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WORK #2 / 2020.5

 店に入ると煙の香ばしい匂いがした。網が埋め込まれたテーブルが並び、先に入っていた後輩が手を挙げる。既に肉は頼んであるようで、ちょうどタンが焼かれているところだった。
「あいこさん生でいっすか?」
「あ、うん」「俺も生ー」
「すいませーん生二つくださーい」「はいよー」
 接点があるようでないような面々がぎゅうぎゅうに押し込まれている座敷には、家族の食卓とは違う安心感がある気がする。何の義務感もない感じが嫌いじゃなかった。
「ほんじゃみんさんお疲れ様で~~す!」「わ~い」
 カチコンカチコンとジョッキをぶつけ合って、私たちはそうやって暮らしてきた。ツイッターやラインなんか元よりさほど頼りにしていない。学生たちが近い場所に住んでいる環境では、言うほど親しい間柄でなくても一緒に食卓を囲むことができた。何もそれは表面的な付き合いを享楽としていたわけじゃなくて、本当に、一緒に食卓を囲めば友達になれるはずだったのだ。それは多分、私たちの小さな希望だった。

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