で妻の尻に敷かれることになるとは、娘がバレエ教室に行くから費用捻出のためにタバコをやめなくてはならなくなるとは、知らなかった。

 だが、人生はそんな偶然が積み重なってできている。そんな変化を今は楽しみたい。

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