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ダメ社員、かくきわまれり

 突然だが、「前略プロフィール」をご存じだろうか。
 アラサー世代の皆さんにはピンとくるひとも多いだろう。「パケ死」という言葉が「パケ放題」の登場によって死語にされた時代。携帯でネットをどれだけ使っても定額という夢のような世界で、一気に拡大した「元祖SNS」である。

 これがなかなか香ばしいメディアだった。
 まず、「トップ画」。自分のプロフィールサイトの冒頭に掲載できる写真のことである。当時、全盛のプリクラの画像をピッタリとはめ込むことができる。これを見て「イケてるやつ」かそうでないかが判断されるのだ。
もう、必死の形相だ。頂点はやはり「カップル」の写真だろう。これにより、交際していることを公表するという文化もあり、当時のティーンたちは羨望のまなざしで見つめた。
 その次の群は、「プリクラ組」だ。女の子はまだしも、男までこぞってプリクラを撮った。女性と親和性があるヤンキーはもちろん、筋骨隆々の野球部、ちょっとすかしたサッカー部、実は陰キャラの軽音学部まで。もう地獄の様相である。
 最後はポエム組。誰が考えたんだか分からないポエムを謎の背景と共に掲載して自らのメッセージとする。人様の言葉を使って、自分の心を表現しようという何とも浅ましいやつらである。

 前略プロフはここでは終わらない。当時はTwitterなどない。自らの現在を表現するために「リアル」という短文投稿式のブログが大流行した。
 ブログは「日記」、超短文は「リアル」と分けるのだ。これにより、好きな相手の考えていることや趣味趣向を盗み見し、自らの恋戦略とすることが当時のティーンの常であった。

 そして、筆者も前略プロフィールの「ガチ勢」だった。素人の高校生のブログなぞ、クラスメートがのぞきにくるだけだから、PV数が50もあれば人気者だ。そんな中、毎日私のブログはPV数は、300を超えていた。

 高校も卒業し、大学でもそこそこ良い成績を収め、大企業に就職。希望の通りの会社・職種に就き、順風満帆にいっていると思っていたのもつかの間、厳しい上司と思いの外うまくやれない仕事に悩んでいたその時に、noteに出会った。「これを使えばインフルエンサーになれるし、取材に答えるときにため口きける!」と思い、一生懸命になって書いた。

しかし、書けども書けどもバズる空気は全くなく、仕事にまた没頭し始めた。もう4年前の話である。今となっては5年もこのメディアが続いたのだ。始めから続けていれば、note界のHIKAKINに慣れたかもしれないのに。また、なにかの拍子で自分が人気者になれたかもしれないのに。文壇に上がり、世相を舌鋒鋭く切り、世論を味方につけ、地元の市議会議員(!)になれたかもしれないのに。結局、続ける事もなくやめてしまった。

 そして、日常業務に邁進するようになり、6年に渡る転勤生活を終えて、東京に戻ってきた。noteと共にあった(?)人生は色々あった。

・仕事で上司の詰め方がえぐくて、ほぼ鬱病になった。
・PS4を購入した。 
・結婚直前まで行っていた(同棲中の)元彼女が2度浮気した。しかも一回は妊娠していた。
・自暴自棄になりギャンブルで200万円の借金を作った。
・風俗嬢と付き合い、結婚した。(現在進行形)
・子どもが生まれた。
・生命保険に加入した。
・東京の花形部署に配属されたが、無能すぎて早速左遷されそう(new!)

 あのとき、インフルエンサーになんてならなくて良かったと思う。仕事を無能なりに続けてきたおかげで、我ながら数奇な運命をたどることになっているのだから。事実は小説より奇なり。再開したnoteでは、周りに起こった面白いことをつづっていこうと思う。あなたのために。

#お願いだから誰か読んでくれ #エッセイ #noteでよかったこと #日記 #ブログ

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