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あの頃、心地よかった本屋さんで

今日、大阪梅田の丸善ジュンク堂書店で、友人が本を一冊買ってくれた。以下の写真はその棚の様子。

偶然にもこの書店は、3年前にある哲学者の講演を聴きたくて、横浜から新幹線で足を運んだ書店だ。慣れない大阪の町。途中、迷って熟年のカップルに本屋の場所を示すGPS画面を見せながら道を尋ねた。お二人は丁寧に応じてくれて、その姿に横浜や東京で道を尋ねる時にはめったに出くわさない人間の温かさのようなものを感じたのを覚えている。

講演会は本屋の中のイベントスペース。広くて立派な本屋さんで、代官山のTSUTAYAのようなこれ見よがしなオシャレがなくて、新しさと懐かしさが共存するような居心地の良い店内だった。窓の広い空間にパイプ椅子を並べて座り、真剣にメモを取りながら哲学者の話を聞いていたら、隣の席のおばちゃんが(あえて、おばちゃんと呼ばせて頂くね)私に話しかけてきた。

「あなた、すごいよく勉強しているね。えらいね。これからも頑張ってね」

そのような言葉を大阪弁でかけてくれた。

たった独りで講演会に行くだけで、細やかだけど温かい見知らぬ人とのやりとりと出会えるのは、大阪らしいなと、当時の私は勝手にうるうるしていたのだった。

あれから年月が経ち、私の本があの時のあの本屋さんに置かれているのだと思うと、なんだかとても嬉しい。細やかな達成感を噛みしめている。

私はこれからも、こうした小さな喜びを積み上げていくのだろう。世の中のニュースを見れば、他人を批判するような後ろ向きな声ばかり聞こえてくるけれど、私はそういった負の感情に心を向けるのではなく、あえて前向きで温かい感情が自分の中に生まれる瞬間、瞬間に敏感でありたいと思う。そうすることが、この殺伐とした今を乗り越える術になると思うからだ。あくまで私なりのね!

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