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ハンバーガーには抗えない

最近、夢中になっているTik Tokのチャンネルがある。アメリカ留学中の大学生の女の子が、現地の食べ物を次々に食べては紹介してくれる食レポ投稿だ。大学の学食から始まり、ファーストフードに、まあまあ良いレストラン。スーパーの総菜コーナーに、大学で無料で配られるちょっとしたスナック菓子まで、彼女の食レポは網羅する範囲が広くてとても面白い。私にとっては懐かしいアメリカの大学のキャンパスを背景に、そこで生き生きと過ごしている学生に混ざって、旺盛に食べる彼女を見させてもらい、自分までなんだか若返った気分にさせてもらっている。

しかし、とても気がかりなことがある。
その女子大生の肌がだんだん荒れてきているのだ。

様々な店に入って食べるたびに、学食でポテトを味わうたびに、彼女の肌は確実にくすんできている。ファンで隠してはいるものの、投稿動画数に比例して、顔や首の吹き出物が増えているのだ。アメリカの食生活の悪さを、大学生の肌が証明しているようで、私は複雑な気持ちになる。
私もかつては彼女のような肌状態だったに違いない。
彼女のTik Tokを見ていると、現在のアメリカも、私がいた頃とたいして変わらない食生活なのだとよく分かる。今も昔も、みんな知らず知らずのうちに肌を荒らしていくのだ。肌は内臓の状態を表すというから、侮れない。

見た目がそっくりなハンバーガーやパスタでも、日本で出されるものと、アメリカで出されるものは、なぜか違う。使っている油が違うのか、はたまた素材そのものが、同じように見えてじつは根本的に違うのか、と疑いたくなるほど、摂取した油が翌日まで体内に残る感じがするのだ。サラダでさえも、アメリカで食べるとドレッシングで胃もたれすることがある。若い頃でさえそうだった。それほどアメリカ料理の油分は存在感が強いのだ。今ではミネストローネだけで胃が重くなる。

私の友人知人たちは、私自身も含めて、健康面においてはっきり二つに分かれている。
「二十歳までアメリカで育ったか? 二十歳まで日本で育ったか?」

それが分岐点だ。前者はどういうわけか、二十五歳を過ぎたあたりから肥満ラインに突入してしまう。(誰か医学的根拠を解明してほしいと、いつも思うのだが)アメリカ的な食生活で二十歳までの体の基礎を作ると、成人してからそのツケが来るのだろうか? 二十五歳を過ぎてから突然にして太り始める人が多いのだ。あれはなぜなのか? ほんとうに不思議。おかげで私も万年ダイエッターになっている。

Tik Tokのあの可愛い女子大生に「あまり食べない方がいいよ」とメッセージを送ろうかと、何度も思っては躊躇った。老害だと思われたくない。オイリーでもグリーシーでもヘヴィーでも、好きな物を好きなだけ食べたあの当時の私の喜びを、今の彼女が謳歌していると思うと、咎める気持ちになれないのだ。二十五歳からのダイエッター人生を決定づけてしまう、あの中毒性のあるアメリカ料理の美味しさには、歳を取ってミネストローネで胃もたれしようとも、やはり今の私も抗えない。



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カワカミ ヨウコ
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