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【『わたしが土に還るまで』作・演出私道かぴさん(安住の地)インタビュー】

6月よりchannelが企画・運営している、now-here(いまここ)、no-where(どこでもない場所)という2つの意味をはらむ概念”nowhere”を、3回に渡る展覧会や公演を通じて省察するプロジェクト、「nowhere project」の第2章が開幕します!

「nowhere project」第2章では、劇団・アーティストグループ「安住の地」にて作・演出を務める私道かぴ、コンテンポラリーダンスを軸に身体表現を行うダンサーの酒井直之を迎え、亡骸が朽ちていくまでの過程を九段階に分けて描いた仏教絵画、《九相図》を身体を通じて表現するパフォーマンス、『わたしが土に還るまで』を有楽町ビルの屋上にて上演します。

今回は、本作で作・演出を務める安住の地・私道かぴさんインタビュー🎤をお届け!


●私道さんのご関心について 

🔸私道さんは、脚本や演出、また最近では美術制作など幅広いご活動をされています。様々な形態で表現をされるにあたって、軸にあるテーマや思いなどを伺いたいです。また、よろしければ演劇の世界に入られたきっかけなどを知りたいです。とても興味があります。

🔹もともと身体感覚や人と人とのふとした会話などに興味があり、演劇の分野で脚本・演出をしてきました。最近は、コロナ禍を経て劇場での発表に限界を感じ、美術のインスタレーションなどの文脈をかりて、作品と人との偶然の出会いを求めて作品を発表しています。
演劇に携わったきっかけは、もともと関西小劇場の観劇が好きで、出演されている人々を観てこんな風に生きたいなーと思ったことが最初です。「こんなにしょうもないことを全力でやる大人がいてもいいんだ」という感じで入ったので、強い憧れみたいなものはありませんでした。なので演劇部とかには入りたくなくて、高校生の夏休みに、神戸アートビレッジセンターで実施されていた高校生向けの企画(Go! Go! High School Project! )に参加して初舞台をふみました。そのときに関わってくれた大人たちが優しかったので今日まで続けてこられました。


🔸「安住の地」の特徴や、上演される作品の特徴などを教えてください。
また、「安住の地」という劇団名の由来や、「アーティストグループ・劇団」と名乗られている所以なども併せてお伺いできると嬉しいです。

🔹安住の地は複数作家性なので、いいように言うと「毎回違うテイストのものが観られる」、悪いように言うと「色が全然定まらない」とよく言われます。私道の作品で言うと「身体性と文学性」みたいな感想をいただくようになってきました。
「安住の地」というグループ名は、山本直樹さんの漫画のタイトルから取ったと聞いています。作品の定まらなさも相まって、最近は劇団員が全員安住の地を探してさまよっている感が出てきました。俳優だけでなく演奏者やダンサー、メイキャップアーティストや衣装作家などが集まっているので「アーティストグループ」を名乗っています。


⚫︎『わたしが土に還るまで』について


🔸この作品を制作することに至った背景やきっかけなどをお伺いしたいです。

🔹「活き活きした身体をもったパフォーマーが死体をやったらどうなるんだろう」という純粋な疑問から始まりました。そんなこと可能なのか、という見えなさがあるテーマに魅かれます。
九相図に至った経緯が思い出せないのですが、もともと骨が好きなので、随分長い間「これで作品つくってみたいな」と思っていた題材ではありました。3年前くらいからは頭の片隅にあった気がします。


🔸脚本は、様々な主語(一人称)で描かれています。
人間はもとより、「建造物」を主語にされたのはなぜでしょうか。

🔹YAUで稽古をしていた帰りに、駅近くの建物が夜にも関わらず煌々と照らされながらどんどん解体されているのが目に入りました。内部の電線や骨組みがはっきり見えて、建物にも最期があるんだなと思い、「造形物」のテキストを書きました。ワークインプログレスがYAUの建物内で行われる予定だったこともあります。でも書くのに時間がかかりました。自然に朽ちるという要素が途方もなく想像しにくかったからです。一方で書いていていちばん楽しかったのは獣で、パフォーマーの二人も獣のテキストをやっている時はいきいきとしていていました。遊びの範囲があるんですかね。


🔸本作品に酒井さんをキャスティングされた理由などをぜひ教えてください。
酒井さんはダンサーであり、演劇における役者とは異なる表現をされている方だと思います。対して森脇さんは俳優をメインにご活動されていると思いますが、私道さんが見ていて思われる、お二人の違いや共通点などもありましたらぜひ教えてください。

🔹酒井さんとの出会いはAPAF2020でした。その際自己紹介で共有された、中村駿さんとの企画「グローカル・トレーニング」がとても素敵で、見ているとコロナ禍で抑圧されていた身体が自由に動き出すようでした。九相図の企画を構想している際、活き活きした身体を持っている酒井さんが死体をやるのは絶対おもしろいな、という直感がありました。作品制作においてはとても器用な方だなと思います。

森脇さんは大学の劇団からなのでもう10年以上の付き合いですが、昨年国内ダンス留学にいっていたのもあって、会う度におもしろくなっているなと感じています。本人はダンサーと俳優の間を中途半端に行き来しているようなことを心配しているようですが、あわいにいるからこそ出来る表現があると思っていて、これからますますたのしみです。作品制作においては不器用だけれど実直な強さがあると思います。

稽古場では、酒井さんが動きを、森脇さんが読みを提案してお互いの表現を改良していく関係性をおもしろく見ていました。

🔸簡潔で洗練されたテキストから、生々しい肉体の表現へとアウトプットされ、作品が出来上がっていくまでに、みなさんでどのような会話やワークショップなどを行われましたか?


🔹YAUで制作するにあたり、お寺関係の方や、葬儀社関係の方など死にまつわる様々な職業のみなさんにお話を聞く機会をいただき、作品の根本のテーマを考える際に強力な支えになりました。
また、座組は私以外は全員初めましてだったので、それぞれのことを知っていくためにたくさん話す時間を設けました。カードに気になる言葉を書いて、それについてみんなで離すというような簡単なゲームをするなど、実際の動きや読みの稽古を始めたのは随分後だったように思います。


🔸YAUの稽古場での発表と、静岡での発表を通して感じられた共通点や違いはありますか?

🔹YAUではパフォーマー本人が言葉も動きも担当する形で、静岡ではひとりが動きを、もうひとりがそこに言葉をあてる形で上演しました。静岡公演の際は上演の構図がシンプルで、より多くの観客にわかりやすく情報をお届けできたように思います。言葉と動きの関係については、まだまだ模索中です。今回の公演でどのような形になるのか、座組のメンバーと探っていくのが楽しみです。

◆公演概要◆
公演名 nowhere”What Are We”
日時 2023年9月30日(土)19:00-20:30
料金 大人1000円(ポストカード付き)
  高校生以下無料
定員 30名
購入方法 peatix

https://peatix.com/event/3697340/view?k=f9bf6e512fcc536e8ce9845cef8f942b90cd157e


製作 安住の地
キャスト 酒井直之
構成・演出 私道かぴ
フォトグラファー 加藤優里
企画 channel(海沼知里・武田花)
主催:有楽町アートアーバニズムYAU
協力:Curator Table

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