17番「サラダ味のスナック」(午後)

アカリ「ふぅ」

 たまたまお客様がいない時間帯ができた。栞さんはフェリシーの中では一、二を争うほど、人気が高くいつも予約でいっぱいなのだが、週の初めの平日ということもあり、今日は空いているようだ。

栞「あー、さいきん外に出るのが億劫になったせいか、栄養が偏ってるのよねー。肌にニキビができてきちゃった」

 栞さんの趣味は読書や映画鑑賞だ。基本的にインドアな栞さんは外に出るのも億劫なのは分かる。けれど、ブログやTwitterには少しこじゃれたランチやお手製の料理の写真を載せている方の印象があったから、ニキビができるなんて意外と言えば意外でもある。

奈子「わたしは大丈夫ですよっ!」

栞「あ、もしかして、なにか美容に気を使っているのかな。さすがアイドルは違うね」

奈子「いえいえ。スナック全種類網羅してますから!」

栞「・・・? えと、なんて」

奈子「スナック菓子のコンソメ味、コーンバター味、サラダ味すべて食していますっ」

 奈子さんは声を高らかにしてお菓子の話題をする。・・・逆にニキビ増えそうだけど。もしかしたら、奈子さんは食べてもニキビのできない体質なのかもしれない。そんな体質あるのか知らないけれど。

アカリ「えっと、奈子さんのスナック食べてるのは、それはそれで栄養過多なのではないですか」

奈子「何を言うの!? アカリっ。スナックもれっきとした食べ物よっ」
アカリ「いやそれはそうですけど」

 なぜだろう。勢いに押し負ける。

栞「じゃあ、私はカロリーメイトの全種類を網羅してみせるわっ!」

アカリ「・・・えっとー。うん」

 私はこれ以上ツッコミを入れるのを辞めた。私は負けたのだ。認めよう。だけど、真似はしない。してなるものか。そう心に決めた。

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