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多様性の街、下北沢 7/6の日記

水曜日にABCマートで買った革靴がやっぱりキツくて、返品のために新宿へ向かった。

地下1階の革靴フロアのレジで「返品したいんですけど、、」と買ったままの紙袋を差し出すと、店員のおじさんがやや戸惑いながらもスムーズに対応してくれた。
「ちょっと横がキツくて」とか理由を言ったほうが良かったかな、と思いながらももう現金でジャラジャラと返金されてしまったから契約成立バイバイ、とお互いドライな態度のまま店を出た。

駅前のビックカメラでフェス用のハンディファンを見たかったが、ハンディファンの棚はいつまで経っても人で溢れかえっていたから諦めて上の階のGUへ。
夏用の靴下と好きなサッカーチームがデザインされたTシャツを買って新宿での予定は終了。
せっかく暑い中繰り出したからこのまま帰りたくなくて、お昼ごはんを何か食べようと下北沢へ向かった。

新宿から下北沢への短い移動時間で何を食べようか頭をフル回転し、餃子の王将に行くことにした。下北沢駅の西側にドンと構えている王将、意外と今まで行ったことがなかった。

時間は午後2時半、お客さんはまばらだ。
「こちらにどうぞ」とテーブルへ通され、メニューを眺める。小田急線の車内でニラレバにしようと決心していたが、油淋鶏のビジュアルに負けてしまい油淋鶏+ごはんセットを注文した。

隣のテーブルではおばあちゃんがゆっくりと遅めの昼食をとっている。
正面のテーブルではカップルが料理を待っていて、「誰に投票すんの?」という会話をしていた。翌日は都知事選だ。でももしかしたら呪術廻戦の人気投票とかの話かもしれない。都知事候補も呪術廻戦のキャラも似たようなもんだ。

そんな空虚な時間を過ごしていると油淋鶏定食がやってきた。
平たい唐揚げに邪悪な油淋鶏ダレがこれでもかと乗っていてたまらない。もうここからは俺の自由だと箸を手にとって邪悪な油淋鶏を食べ始めた。

食べながら何か視線を感じるな〜と思ったら、隣のおばあちゃんが私の油淋鶏を眺めているようだった。
何?欲しいの??と思っているとおばあちゃんが私に話しかけてきた。
「男の人ってソレ頼む人多いわよね〜」
「あっ、ホントですか?メニュー見て美味しそうでつい」
ここで私から「何食べてるんですか?」と聞き返そうか迷ったが、見知らぬおばあちゃんにそこまで深入りすべきじゃないかなと会話を打ち切ってしまった。

前を向き直して油淋鶏を頬張りながら、「これ話しかけた方がいいヤツなのか?」と頭の中を色んな考えが巡る。
するとおばあちゃんは私と逆の隣に座る外国の方に注文の仕方を教えていた。単純におせっかいなおばあちゃんだった。

窓際のソファ席には揃いのポロシャツを着た高校生ぐらいの男女3人が座っていて、先生の悪口で盛り上がっている。
後輩であろう女の子の敬語がぎこちなくて初々しい。
その奥では原宿系のロリータファッションに身を包んだ2人組が餃子を食べていてとてもシュールな光景だった。
横を通った男の子が不思議そうにその光景を三度見していた。

午後2時半、下北沢の餃子の王将が多様性で溢れていた。
都政を思案するカップル、おそらく初ジャパニーズ王将の外国の方、1つのメニューを3人で眺める高校生、ピンクのヒラヒラに包まれた原宿系のお姉さん、そしておせっかいなおばあちゃん。

おばあちゃんのテーブルの料理は既に空で、荷物をまとめて席を立ちそうになっていた。
何か、、ひと声かけるべきか、、いや別にいいか、、、どうしようか、、、
「じゃあ、ごゆっくり。」
私に向けて満面の笑顔でおばあちゃんのほうから声をかけてくれた。ニカッという音が聞こえそうなぐらい快活な笑顔だった。
「外暑いんで、気をつけてくださいね」
平然を装って私がこう返すと、おばあちゃんは
「暑すぎて倒れちゃうかもね」
と快活な笑顔を飛ばし、背中を向けて店を出ていった。

ちょっとしたやりとりだったが、コンクリートジャングルでの日々に乾き切った私の心は少し潤ったような気がした。

油淋鶏を平らげて駅前を歩いていると、簡易的なステージに4人組とバンドセットが並んでいた。
4人組は季節外れの黒いタートルネックに黒いジャケットを着ていた。
絶対ビートルズだ。

やがてライブが始まり、耳馴染みのあるビートルズのサウンドが下北沢の空に鳴り響いた。
今までビートルズのコピバンに出会ったことがなくて、サウンドだけでなくあの1本のマイクに2人でコーラスを入れる感じとかが目の前で行われているのが不思議な感覚だった。

観客は本当に老若男女様々で、ここでも下北沢の多様性が表れていた。
大音量のビートルズは決して完璧ではないながらも、「やっぱり私が還るところはビートルズなんだ」としみじみと感動してしまって泣きそうだった。
両親は新婚旅行でイギリスに行くぐらいビートルズが好きで、おそらく私はお腹の中にいる頃から聴いている。超英才教育だ。

野外の古着市を見ていたら、『A Hard Day’s Night』の良い感じのTシャツがあって思わず買ってしまった。これは絶対にフジロックに来ていこう。

🎸

たまたま寄った下北沢でおばあちゃんの優しさに心を潤わせ、ビートルズのサウンドに胸が高鳴った。
中華を食べに来ただけなのに、、と少し目を潤ませながら自宅に向かって歩く。
下北沢はいつまで経っても飽きることのない、大好きな街だ。

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